第弐拾参話 姫君の依頼
前回のあらすじ
ゲンブ島に到着した
「あれほどお酒を飲み過ぎるなと言ったわよね?」
「はい」
「それが何? 私が目を離した隙に酒盛りなんかして?」
「ごめんなさい」
「しかも……酒樽をこんなに開けて。どんだけ飲めば気が済むのよ?」
「申し訳ございません」
「はあああ〜……こんな姿をご先祖様がご覧になられたら、どう思われるかしらね、ダメダメお姫様?」
「そうです。アタシはダメダメな姫君です」
ミアンちゃんに冷たい床の上に正座させられたレヴィアさんは、平身低頭平謝りを繰り返していた。
ミアンちゃんに顔面を机に強打された事で、いくらか酔いが覚めたみたいだった。
一国のお姫様を正座させるのも中々にスゴいけど、ミアンちゃんの言葉遣いが友達に接するような気軽さだった。
単純な主従関係というわけじゃないのかな?
そんなことを思っていると、組んでいた腕をほどきながら、ミアンちゃんがあたし達の方に向き直る。
そして深々と頭を下げてくる。
「改めて謝罪するわ。私の主の醜態を見せちゃってごめんなさい。こんなのでも一応、ソロモニアの姫君なんだけどね……」
「一応じゃなくて、正真正銘の姫……」
「レヴィア。何か言った?」
「いえ! 何でもございませんっ!」
ミアンちゃんに凄まれ、レヴィアさんは姿勢を正す。
見事に主従関係が逆転してるなぁ……。
「それじゃあ改めて、私の主を紹介するわね」
「ふっふっふ……心して聞くがよい。我の名は……」
「レヴィア」
立ち上がり、なんか仰々しく名乗り始めたレヴィアさんを牽制するように、ミアンちゃんが鞘から少しだけ刀身を覗かせる。
彼女の目は、とても据わっていた。
その圧に、レヴィアさんは早々に屈した。
「はい、真面目にやります! アタシはレヴィア・ドラグナー! ソロモニア王国の御三家の一つ、ドラグナー家の王女です! よろしくお願いします!」
レヴィアさんはさっきとは打って変わって、とてもハキハキとした調子で自己紹介をした。
よっぽどミアンちゃんが恐ろしいらしい。
それにしても……う〜ん……。
さっきの姿を目の当たりにしてるから、王女とか言われても違和感しかなかった。
お酒大好きニンゲンだと言われた方が、まだ説得力があった。
「レヴィア……様はこんなでも、やる時はやるお方だから。……あんな姿を見せられたら、嘘だと思うかもしれないけどね……」
「否定出来ない自分がいる事が悲しいよ……」
ミアンちゃんの言葉を受けて、レヴィアさんは遠い目をする。
「まあ……名前とかは分かったので、あたしを探してた理由を教えてくれませんか?」
「……分かりました」
そう返事をすると、レヴィアさんの雰囲気がガラリと変わる。
その雰囲気は確かに、一国の王女のソレだった。
レヴィアさんはあたしの向かいの席に座ると、姿勢を正して話し始める。
「話を始める前に一つ……ソロモニアについてどれくらい知ってますか?」
「一般常識程度ですが……」
ソロモニア王国は世界で唯一、他の大陸にも領土を持つ国だった。
ソロモニアは西大陸全域と、北大陸西部の一部が領土だった。
そしてドラグナー家は、その北大陸にある領土の統治を担っていた。
「それで十分です。アタシ達の統治する土地には、重犯罪者を投獄する刑務所があるのですが……」
「まさか……そこから脱獄したとか?」
「その通りです。そして彼等は、この島に逃亡したとの情報も掴みました」
「それがあたしとどう関係が?」
「不躾だとは重々承知ですが……その逃亡者達を捕らえるために、アタシ達に協力していただけませんか?」
レヴィアさんはそう言うと、深々と頭を下げてきた―――。
レヴィアの申し出にマヤは……。
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