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第拾玖話 お礼

前回のあらすじ

例のあの人が登場

 

 菊花の街の港を出港してから二日して、最初の中継地であるスザク島の港町の一つ、水芭蕉の街に寄港していた。

 積み荷の上げ下ろしや食材の積み込みも行う関係で、丸一日この街に滞在する必要があった。


 ミアンちゃんは身体が鈍らないように、この街の冒険者ギルドで簡単な依頼を受注するようだ。

 ちなみに彼女の相棒のワイバーンは、一足先にゲンブ島へと戻っていた。


 大型の魔物は、船に乗る事は出来ないしね。

 スライムみたいな小型の魔物だったら、乗り込めるとは思うけど……。


 船の中にずっといるのも気が滅入るので、観光目的でちょっとだけ船を下りる。

 顔色が大分マシになっているレイとミオも当然、あたしに付いてくる。


 するとミオがあたしの下を離れ、見知らぬ女性の下へと走っていく。

 桃色の髪を肩甲骨の辺りまで伸ばした女性は外套を羽織っており、どことなく旅人を連想させる出で立ちだった。


「あ……あの! お姉さん!」

「ん? ああ……貴女はあの時の。もう大丈夫なの?」

「はい! あの……あの時はありがとうございました!」

「どういたしまして」


 ミオはペコリとお辞儀をし、それを受けた女性は柔らかく微笑む。

 あたしはレイと共に、ミオ達の方へと向かう。


「ミオ。そちらの方と知り合いなの?」

「えっと……この間の、船酔いが治るお薬を飲んだ時に、部屋に戻る途中で眠くなっちゃって。その時に、このお姉さんがわたし達を助けてくれたの」

「そうなの……妹がご迷惑をお掛けしたようで」

「いいえ、別に。迷惑だとは思ってませんから」


 そう答える女性は、見た目はあたしよりも少し年上に見えるのに、とても大人びた雰囲気を纏っていた。


「あの……良かったら何かご馳走させてくれませんか? 妹達がお世話になったお礼として」

「……お言葉に甘えましょうかね。いい、スラちゃん?」


 女性が横を振り向くと、その女性と瓜二つな水色髪の女性はコクリと頷く。

 そしてあたし達は、船を下りた―――。




 ◇◇◇◇◇




 近くにあった茶屋に、あたし達は入る。

 あたしの両隣にレイとミオが座り、あたし達の向かいの席に桃色髪と水色髪の女性が並んで座る。


 あたしはお汁粉を、レイとミオはお団子を注文する。

 桃色髪の女性はしばらく悩んだ後、わらび餅を注文した。

 水色髪の女性も同じ物を頼んでいた。


「そう言えば、自己紹介がまだでしたね。わたしはゲーティア。自由気儘に世界中を旅してる旅人です。こっちはスラちゃん。わたしの大切な……仲間、です」

「スラはスラだよ! よろしくね!」


 桃色髪の女性―ゲーティアさんはとても落ち着き払っているのとは対照的に、水色髪の女性―スラさんは元気一杯の明るい女性だった。


 二人の顔が似ている事がとても気になり、あたしは思わず尋ねる。


「あの……お二人は姉妹か何かで?」

「いいえ。全くの赤の他人ですよ」

「それにしては、お二人は良く似ていると言うか、似過ぎてると言うか……」

「この世には自分と同じ顔をしたニンゲンが三人いると言われてますから、その内の一人がスラちゃんだったんでしょう」


 そう言われると、不思議と納得しかけてしまう。


「逆にわたしからも質問しますけど……貴女達は姉妹なんですか?」

「え〜っと……はい」


 あたし達の容姿が似てない事に突っ込まれるかと思っていたけど、ゲーティアさんは深くは尋ねて来ず、感慨深そうに頷く。


「そうですか。お姉ちゃんは大変ですよね?」

「その口振り……ゲーティアさんにも妹が?」

「ええ。今はとても遠い場所にいるんですけどね……」


 そう答えるゲーティアさんは、何処か遠い目をしていた。

 でもそれもほんの少しの間だけで、ゲーティアさんはすぐに慈愛に満ちた笑みを浮かべる。


「ウチは少々特殊で、妹達とは腹違いの姉妹になるんですよ。わたし達はそれぞれ、別の母親から産まれてます」

「それは……色々と問題があったんじゃ?」

「そんな事は無かったですね。母親同士の仲も良かったですし、わたし達姉妹仲も良い方でしたよ」

「そうなんですね……。実はあたし達も血は繋がってないんですけど、仲は実の姉妹以上だと思ってますよ」

「そうですか。……ねえ。貴女達はお姉ちゃんの事、どう思ってるの?」

「大好き」


 ゲーティアさんの質問に即答したのは、レイだった。

 レイは言葉だけでなく、あたしの腕に抱き着く事で行動でもソレを示す。

 それに対抗するように、ミオもあたしの腕に抱き着いてくる。


「わたしだってマヤおねえちゃんの事大好きだもん! ……あ」


 ミオは自分が何を口走ったのかを悟ると、顔を真っ赤にして照れ隠しのようにあたしの脇に顔を埋める。

 それを見て、ゲーティアさんがくすくすと微笑んでいる。


「ふふふ……お姉ちゃん冥利に尽きますね?」

「手が掛かる事もありますけどね……」

「そうですよね。わたしの妹なんかも……」


 それからあたしとゲーティアさんは、姉としての苦労や愚痴、妹の自慢話で盛り上がった―――。






現時点での各キャラの年齢でも。


マヤ/ミアン→20才

レイ→14才(肉体年齢)

ミオ→12才(肉体年齢)


シェリル→18才

マユリ/アサギ→22才

トウコ/トウヤ→13才(肉体年齢)

アラハバキ→年齢不詳


ゲーティア/スラ→20才前後(見た目)




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