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第拾陸話 邪魔物退治

新章開幕です!




前回のあらすじ

レイがマヤの新しい妹になった

 

 レイが新しく家族に加わって、菊花の街で三人での生活を始めてから一ヶ月。

 家が少し賑やかになり、あたし達は平穏な生活を送っていた。


 風の噂で聞いたところ、シェリル様が召集した冒険者達によってナイトメアが討伐されたらしい。

 でも、『百魔夜行』の根本的な解決には至っていなかった。当たり前だけど……。


 それが原因なのか、帝国内でのシェリル様の発言力が低くなっているらしい。

 これを好機と見たのか、シェリル様の敵対派閥が彼女の派閥を必要以上に責め立てているようだ。怖いなぁ……。


 海の向こう側は向こう側で、色々とあるみたいだけど、菊花の街は相変わらず平和だった。

 ミオが無意識に呼び寄せてる邪魔物に目を瞑れば、だけど……。




 ◇◇◇◇◇




 その日の夜も、あたしは邪魔物の討伐に赴いていた。

 いつもはあたし一人だけど、今夜は違っていた。


「アレが、邪魔物……」


 そう呟くのは、血濡れの刀を携えたレイだった。

 彼女はあたしが夜な夜な邪魔物を討伐していることを知ると、あたしに協力したいと申し出てきた。

 あたし一人でもどうにか出来てるからずっと断ってたけど、レイの押しが強くて、今日とうとう折れた。


 それと、あたしが邪魔物を討伐していることを知った後、ミオは夜に出歩かないでと言うことは無くなった。

 お昼過ぎまで寝てると強制的に起こされることは、以前と変わらないけど……。


 今あたし達の目の前にいる邪魔物は、素体はサーベルタイガーと呼ばれる立派な牙を持ったトラ型の魔物だけど、ナイトメアの魔物変状能力によって、肩から翼のように腕が生えていた。

 その変異サーベルタイガーが、五体ほど群れを成していた。


「そうよ。普通の魔物とは行動が異なるから、注意を怠らないようにね」

「うん、分かった」


 そう言って頷くと、レイはあたし達の乗っていた木の枝から飛び降り、変異サーベルタイガーの方へと向かって行った。

 ちょっとせっかちな二人目の妹の行動にやれやれと肩を竦めつつ、あたしも魔獣化してから変異サーベルタイガーに攻撃を仕掛ける。


 変異サーベルタイガー達もあたし達に気付き、一斉に襲い掛かってくる。

 牙と敵意を剥き出しにしているけど、あたしに恐怖心はない。


「月皇流・肆の太刀、『月影』!」


 一番近くにいた変異サーベルタイガーとすれ違い様に、あたしは刀を居合い抜きする。

 刀を振り抜く速度が最速の肆の太刀は、先制技としては最適だった。


 変異サーベルタイガーの左半身に赤い筋が一本引かれ、そこから血が噴き出す。

 その邪魔物の傍は通り抜けていたから、返り血を浴びることは無かった。


 ちらりとレイの方を見ると、彼女も一体目の邪魔物の首を斬り落としているところだった。

 すると、彼女の死角からもう一体の邪魔物が接近してきていた。


「《ブラッディパイル》!」


 あたしは手の平をそちらに向け、鮮血魔法でその邪魔物を串刺しにする。

 赤い杭に貫かれた邪魔物は、そのまま絶命する。


 そんな事より……あたしの目の前にも二体目の変異サーベルタイガーが現れた。

 その個体は翼のような腕……翼腕を握り締めると、そのままあたし目掛けて振り下ろしてきた。


 それを回避すると共に、ボコォッ! とあたしがさっきまでいたところの地面が陥没する。

 下手に受け止めようとしなくて正解だった、と安堵すると共に、あたしはその厄介な翼腕を斬り飛ばす。


 変異サーベルタイガーが悲鳴を上げるけど、それに構わずにあたしは再び《ブラッディパイル》を発動させて串刺しの血祭りに上げていく。


 残りの一体は……レイと交戦中だった。

 レイが刀を振り上げるけど、変異サーベルタイガーの掲げた翼腕の硬い爪によって防がれてしまった。

 そして、もう片方の翼腕を横薙ぎに叩くようにして振るい、レイの細い身体を吹き飛ばす。


 ちょうどあたしの方に飛んできたから、レイの身体を片腕で抱き止め、《ブラッディソード》を発動させる。

 十本の赤い剣が闇夜を舞い、変異サーベルタイガーを斬り刻んでいく。


 トドメに、その個体の背中に剣山のように赤い剣を突き立てると、それでその個体は絶命した。

 念のため索敵魔法で隠れている邪魔物がいないか調べるけど、どうやらいないようだった。


「さて……今日はこれだけみたいだから、もう帰ろうか?」

「うん」


 魔獣化を解除して刀を鞘に納めながらそう言うと、レイも刀を納めてコクリと頷く。

 彼女の腰に回していた腕を離す―けど、レイはあたしにしがみついたままだった。


「え〜っと……レイ?」

「家に帰るまで、ねえさんにくっついてちゃダメ? 家だと、ミオが邪魔してくるから」

「仕方ないなぁ……」


 苦笑しつつ、あたしはレイのしたいようにさせてあげる。

 するとレイは、満面の笑みを浮かべる。


 そしてあたしはレイに抱き着かれたまま、帰路へと着いた―――。






そう言えば、明確な男キャラがトウヤしかいないという衝撃(?)の事実。




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