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第拾話 救出へ

前回のあらすじ

ミオは人造人間

 

 切り裂き魔の指定した場所へと向かうけど、何処にあるのか分からない……といったことにはならなかった。

 ミオの持つ魔物誘引能力と魔物変状能力によって異形と化した魔物―あたしは「邪魔物」って呼んでる―を追い掛けて行けば、自然とミオが誘拐された場所まで辿り着ける。


 ミオの持つ特異性は出逢った頃に気付いていたから、『百魔夜行』がナイトメアが原因で起きているわけじゃないことだけは分かっていた。

 いやまあ、ミオの能力にナイトメア由来のモノはあるけど……。


 それに、『百魔夜行』の原因がミオだと判明すると、ミオを排除しようとする組織も絶対に現れる。

 だから今の今まで、『百魔夜行』の原因をひた隠しにしてきた。


 ……いよいよとなったら、国外脱出も辞さない……。


 と思っていると、あたしの目の前に魔物が立ち塞がってきた。

 魔物の種類はワイバーンという竜の魔物だけど、ミオの能力に影響されてか、全身を黒いもやが包み込んでいた。

 それと、凶暴性も増していて、目が血走っていた。


「《付喪紙》、起動!」


 懐からお札を取り出し、妖術魔法を発動させる。

 この魔法はお札を自身の思い描いた武器の形へと変化させて、そして自動で敵を迎撃するといった魔法だった。

 その分、消費魔力も半端じゃないけど……。


 あたしは三枚のお札を刀の形へと変化させて、目の前にいる変異ワイバーンに向かって飛ばす。

 あたし自身も刀を構え、変異ワイバーンに攻撃を仕掛ける。


 変異ワイバーンの数は四体で、《付喪紙》の刀とあたしの刀だけで十分だった。

 四本の刀が変異ワイバーンを瞬く間に斬り刻んでいく。

 変異ワイバーンは為す術もなく、地面へと倒れ伏していく。


 この《付喪紙》を含めた剣術によって、あたしが『剣聖』と呼ばれるようになった……表向きは。

 本当の由来と、あたしの本当の二つ名は別にある。


 あたしは《付喪紙》の発動を維持したまま、ミオのいる場所まで向かって行った―――。




 ◇◇◇◇◇




 アラハバキ、と名乗った人の言ったことが、最初分からなかった。


「え……? 製造番号、三十番……? な……何を言ってるんですか……?」

「分からないのかい? なら分かりやすく言い直そう。キミは私の造り上げた人造人間、その三十番目の個体だ」

「ち……違います! わたしはそんな……人造人間なんかじゃありませんっ!!」

「何が違う? それでは逆に尋ねるが、キミは自分の親の名前と顔を知っているのか?」

「それは……」


 その質問に、わたしは答えられなかった。

 わたしは気付いた時には独りだったから、親に捨てられたものだとばかり思っていた。


 色んな街や村を転々として、最終的にはマヤおねえちゃんと出逢ったことで幸せな生活を送れるようにはなっていたけど、時たま両親が誰だったのか思い返す時もある。


「答えられないだろう? 当たり前さ。人造人間に親はいない。造られた存在だからね。いや……ある意味では私が親と言えなくもないのか?」

「でも……親がいなくても、わたしにはおねえちゃんが……!」

「その姉とやらだって、血が繋がっていないまやかしの姉なのだろう?」

「そ、れは……」

「図星か。十年近く前に私の研究所から逃げ出した個体がいたが……まさか巡り巡って戻って来るとはね。よくやったよ、レイ」

「ありがとうございます」


 アラハバキさんの後ろに控えていた黒づくめの人が、恭しくお辞儀をする。

 アラハバキさんの言ったことが本当なら、あのレイとか言った人も、人造人間……。


「あ……あなたは、人造人間を造って何がしたいんですか?」

「さっきも言っただろう」

「それが目的じゃないことだけはわたしにも分かりますよ。人造人間の研究・製造がただの手段だってことくらい。本当の目的は何なんですか!?」

「……流石は私の最高傑作。頭の回転も早い。……いいだろう。教えてあげよう。私の真の目的は――」


 けれど、アラハバキさんの言葉は続かなかった。


 突然天井の一部が崩落し、そこから巨大な魔物が落ちてくる。

 その魔物の背中には白い刀と赤い刀が墓標のように何十本も突き刺さっていた。

 そしてその背中にヒトが乗っていて、持っている刀をその魔物に突き刺している。


 そのヒトは背中からコウモリのような翼を生やし、おでこからは二本の大きな角を生やしていた。

 そして腰まである長い髪は雪のように白く、瞳は血のように赤かった。


 そのヒトは魔物の背中から刀を引き抜くと、赤と白の刀を背後に侍らせながらその場に立ち上がる。


 姿形が異なろうとも、わたしだけはそのヒトを見誤らない。

 そのヒトは―――。




 ―――マヤおねえちゃんだった。






アラハバキの真の目的はいつか明かされます。




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