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第15話 作戦会議

 2年生との交流戦に向け、オルト達は訓練場の隅っこで作戦会議をしていた。


持ってきた資料と水晶から映る記録映像で、2年生達の魔法を共有していく。


「よう集めたな」

「若葉杯のような公式戦は、大体記録として残ってるからね。当然、先輩達も同じように手の内を知りにくるさ」


「もう情報戦から始まってるんだね……」

「実際の魔法執行官でも、敵の能力は把握して戦う場合もあるからね。有利に立ち回れるし」


「……覚えるの苦手」

「まぁまぁ、気長にやってこ!」


難色を示すエンリルにわかりやすいよう、オルトは映像を流していく。


「まずは制約者の1人、プランツ・グロー。固有魔法は植物操作、毎回植物の種子を持って成長させて戦ってる。最もよく使ってるのは『暴君の樹(タイラントツリー)』と言って、非常に生命力の強い大木なんだ」


映像にはプランツが巨大な木の根を操り、地中から槍のように飛び出して追い詰めていた。


「……地面にも注意ってわけ」

「その通り。建物に逃げ込んでも簡単に土台を突き破ってくるから気をつけよう」

「エグい攻撃だな……」


「続いてもう1人の制約者、ララン・リンカー。固有魔法は体積調整……彼女は小石を砲丸のように変えられ、その逆もできる。元の大きさによって変化も限度があるけど……」


流れる映像では魔弾と家のサイズが逆転し、特大な魔弾が出来上がっていた。


「んなっ!?」

「『規模交換(サイズチェンジ)』という大きさを入れ替える魔法がある。このように魔法と物でも可能。プランツ先輩の植物と組み合わせてくるケースもあるから脅威だね」


「想像したくないな……」

「そして僕らが先日会ったチア・カラーズ先輩。固有魔法の幻像は、視覚を最大限惑わしてくるだろう」


「具体的にどんな?」

「姿や攻撃魔法を隠したり、逆に幻像で偽物を出すこともね。魔力感知でも判別しにくいから、相当やりづらいだろう」

「……頭パンクしそう」


「最後がエフォート・グロー先輩。固有魔法はないものの、実力は見た通り。既にBランク魔法執行官にまでなってて、プロでも通用する基礎魔法なんだ」


「聞けば聞くほど勝てる気がしないなぁ……」

「……大丈夫シャル、いざとなれば私が全員倒す」


「ま、それにオルトが全員を体調不良にしちまえば楽勝なんじゃね?」

「そのことなんだけど……ちゃんと対策されると思う」


バイトの案に、オルトは油断させないためにも否定する。確かにかなり有効な手立てだが、既に劣化魔法と知られている。錚々(そうそう)たる面子が、そう簡単にやられるとは考えていなかった。


「まず第一に、対象を認識してないと不発する。攻撃魔法と一緒でね。だから無闇に姿を現さないだろう。これはチア先輩が最大限に妨害してくると思うし」


(バイトと戦った時の熱探知も知られてるだろうな……)


「あ〜、幻だらけで撹乱してくっか」

「そしてもう1つが、僕か相手が密閉された空間にいたら作用しないんだ」


オルトから発した魔力が対象に届くことで起きる劣化。物理的に魔力が届かなければ発現しないのであった。


「催眠とかの直接干渉系魔法と一緒で、箱型の魔壁とかで防がれる。魔壁には劣化がかかるから、すぐ壊せるけど」


「……情報を出し惜しみしてた割には、ベラベラ喋るんだな」

「バイトが言ってた通り、手の内を知られた状態でも戦えるのが魔法使いだしね。勿論、連携も大事になるから」


(交流戦まで見据えたうえで立ち回ってたとはな……用意周到だな)


バイトはオルトに感心しつつ、何か策はないか尋ねる。


「植物操作に幻像……罠を張るには最適だ。戦闘になるまで時間がある分、守りに特化したチームと言っていい。考えがあるんだろ?」


「オルト君なら、って期待しちゃうね」

「一応はね。作戦の要は君だよ」


「えっ……あたし??」


突如として名指しを受けたシャルがキョトンとしながら、その作戦を明かしていった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 オルト達が作戦会議をする一方、対戦相手である2年生達も話し合いをしていた。


「しっかしよぉ、わざわざ話し合うまでないだろ。確かに1年生ズの制約者2人は厄介だが、他2人はそうでもない。いつも通りやれば負けんだろ」


話し合いを設けたのはエフォート。それに対して、ナッツを食いながら不満を漏らすプランツ。


「侮るな、魔力与奪のシャルールは魔法使いにとって天敵ともいえる。それにもう1人も基礎レベルが高い。油断していると足元を掬われるぞ?」


「そうならないよう、お前があれこれ考えてくれんだろう?」


「……」

困り顔で睨むエフォートと共に、ラランが呆れた口調で口を挟む。


「他力本願とは情け無いですね、また1年生からやり直したほうがいいでしょう」

「ちゃうちゃう、役割分担ってわけよ。俺が頭を捻っても振るわないさ。それに、やる気がないわけじゃあないさ」


プランツはナッツを噛み砕きながら誤解を解くように述べる。


「上には上がいる、()()も味わった伝統を受け継がねぇとな」

「うわー! 性格悪ーい!」

「……後輩の育成として、自惚れないよう実力を示しておく、っと言いたいのでしょう?」


「そそ! だからまぁ、先輩の威厳として地力だけで負かしたいとこなんだけどなぁ。指示をくれ、リーダー」


「……ラランと一緒にエンリルを抑えてくれ。単体で戦況がひっくり返る」

「あらら、あの子はそんな脅威なのか」

「貴方の見立てなら間違いないでしょう。全力を尽くします」


「じゃあ私達は他の3人相手だねー! 頑張ろ、エフォー!」

「あぁ、油断せずいくぞ」


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