怪盗対名探偵……食べていける
怪盗対名探偵の3作目です。
タイトルを変更いたしました。(12/26)
正直者→食べていける・・・と変更
「またまた私の勝利だね。」
逃走用のヘリコプターから垂らされた縄梯子の端を右手で掴んで、怪盗多面相が高らかに笑う。
都心の繁華街大通り、百貨店や宝石店などが建ち並ぶロータリーに面した6叉路中央の、噴水湧き出る池に逃げ込んだ怪盗多面相を取り囲むように、各辻は数台ずつのパトカーで完全封鎖されていた。
4方からサーチライトで照らされ、逃げ場を失った怪人多面相。
万事休すと思われた次の瞬間、暗闇の上空から縄梯子が垂らされてきたのだ。探偵や警官隊が駆け付ける間もなく、悠々と多面相は夜空へ消えて行った。
「すぐに航空管制局へ問い合わせて、さっきのヘリの飛行ルートを割り出すんだ!」
ヘリコプターの車台番号を控えていた探偵が、配下の青年自警団員に命じる。
「先ほどのヘリはレンタルで、都心部を遊覧飛行した後、20時に湾岸沿いのヘリポートに帰還予定ということでした。」
「よしっ、馬鹿正直に申告通りのフライトをするとは思えんから、何処かへ寄って多面相を降ろしてからヘリポートへ戻るはずだ。パイロットを捕まえて締め上げれば、多面相の逃げ場所位推定できるかもしれない。すぐにパトカーを回せ!」
「はっ!」
すぐにパトカーはヘリポートへ。
「御用だ!」
申請通り20時丁度にヘリポートに着陸したヘリに向け、ライトを消して潜んでいた警察車両がサーチライトで照らす。
「ば……馬鹿な……。」
「まさか馬鹿正直に、申告通りにヘリポートへ戻ってくるとは思わなかったよ。観念するんだな。」
逃げ場を失った怪盗多面相はあっさりお縄に……。
「お前……私を救出してここへ逃げ込むことを、わざわざ航空局へ申請していたのか?しかも直接戻らず何度も周回して、ここへ着陸したな!地上からの追手をまこうとわざと旋回しているのかと思ったが、単なる時間稼ぎだったのか?」
「それはそうですよ……申請以外の飛行ルートを選択すると、折角取得した免許取り上げられてしまうかもしれませんからね。ご存じないでしょうが、合格するの、すごく大変だったんですからね。
かといって燃料代込みでレンタル料は前金で支払っているから、1時間早く終わってもその分返金になることはないのですよ、時間まで飛行しないと勿体ないでしょ?」
多面相部下のパイロットは、平然と答えた。
「私が捕まるよりも、お前の免許を優先させたということか?」
「それは当たり前ですよ……なにせ4度挑戦してようやく受かったのですからね。」