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3.マイホーム争奪戦

 住処を探して森のなかをうろついているうちに、私はあることに気がついた。

 何匹か無害そう……もとい、弱そうなモンスターを見つけたんだけど、彼らの頭の上に名前、そしてレベルの表示が見えるのだ。

 “キラーアントLv.1”とか“ポイズンビードルLv.2”とか。


 でも、私が倒したあの狼にそんな表示はなかった。

 更に言うと、一度大きな鹿のようなモンスターと出くわした(草食だったのかスルーされた)けど、そのモンスターは名前やレベルの表示が見えなかった。

 つまるところ、私よりレベルが低い相手しか表示が見えないということらしい。


 レベルが一気に上がったことから考えても、あの狼はきっとレベル4~5はあったに違いないだろうな。

 自分よりレベルが高いモンスターを倒すと経験値に補正がかかるんだろう。

 狼を倒してから、モンスターと戦ってないのであくまで予想なんだけどね。


 そんなこんなで、小一時間ほど森の中をうろついた頃。

 私は小さな洞窟を見つけていた。洞窟のサイズは……縦も横もせいぜい1メートル強ってところだろう。奥行きは目測で3メートルくらいかな。


 近場に綺麗な泉もあって、水分確保するにも問題なさそうだ。

 ちょっと浸かる程度に入ってみたけど、半透明のボディがより水々しくなった気がする。

 保湿大事だね。こんな姿になっても私、女の子だし!


 そしてこんな小さな洞窟でも、雨風を凌げる場所が見つかったのは素直にありがたい。

 先客もいないようだし、ここは素直にベースキャンプとして使わせてもらおう。

 近くから適当に大きめの葉っぱやら枯れ草やら集めてきて……完成! 簡易ベッド~!


 「……」


 うん、我ながら質素すぎるな。なんかあまりに雑というか……。

 硬い地面に葉っぱとかおいてあるだけだもんね。これじゃ地面で寝るのとあんまり変わらないな。

 なんとかならないものかしら。


『拠点を作成したので、<クラフト>を行うことができます。』


 ほほう?

 <クラフト>……というと、道具とかが作れるのかな。

 といっても今は素材なんてほとんど持っていないし。作れるもの、あるかなぁ。


『簡素なベッド(極小) 要:獣の皮(並)×1』


 うん、あったわ。おあつらえ向きだね。

 迷うこと無く頭に浮かんだイメージを選択すると、数秒したのち気づけば目の前には獣の皮を使ったベッドが出現していた。

 私のサイズにちょうどいい。初めて、スライムとかいう小さな種族を選んで良かったと思える。


 でもこれ、寝込みを襲われたりしたらひとたまりも無いよねぇ。

 クラフト項目には、他にも“簡素な罠”とか“松明”とかがあって、もろに『夜の対策もしなさいよー』って言われているようなもんだわ。

 拠点は見つかったし、次はこれらの素材探しだなぁ。

 やることが多くて嫌になるよ、まったく……。さて必要なものは、っと。


『簡素な罠   要:???  ×3

          ???  ×3

 松明     要:???  ×1

          ???  ×1』


「……」


 ここでもハードモードを強いられますか。

 私の<鑑定>では2つずつ、何かしらの素材がいるということしか分からないらしい。

 ただ、たまたまとはいえ簡素なベッドが作れたのはラッキーだったな。

 所持品に含まれてさえいれば、“???”の部分も自動的に判明するっぽいからね。 


 そうとなれば兎に角素材っぽいものは何でも集めてみるしかなさそうだ。

 とりあえずできることからやるっきゃないね。素材探しにレッツゴー!





 森の中を練り歩くことしばらく。

 予想通り、石ころやら木の枝やらは拾った側から<道具入れ>で保管できるらしい。

 何個ストックしたとか、頭の中に数が表示されるもんだから分かりやすくて助かる。

 更に、“石”や“土”、“砂”なんかもストックできることが分かった。


 道具入れが埋まっていくのが面白くて、調子に乗って集めすぎたかな。

 気がついたら土とかストック30個超えてるし……。だって土をストックしたら地面に小さい穴があくんだもん。

 なんか面白いじゃん? おかげで随分地面をでこぼこにしちゃったけど。

 勿論、道中に<鑑定>スキルを使用するのも忘れない。


『石』『石』『雑草』

「……」


 つ、使っていけばいつかスキルのレベルが上がるかもしれないし、いつか役に立つでしょう。たぶんね。


『薬草』


 おっ?

 草に<鑑定>をかけて、初めての鑑定結果。使用して何がどうなるかはわからないけど、毒草とかじゃないってだけで十分だ。

 なんだー、少しは役に立つじゃない。ケチとか言ってごめんよ。


 さて。そのへんに落ちている素材はあらかた集まったと思うので、改めて<クラフト>項目を開いてみよう。



『簡素な罠   要:木の枝  ×3

          丈夫な蔦  ×3

 松明     要:木の枝  ×1

          ???  ×1』


 うわ、惜しい。松明の作成にもうひとつの素材が足りない。

 普通に考えれば……なんだろう。石炭とか油かな?

 洞窟の中とかにしかないとか、もしくはモンスターを狩ってドロップするのか。

 

 狼を倒して毛皮がドロップしたし、後者である可能性が高そうだ。

 <気配感知>を使って、戦闘はなるべく避けてたけど……そろそろ狩らないといけないかなぁ。

 いや、一旦拠点に戻ってからにしとこうか。罠とか仕掛けてからでかけても遅くないでしょ!

 他にも作りたいものもあるしね。





「……?」


 そうして、私が拠点まで戻ってきたところ、ある違和感に気がつく。

 遠目からで分かりにくかったが、トカゲ型のモンスターが私の洞窟を覗いているじゃないか。勘弁してよ、それは私の拠点なんだから。


 ……でも、“私の”とか思っている時点で甘いのかもしれない。

 そりゃこんな世界だもんね、野生のモンスターに拠点を奪われるくらいは想定してなきゃ行けなかったんだろうけど。

 こりゃ、今後簡単には侵入を許さないような工夫が必要だね。


 勉強になったところで、あのトカゲから拠点を取り返す算段をつけなきゃならない。

 簡単に奪われてたまるものか。こんなサバイバル過ぎる環境で、こんな好物件は中々ない。

 意地でも守り抜いてやるからな。覚悟しろよトカゲ野郎。


 トカゲの名前表示は……『ポイズン・リザード Lv.4』。

 幸か不幸か、私と同じレベルだった。名前から分かるけど、もろ毒持ち。

 毒にやられたら相当厄介なことになるだろう。


 同じレベルとはいえ、種族差によるステータス差も吟味すべきだな。

 きっとまともにやっても勝てないと思う。私の攻撃手段、体当たりくらいしかないし。

 ターン制のRPGならどうあがいても無理だったけど、生憎ここはそうじゃない。

 長年ゲームをして培った作戦力で完封してやるとしよう。


「……」


 できる限り音を立てないように、洞窟の入り口まで移動する。

 辺りが暗くなってきているのも幸いして、全くバレている様子はない。

 トカゲの方の様子はというと、なんと私が作ったベッドで身体を丸めて休んでいやがりました。


 ゆ、許せん。勝手に女子のベッドで寝るなんてとんだ変態野郎だ。

 これはお仕置きが必要みたいですね~。準備でき次第、すぐ襲いかかってやる。





 十数分後。トカゲが寝息を立てているのを確認してから、私はそろりそろりと洞窟の中に侵入した。

 気持ちよさそうに眠りこけて、どこからどう見ても隙だらけ。

 ふ、ふふふ。そのままあの世に送ってあげるとしよう。


 トカゲの上空。洞窟の天井付近にターゲットをしぼり、私は<道具入れ>から岩を選択する。

 ちなみに、石を10個組み合わせると岩がクラフトできる。

 仕組みはわからないが使わない手はない。大きさは30センチ四方くらいだ。

 こんなに大きなものも運べてしまうのだから<道具入れ>のシステムは便利なものだ。

 逆に、だ。かんたんに運べてしまうということは、こんな使い方もできる。


 唐突に、巨大な岩がトカゲ野郎の頭上に出現した。

 その岩は重力に従って自由落下をはじめ、そのトカゲの頭に……鈍い音を立てて命中した。


「~~~!?」


 突如として大ダメージを受けたことで相手は混乱しているようで、慌てて逃げ出そうとしているが時すでに遅し。

 脳震盪でも起こしているのか、身体の自由が効かずにフラフラしている。

 そんな状態では次の攻撃は回避できないだろう。

 <回転移動>で勢いをつけた体当たりを食らえ!


『ドゴッ!!』

「キュッ……!!」


 意外と可愛らしい悲鳴と共に、トカゲ野郎は洞窟の外にはじき出された。

 戦意喪失したのか、うまく身体が動かないながらもそのまま逃げ出そうとしている。

 ……今ので倒せると思ったんだけどなぁ。自分のあまりの弱さに嫌気が差す。

 だけど、自分の弱さすら予想の範囲内だ。


「キュ!?」


 ボコッ、という音と共に、トカゲの足元が崩れる。

 それは私の仕掛けておいた落とし穴だ。予め穴を掘って、簡素な罠を設置すれば出来上がり。

 まんまとハマってくれたね。戦闘前に仕掛けておいて良かった。

 地の理があるってのは大きなアドバンテージになる。でもって、落とし穴の全長は小さいながらも1mくらいは深さがある。


 まだ私の攻撃は終わらないよ! ずっと私のターン!

 <道具入れ>からストックしておいた土・石をたくさん使用! 生き埋めにしてやるー!


 ドサドサ、とトカゲの上に土やら石やらが落ちていく。

 相手は流石にもう虫の息で、大した抵抗もできないらしい。やがて、土に覆われ完全にトカゲの姿が見えなくなったので、ふさがった穴を塞ぐように土の上でジャンプしまくる。


 この! この! 乙女の聖域を踏み荒らしおって!

 傍から見ればスライムがなんかピョンピョン跳ねていて滑稽な様子に映るだろうけど、当の私は大真面目なのだ。

 こういう倒し方をすると<捕食>ができないが、毒持ちの彼はきっと美味しくないだろう。

 普通に倒すだけでいいや。


 やがて、数分経った頃。地面からスポンと、経験値石(これから私はそう呼ぶことにした)と、小袋が出てきた。討伐完了だね!


『経験値を取得しました。

 レベルが4→5になりました。SPを1獲得しました。12ジルと、毒の牙を取得しました。

 <回転移動>のレベルが1→2になりました。』


 あー、今回はレベル一つだけか。まぁ仕方ないよね、前回は格上だったし。

 そして残念ながら、毒の牙で新しく作れるレシピはナシと。完璧な作戦だったんだけどなァ。

 でもノーダメージで拠点が守れて、経験値やスキルが美味しかったし、悪くなかったと思おう。


 パッと思いついた作戦だったけど、不意打ち・落とし穴・生き埋めのコンボは中々強いかもしれない。

 勿論一定のサイズ以下のモンスターにしか対応できないけど、安全に倒せるならそれにこしたことはないでしょ。

 今後の狩りにも使えそうだし、木の枝などは一定量持っておくようにしておこう。


 ほんじゃ、作戦も決まったことだし今度こそ狩りに出発ぅ!

 いっぱい倒してどんどん強くなるぞー!

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