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序章

 荒れ果てた大地を眺める一人の少年がいた。

 かつてここには小さな村が存在していたらしいが、今は焼け野原のみが残っている。民家や畑でさえ跡形も無くなり、遠くの景色は炎と煙に包まれる中、馬と軍靴の音が響いて来た。

 兵士たちが少年の前を通り過ぎて行った。ある者は剣や斧を腰に下げ、ある者は火縄銃や長槍(パイク)を担ぎ、ある者は青銅の大砲を水牛と共に引きずり回していた。出血や過労で倒れる兵士も後を絶たない。少年はこの敗走する軍勢を少しの間観察していた。兵士たちの目を見ただけで、少年は彼らの事情を察した。みなまるで地獄を見たような目をしていたのである。きっと激戦だったのであろう。


 聖暦一六二八年。また戦争が始まったのだ。


 戦争はこの世界ではとくに珍しいものではない。大陸では複数の勢力が権力の確保と維持のため暗躍していた。幾度も戦争と侵略を繰り返し、血で築かれた歴史。西には、文化も軍事力も他国に評価され、「大陸の西壁」とも呼ばれていた()()()()()()()()()()。南東には、聖教の敵と認識されているが最高の軍事力と経済力を誇る()()()()()()()()。北東には、長年鎖国体制が続き、過去百年異国民を入れたことがないとされる()()()()()。そして大陸中央に「聖教の守り手」とも呼ばれている()()()()()()()()()()()()である。

 神聖ルーベシュタート帝国。その実態は神聖でもなければ帝国でもない。多数の小国家や王国により形成された連合国家である。国家元首は各国の諸侯たちによる選挙で決まるが、実際の権力は持っていない。帝国内で最大の権力を誇るのは帝国外にも領土を持つ()()()()()()()()である。膨大な軍事力と経済力を利用して帝国内の実権を握っている。近年、オストマルク王がルーベシュタート帝国皇帝の座を兼ねることが常態化している。これに対し抵抗の意を評した一つの小国家があった。()()()()()()()()()()()である。周辺諸国からの圧力に対抗するため軍に膨大な量の資金をかけており、帝国内では一、二を争うほどの軍事力を誇る。だがそれと引き換えに平民は貴族などに搾取され、民の暮らしは決して豊かであるとは言えない。

 そんな世界情勢の中、目の前の敗走する兵士たちに背を向け旅に出たのは一人の少年。後にこの少年は平民であるにもかかわらず歴史に名を刻むことになる。

運命の歯車は動き出す…



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