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桜舞う瞬間⦅とき⦆に  作者: レイ
桜舞う瞬間に
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桜舞う瞬間に



「お!おはよー茜」

「おはよう遠野」

 学校に着いて教室のドアを開けると、昨日と同じように高須と主音が僕に声を掛けた。


「おはよう」

「あれ、今日は機嫌良さそうだな。茜」

「まあな」

 鞄を自分の机の上に置き、二人を見て僕は笑った。


「良かったな」

 主音と目が合った。

 主音とは昨日、正確には今日空き地で別れてから初めて話をする。

 「ああ」

 僕は答えた。声から主音に気持ちが伝わるように。


 「……」

 主音は微かに笑って、それ以上何も言わなかった。

 僕も何も言わなかった。

 何故だかそれが一番正解のような気がしたのだ。


「なんだよ。何かいいことでもあったのか?」

「んー?内緒」

 高須が興味津々で聞いてきたが、僕ははぐらかした。

「教えろよ」

「無理。なあ、それより数学のプリントで分からないとこがあるんだ。お前数学得意だろ?教えてくれ」

「あ、俺も。分からないところあったんだ。今から一緒にやろうぜ」

「仕方ねえなあ」

 高須がぼやきながら、プリントを持って僕の席までやってくる。

 僕らは三人でプリントを囲み始めた。




 キーンコーンカーン。

 チャイムの音が学校全体に鳴り響く。

 一日の授業が全て終わり、生徒たちが各々自分たちの行くべき場所へと散っていく。


「桜もう散っちゃうね」

「うん。残念。でも散り際も綺麗だよね」

「本当だね」


学校の帰り道。

女子達が話をしながら前を歩いていく。

その言葉につられて僕も空を見上げた。


どこまでもつづく薄い水色の空に、もう終わりかけの桜が見えた。

枝の先には瑞々しい葉が生まれていて、ひらひらと優しく花びらが散っている。


まだ、胸は痛い。簡単に忘れられるものではないし、忘れたくはない。心はどうしても苦しがっている。 

 

ーーーそれでも。





「ああ。綺麗だな」


誰に言うでもなく僕は呟いた。




僕のそばで薄紅色の花びらが静かに舞っていた。


 

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