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桜舞う瞬間⦅とき⦆に  作者: レイ
桜舞う瞬間に
8/9

転換

 

あれから、どうやって帰ったのか覚えていない。

気が付いたら朝になっていて、僕は家に戻っていた。ベッドから起き上がり、明け方から少し眠ったことをぼんやりと思い出す。

(もしかして、全部夢だったのか…?)

 

眠すぎて朦朧とした頭を必死に動かす。

桜。夜の空き地。主音。新のこと。主音が言った言葉。花びら。

全て鮮明に覚えている。何年かぶりに声を上げて泣いたことも。

思い出すと顔から火が出そうだ。高校生にもなって外であんなに泣くなんて。

それでも心は今までで一番すっきりとしていた。


「あ、服」

改めて自分を見ると、ジーンズとパーカーを着たままだった。どうやら昨夜、着替えもせずそのまま寝てしまったらしい。


「夢じゃない…」

昨夜のことが夢ではないことに安堵して、僕はベッドから起き上がった。寝不足のせいで体は重たかったが、自分でも不思議なほどに素早く制服に着替えて部屋を出た。


「あら、おはよう。茜」

「母さん…おはよう」

リビングに行くと、久しぶりに見る母親がキッチンで朝食を作っていた。


「なんだか久しぶりね。一緒に朝食を食べられるの」

「今日は、仕事ないの?」

「ええ。今日は休みよ。本当に最近忙しくて、まともに休みが取れなかったから、今日は久しぶりにリフレッシュするわ」


にっこりと笑って言いながら、母さんはスクランブルエッグを皿に盛りつけた。

「休みなんだから、ゆっくり寝てればいいのに」

「いいのよ。最近は茜と一緒にご飯も食べられなかったし、ごめんね。一人にさせちゃって」

「別にいいよ。仕事なんだから仕方ないだろ」

「ありがとう」


パンが焼ける香ばしい匂いとコーヒーの香りが充満する。

久しぶりにゆっくりと僕は朝食を食べた。その後、歯を磨いて、学校の鞄の中に昨日やっていたプリントとスマホを押し込み、玄関まで行く。


「いってきます」


 靴を履くためにしゃがみながら言うと、これまた久しぶりに親に声を掛けられた。

「いってらっしゃい」

母親の声を背中に受けて僕は家を出た。


外に出ると雲一つない青空が広がっていた。

昨日の夜の景色とは全然違う。最近は雨もあまり降らず、今日と同じように晴れていることが多かったのに、今までと同じ青空がどこか違って見えた。

上手くは言えないが、確かに世界は変わっていた。

僕は近くの公園の脇を通り、住宅街を歩いていく。気持ちのいい風が吹き、足取りは軽く僕は学校を目指した。

  

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