deta,90:友達、増えるといいな
「おはよーさん! 美誠!」
「おぅ! おはよう梓!」
ラフィン=ジーン・ダルタニアスが運転する車から降りると、校門の前で藤井梓が待っていた。
あれから三日後の今日、二学期の始業式だ。
今年の夏はクローン騒動で、悠貴美誠にとってはあっと言う間の夏休みだった。
梓と運転席のラフィンと目が合い、彼から梓へペコリと会釈する。
これに梓も会釈を返すと、ラフィンはジェントルマンな微笑を浮かべてその場を去って行った。
「何や、彼氏からの送迎かいな。見せつけよんな~」
「そんなつもりじゃねぇよ」
刹那、美誠は頬を紅潮させる。
すると入れ違いに今度は別の車が、校門に横付けされた。
梓は車と運転手を見て、声を漏らす。
「あ」
「あ」
その車のドライバーも同様に声を漏らす。
氷室遊弥だ。
「何やあいつ、まさかうちを追っかけて来たんちゃうやろな!?」
梓が警戒を覚える中、助手席から誰かが降りてきた。
エレイン・ローレンスだ。
「それじゃあ遊弥、行ってくる」
エレインは運転席の彼に窓から声を掛けると、こちらへと振り返る。
「……おはようミコト」
「ああ。おはようエレイン。今日からだな。勉強、頑張れよ!」
「うん。やってみる」
エレインは抑揚のない口調でボソリと答える。
「美誠、この子知っとんのか!? 何で遊くんが……!?」
「ああ、この子は……まぁ、うちの彼氏の親戚みたいなもので、事情あって遊ちゃんが保護者代理として面倒見てるんだ」
「何や、けったいな話やなぁ」
「まぁ、話せば長い」
「それじゃあ悠貴さん、エレインをよろしく! アズアズも学校頑張ってね!」
遊弥は二人に声を掛けると、車でその場を立ち去って行った。
「悪ぃ、梓。俺この子を中等部の職員室に案内しなきゃなんねぇんだ」
「ほなら、うちも付き合うわ」
「ああ、それは別に構わないぜ」
美誠と梓の会話に、エレインがボソッと口にする。
「……誰」
「ああ、この子は俺の親友の梓だ。この子はエレイン・ローレンス」
「初めましてエレインちゃん」
「初めまして。あずあず」
「え!?」
「だって今、遊弥があなたをそう呼んでいたから」
「アハハ! せやか。敵わんなぁもう! よろしゅう」
梓は苦笑いすると、エレインと握手を交わす。
こうして美誠は梓を連れ立って、エレインと中等部の職員室へと向かった。
その間、ツインテールの茶色い巻き髪の外国人の少女で、中学の制服姿のエレインは注目の的だった。
「何あの子。すっごく可愛い!」
「うちの制服着てるけど、あんな子いた!?」
「転校生じゃない?」
などと言った声が聞こえてくる。
しかしエレインは全く無反応、無関心だ。
ただ黙って、美誠と一緒に歩いている。
「不安はないか? エレイン」
「……ない」
「いつでもうちら高等部の方に、遊びに来てもええからな」
「……分かった」
美誠と梓に声を掛けられて、エレインは素っ気なく答えた。
事情を知っている美誠は別段気にはしていなかったが、梓の方はそんなエレインの態度に戸惑いを覚えていた。
中等部の職員室に到着すると、美誠はエレインを新たに担当する教師へと預ける。
「それじゃあ、また後でなエレイン」
これに無言でエレインはコクリと頷いたのを見届けて、美誠は梓と一緒に行ってしまった。
担任教師に教室へと案内されるエレイン。
そして教室に入ると、クラス中の生徒に注目を浴びる中でエレインは怯むこともなく、挨拶した。
「エレイン・ローレンスです……」
名乗っただけで後は沈黙を通した彼女は、教師に指示されるがまま空席へと移動して座った。
クラスの生徒達はエレインに興味津々だったが、無口な彼女が周囲を取っ付き難い雰囲気を作ってしまっていた。
しかしそれでも、エレインは全く気にもしなかった。
やがて始業式も終わり、下校となって遊弥がエレインを車で迎えに来た。
車内にて。
「学校、どうだったエレイン」
遊弥が運転しながら訊ねる。
「エレインには問題なかった」
素っ気なく答えるエレイン。
「そうか。友達増えるといいな」
「友達、興味ない」
「努力しろ」
「エレインには、遊弥とミコトとアズアズがいる」
これに遊弥は苦笑いした。




