deta,82:嬉しいのに泣いちゃうの……?
「良かった……無事だったんだな! あ、いえ、だったんですね!? セレアさん」
「ああ、言葉遣いは気にしなくてもいいわミコトさん」
駆け寄って来た悠貴美誠に、セレア・メイランドは自然な笑顔を見せる。
「あの後、カイが助けてくれて……何とかギリギリ脱出できたの」
セレアに促されて、美誠は改めて水沢堂魁を見ると。
「……――魁……! その顔……!!」
美誠は愕然とする。
「どうお? 更に男前さが増したでしょ?」
そうおどけて言った魁の顔は左側が首にかけて、大きく皮膚が焼けただれていた。
「そんな……大丈夫かよ……!?」
「大丈夫よこれくらい。もう病院に行って必要最低限の治療もしてあるし。気にしないで」
「とりあえず、水沢、セレア、こちらへ来てお座りなさい。話はそれからゆっくりしましょう」
ラフィンに促されて、魁とセレアはリビングへと歩を進める。
「あんた相変わらず冷静ね~! お座りなさいって、犬じゃないんだから」
ブツブツ言いながら、ソファーに腰を下ろす魁とセレア。
「まぁ、ご覧の通りセレアが一緒だったから、昼間の行動を避けていたら少ーしばかり、遅くなっちゃったケド、何とか無事よ。がっかりした? ラフィン」
「はい。心の底から」
「まーっ! あんたホント素直じゃないわね!」
「正直者と言ってください」
どうもラフィンは、魁を前にするとツンデレる所がある。
このやり取りが嬉しくて、満面の笑顔で眺めている美誠だったが、ふとクスクスという忍び笑いに気付きそちらを見ると、セレアだった。
「ラフィン兄さん、カイに振り回されているのね」
「セレア……すっかり大きく成長しましたね」
「そんなに変わってないわ……特別あれ以来身長が伸びたわけでもないし」
「いいえ、いろんな意味で、です。ひとまず、話は聞いているかと思いますが紹介しましょう。彼女は悠貴美誠と言って――」
「ラフィン兄さんの恋人でしょう?」
「え、ええ、そうです……」
ずばり義妹に指摘され、珍しくラフィンは少しだけ顔が赤くなる。
「はは~ん。あんた、身内に弱いのね」
魁がニタリと笑う。
これを無視してラフィンは続ける。
「そして彼女はセレア・メイランド。血の繋がりはありませんが、本部にいた頃、兄妹のように育った仲です」
「改めまして。えっと、俺17歳だから、セレアお姉さんって呼んだ方がいいのかな?」
「いえ、セレアで構わないわ」
「そうよ。そんなの気にしていたら、あたしラフィンのことお兄さんと呼ばなきゃいけなくなるじゃない。年下なのに――」
「“お兄さん”と、今後はお呼びください? 水沢」
セレアと美誠のやり取りに口を挟んだ魁へ、ラフィンがしたり顔で述べた。
「あんた……蹴り倒すわよ……」
魁が口元を引き攣らせる。
「クスクス……カイとラフィン兄さん、楽しそう」
「そんなわけないじゃない!」
「そんなわけありません!」
同時に口にした魁とラフィンは、軽く睨み合う。
しかし今度は、ラフィンと魁とセレアがギョッとする。
美誠が笑いながら、涙を零していたからだ。
「ちょっとあんた、泣くか笑うか、どっちかにしなさいよ気持ち悪いわね……」
「だってこのやり取りが嬉しくって俺……ウェ~ン!」
ついには隣にいるラフィンへと泣きつく美誠。
「嬉しいのに泣いちゃうの……?」
キョトンとしているセレアに、魁が嘆息吐きながら答えた。
「この子、超絶涙腺が弱くて喜怒哀楽の度に泣いちゃうのよ……気にしないで」
すると、魁のスマホが鳴った。
「あら、遊ちゃんからだわ」
「え? 遊ちゃんにはもう無事だったこと、先に知らせていたのか?」
「そりゃそうよ。あの子はあたしの手足だもの。今後は弟子として育てていくつもりよ。情報屋のね」
美誠からの問いへ、魁は早口で答えてから、通話に出る。
「どうしたの? ええ、ええ……そう。それは良かった……え? ――それは本当に……? 分かったわ。今セレアと一緒にラフィンと美誠に顔出しに来てる所よ。じゃあそのまま、そこで待機しておいて」
魁は簡潔に述べると、通話を終了する。
これにラフィンが敏感に反応する。
「……水沢。何か隠していますね」
「隠してなんかないわよ! ちゃんと話す気だったわ。まだ再会の喜びの途中だったから、言い出さなかっただけ!」
「カイ、もしかして……?」
セレアがふと不安そうな表情を浮かべる。
これに魁は小さく首肯して見せてから、改めて口を開いた。
「エレインはまだ生きているわ」
これに美誠とラフィンは衝撃を受けた。




