Data,43:息抜きに、お茶でもいかがですか?
「エレインか。年、いくつ?」
悠貴美誠の問いかけに、エレインはぼんやりとした表情ながら、ジィッと美誠を見つめて答える。
「14歳」
「じゃあ中学生だな」
「……あなたは誰なの?」
今度は美誠がエレインの質問に答えた。
「俺か? 俺は悠貴美誠。17歳だ」
「じゃあ、高校生だね。ミコト」
突然年下に名前を呼び捨てにされて、美誠は少しだけ驚いたが、外国人であることもありそのまま受け流した。
「一人でお祈りしたいことがあるから……終わったらすぐ帰るわ」
「あ、ゴメンゴメン! じゃ、また今度な! エレイン」
「ええ、ミコト……」
そうして祭壇の奥へと姿を消した美誠を見送ってから、少女は静かに口角を引き上げた。
そしてエレインは神へと祈る。
「どうか……クローン体成功化しますように……」
「で、何。あんた達、本気で付き合い始めたの?」
「はい」
「せやねん♥」
中華料理屋で、テーブルを挟んで向かいに互いに腕を組んで座っている、氷室遊弥と藤井梓を前にして、水沢堂魁は白々とした視線を送る。
「ま、あたしは別にどーでもいいんだけど、その娘大切にしないと美誠を敵に回すわよ」
「別に仮に敵に回しても怖かないですけどね」
「もれなくあたしも回るわよ」
「あ、じゃあ回さないっス」
魁と遊弥はラーメンとチャーハンを、梓はチャーハンのみを食べていた。
「それで、二重スパイになってもまだ、ダルタニアスさんを紹介してもらえないんスか」
「あいつ、小心者だからね。難しいわよ。スムーズにはいかないと思って頂戴」
「もう別にやましい気持ちはないだけどなー」
遊弥は溜息とともにそう口にする。
ちなみに魁に言わせると“小心者”扱いだが、ラフィン=ジーン・ダルタニアス本人は“警戒心”が強いとの言い分だ。
「ん? タルタルソースって?」
「う、うーんと……」
梓の質問に、遊弥が答えに困っていると、あっさりと魁が答えた。
「ダルタニアス。美誠の彼氏よ」
「へ? でも美誠の彼氏は水沢堂先生やったんとちゃいますのん?」
「ちょ、水沢堂さん! この子は……!」
「どうせあんたらクローン人間には二人の関係バレてるじゃない。一般人の梓にも知られたって今更どうってことないわよ。ダルタニアスはイギリス人の美誠の本命。あたしはあくまでも代理よ」
「えっ! 美誠の本命って外国人なんですのん!?」
「そ。ヒッキーのね。だから表向きではあたしが代理やってんの」
ラフィンがこの場にいないことをいいことに、魁は酷い言い様だ。
「ヒッキーに代理とかって……美誠もよう辛抱してんのやな……」
梓はこの場にいない美誠に、同情を覚える。
「それで? 鮫島とあんたはどこからの回し者なの?」
「まぁ、ライフサイエンス研究所からとだけ、言っておきます」
「ふ~ん。成る程ね。じゃあ後は自分で調べろってことね?」
「行き詰らない限りでは、ですね」
「なぁなぁ、さっきから何の話してんのん?」
梓が二人の会話に、首を突っ込んできた。
「お子様のあんたには解からないことよ」
「大人の話っちゅーことかいな」
「そーゆっこと! 遊ちゃん、今度からこういう会話する時は、このお嬢ちゃん置いてきなさいね」
これに梓が声を上げる。
「えー! 何でやねん! うちに聞かれたらアカンことでもあんのん!?」
すると魁は梓に鋭い指摘をした。
「あんた達の大事なデートに、あたしに割り込まれたくないでしょ! ってことよ!」
「せやか。そらえらいすんませんでした……」
魁からのもっともな指摘を受けて、梓は少し顔を赤らめた。
それまで書斎にこもっていたラフィンは、部屋から出てくると大きく伸びをした。
そして大きな溜息を吐く。
階下のリビングに行くと、美誠が耳にイヤホンをつけて夏休みの宿題をしていた。
背後から覗き込むと、科目は化学だった。
それこそ今まで、書斎にてそれに取り組んでいたラフィンには、朝飯前の内容だったが。
ラフィンは軽く人差し指のみで美誠の肩を叩くと、彼女は振り返り彼と分かるや、イヤホンのコードを引っ張って外した。
そんな美誠に、ラフィンは満面の笑顔を向ける。
「息抜きに、お茶でもいかがですか?」




