Data,25:お世話になります
「ふん。随分スクールライフを楽しんでいやがる」
学校の向かいにあるビルの屋上から、悠貴美誠達の様子を窺っている男が二人。
「それで情報は?」
左目に黒い眼帯をしている男が、望遠鏡で学校の屋上を覗き見ていた。
鮫島だ。
「何でも、あの四人の中で一人だけ彼氏がいないらしいよ」
「ほう。そうか……だったら氷室。お前がその娘の彼氏になれ」
「え!? 何言ってんだよ鮫島さん! そんなことしている場合じゃ……!」
氷室と呼ばれた、見た目がチャラそうな男が驚きを露にする。
「バカが。解からないか。その娘、あの悠貴美誠の友達なんだろう? そこからそれとなく、お前がダルタニアスの情報を引き出すんだよ」
「……ああ! そういうことか! 了解。そういうことなら任せてよ鮫島さん」
意味を理解するや、氷室は不敵に微笑んで自分も持っている双眼鏡で、藤井梓の方を覗き見るのだった。
「事情はダルタニアスから聞いたよ。ついでに君の経緯もね」
学校からラフィン=ジーン・ダルタニアスの迎えの車にてセントティべウス教会に帰って来ると、老神父が出迎えてくれた。
「あ……すみません。あの、その、何と言うか……」
戸惑う美誠に、老神父はニッコリと優しい笑顔を見せる。
「何も気兼ねすることはない。私も君をここに置いておくのは賛成だよ。ひとまず自己紹介をしてもらおうかな」
「あ、すみません。俺――いや、私は悠貴美誠と言います。17歳の高校二年で、双葉学園に通っています」
「うん。私は麻宮清と言う。この教会の神父だよ」
「はい、神父様。お世話になります」
「神父様だと堅苦しいだろう。どうだい。ここはお父さんと呼んでくれては。いや、もうお爺さんかな?」
「いえ、じゃあ、是非お、お父さん、で……」
「そうか。ではよろしく美誠」
老神父の優しそうな笑顔に、美誠は嬉しさのあまりくすぐったさを覚えた。
「はい! お父さん」
美誠の様子に、ラフィンも微笑みを浮かべた。
翌日――。
学校の修了式も終わり、生徒達はそれぞれ帰路に着き始めた。
セミロングの山村満利奈とショートヘアの藤井梓は女子寮なので学校の敷地内なのだが、元々自宅から通っているツインテールの西沢望と、そして新たにその一人に加わった美誠も見送る為に、二人は校門まで付き合ってくれる。
いつものようにこの日も、満利奈と梓とともに望と美誠は校門へと他愛ない会話をしながら、向かったのだが。
校門の前に美誠は見覚えのある車を見つけた。
「あれ?」
これに反応する美誠に、三人は彼女の視線の先を辿る。
すると運転席から、みんなにとっても見覚えのある人物が降りてきた。
「水沢堂先生じゃない?」
「ホンマや。もう短期就任終わったはずやのに」
「誰かを待ってるのかな」
満利奈と梓と望の順で言い合う。
するとこの三人を気にすることもなく水沢堂魁は、美誠へと声をかけてきた。
「はあ~い美誠! 待ってたわよ☆」
これに硬直する満利奈と望と梓の三人。
「か……いや、えっと、み、水沢堂先生……!?」
「もう! 先生とか呼ばなくったっていいわよ。もう辞めてるんだし」
顔を引き攣らせる美誠に、平然と述べる魁。
いや、そういう問題じゃなくて。
内心密かに思う美誠。
「こ、こ、これはうちの聞き間違いとちゃうよな、なぁ?」
「う、うん、お、おネェ言葉……」
「しかも美誠を指名してるし……」
動揺を露にする梓、望、満利奈。
「迎えに来たわよ美誠。ほら、早く車に乗って」
三人を他所に、言葉を続ける魁。
「むむ、迎えに来たって、どうゆうこっちゃねん美誠!?」
梓が投げかけた疑問に、美誠も動揺せずにはいられなかった。
「い、いや、それはその、何つーか、俺もちょっとよく分からなくて!」
そう美誠は答えておいてから、足早に魁へと歩み寄る。
「迎えってどういうことだよ!?」
「どういうも何も、そのままの意味よ。さぁ、車に乗った乗った!」
魁は有無を言わせず助手席のドアを開けると半ば無理矢理、美誠を車の中へと押し込んだ。
そしてドアを閉めると、立ち尽くしている三人に手を振った。
「それじゃあ三人とも、チャオ♪」
それだけを言い残して魁は運転席に乗り込むと、車を発進させた。




