第三話
上空から聞こえた声に少なからず驚いて上空を見ると真っ白な大きな翼と鋭利な手足を持ち、黒く長い髪をたなびかせながら女性が上空にホバリングしていた。
その速度では通常であれば落ちてしまうほど翼はゆっくりとはばたき、出ているはずの羽の摩擦音は一切聞こえなかった。
彼女曰く、種族魔法を使用しているらしく半径1メートルまで近づいても鈍い人は気づきもしないのだとか。
なんだかんだ自己紹介と私の現状を伝え終えたのち、私の要望を伝える。
「養ってください」
「お断りします」
食い気味で否定されたがしょうがない。しかし計画通りである、話術の一つとして初めに無理難題を引っかけてその次に本命の要望をさもしょうがないこれで勘弁してやるか、といった感じで提案すると「一度断っている手前そのくらいなら叶えてあげるか」となるのである。
「実は迷子でして、よければ近くの村に連れて行ってもらえませんか?」
「さっきの会話は何だったの?」
「もしかして一目惚れとか?まあ、人族がうらやむほどこの羽は美しいのはわかるわ」
「この美しい白い羽は私の血筋ではまれにしか出ないのよ。周りからの視線も鬱陶しいし、ほんと勘弁してほしいわね」
言葉が濁流のごとく流れ、終わる気配を見せない。私から振った話とはいえこの状況は少々めんどくさいし、なんだかわからないがちょっとした既視感も感じる。デジャブというかなんというか、これは自称アニメオタクの友達に「〇〇のアニメ見たけど面白かったわ」といった後の感じである。
曖昧に相づちを打ちながら所々よいしょし、異世界の情報を少しでも集めていく。
「換羽の時に出た抜けた私の羽は高く売れるの、装飾品に使ったり、枕にするんですって」
「そうなんですか。その白い羽は柔らかそうですし、高級枕にはピッタリの素材ですね」
「そうなの、妹なんて私の羽でよくお昼寝をしていてこの羽じゃないともう寝れないなんていうのよ」
彼女は自慢げに話しながらも瞳だけは笑っていないような、私を観察しているような、そんな感じがした。
いつの間にか話の流れが変わっていて彼女の自慢話から私への質問に移っていた。
「ここらへんで人族は全然見ないけれど、どこから来たの?」
「ずっと東の過疎化した田舎の村から来ました。人族もほとんど知らないような場所なので多分知りませんよ~」
この世界では異世界人の扱いが未だにわからないのであやふやに曖昧に自分のことを話していく。
見破れない嘘のつき方は秘密にしたいことを決めて、そのほかの部分は本当のことをしゃべることだ。
私の秘密にしたいことは[異世界出身だということ]それ以外はすべて本当のことを話そう。
「ここに来るには随分と軽装だけどどうしたの?野盗にでも襲われたの?」
「いやあ、実は自分でもわからないんですよ。いつの間にかここにいたので......」
「見慣れない服装をしているけど?」
「私の故郷の服ですね。故郷では一般的ですよ。」
なんだか尋問のようになってきた。彼女の表情はニコニコの笑顔で固定され、なんだか恐ろしい。
「さっき見ちゃったんだけど、急に髪の毛が伸びたよね?あれってなんなのかな?」
彼女の声が少しだけ高くなり、かっこいい釣り目の中の瞳が宙を描くように左右に揺れた。
もしかしたら彼女が本当に聞きたかったのはこれなのかもしれない。
「私は[髪の毛を生やす能力]を持っているんです。」
辺りが静かになり、草原を風が通り抜ける音しか聞こえてこない。
彼女の表情が笑顔から真剣な悩んでいるような表情になった。
「あなたには突然のことだと思うけれど、どうか聞いてほしいことがあるの。」