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「つまり殺せば良いニー?」
「……間違いではないですが、話聞いてました?」
車の中で二人の男女が会話していた。一人は年に似合わないセーラー服を着ていて、ボサボサの赤いくせ毛から、ツンとした匂いが漂っていた。
三白眼。とでもいうのだろうか。彼女の鋭い眼光は、目の前にある巨大な山をじって見つめていた。
もう一人は顔立ちが整っている青年だが、なぜか白く輝くプレートアーマーのようなものを身につけていた。春の風が吹く暖かい季節だというのに、彼は汗ひとつかいていない。
青年はため息を吐きながら手にしてる紙をセーラー服の女性に突き出す。
「よく見てください。依頼者は娘を助けてくれ。と依頼したんですよ?」
「にゃ」
「だから優先するのは被害者の娘さんを助けること。そして、奴らを駆除……つまり殺すのはついでなんです。ついで。殺したい気持ちはわかりますが少しは抑えて……って、ちょっと!?」
セーラー服の女性はいつの間にか自動車のドアを開けて外に出ていた。暖かい日差しを浴びながら、大きくあくびをして車内にいる青年に目を向ける。
「捕まったのはいつにゃー?」
「……3日前。ですね」
「じゃ、もう遅いにゃ。あいつらに捕まった人間が無事でいられるのはせいぜい数時間。長くて一日……多分依頼者の娘を助けて欲しいってのはそういうことにゃ」
「…………あなたは非道すぎる」
「キミが甘いだけにゃ。さぁて、被害が広がる前に殺しに行くにゃよ」
女性はそう言って歩き出す。その時、強い風が吹き、女性のスカートをめくりあげた。彼女の白い足が覗くが、彼女は気にしない。
ただ。その白い足には——
何か蠢くようなものが数匹。まるでその足から生えていたかのようにそこに存在していたのだった。