4-1
陸は不快感が今強くあった。それもそのはず。犯罪者が座るような、椅子の上に座らされていたのだから。
手首や足首。胴体を鎖でぐるぐる巻きにされて、動くことができない。昔テレビで見たことある。電気椅子の死刑のことを思い出す。
さらにいうならば今の彼は何も着てない。つまりは全裸なのだ。見られたくはないところを全てさらけ出しているので、尚更不快感がある。
かちゃかちゃと後ろの方でアルツが何かしている音が聞こえるが、そこを見ることができず、少しだけ不安が湧き上がってくる。
ふと見上げると目の前にタオルを持った助手。そして、その横にリュウジが立っていた。リュウジは陸を見たあと、真剣な眼差しで陸を見ながらつぶやいた。
「今ならまだ間に合います。人間をやめなくて、済むんですよ」
「……正直、その言葉に乗りたいです。やーめた。と言いたいくらい」
「でしたら……!」
「でも、ダメなんです。多分、どっちを選んでも俺は後悔をする。だから――」
陸はチラリと助手の方を見る。
彼女が言っていたのだ。後悔が少ない方を選べ。と。だから、陸はその言葉に乗った。乗った結果、今ここにいる。
空のことは俺が守る。なんて、恥ずかしくて言えないけど。行動でそれを示す。
「うんうん。いい兄妹愛だ。それを邪魔する権利は私たちにはないよ」
「しかし……」
後ろにいたアルツは陸の両肩を掴みリュウジの言葉を遮る。微かに香るアルコールの匂いが、陸の鼻の中に無理やり入り込んできて、陸は思わずむせる。
コツン。と、何かが首筋に当てられる。それの感触で、陸はぞくりと全身を震わせ。それ以上に、何かの恐怖を感じた。
「……わかりました。後のことは、お任せします」
「了解了解。私は天才だからね。子供の手術も初めてじゃないから上手くやるさ。まぁ、大事なのは陸くん自身のやる気元気負けん気だけどね」
「俺は……大丈夫です」
「というわけさ。まぁ死んだら運が悪かったと思ってくれたまえよ」
その言葉と共に、陸の首筋にあった違和感が全身に流れ込んできた。その瞬間に、陸の体は悲鳴をあげはじめる。
助手が手に持ったタオルを陸の口に巻きつける。口に広がる布の味は、気色悪くて。しかしその気持ちも痛みによってすぐ消える。
陸は全身に走るそのおぞましい痛みに、耐えることしかもうできなくなっていたのだった。