それぞれの事情
覚えているのは体に受けた強い衝撃と回る景色だった。
次に目覚めた時、僕は見知らぬ草原に居た。
理解が出来ない……僕の住んでいた地域にこんな草原なんてなかった筈だ……
(とりあえず人を探すか?しかし、土地勘がない場所を動くのは怖い……)
うんうん唸って悩んでいると、不意に、「大丈夫ですか?お兄さん」と声を掛けられた。
こんなところで人に会うと思ってもいなかったもので、酷く驚き、声の方を見やると一人の年端もいかない少女が此方の様子を伺うように立っていた。
「本当に大丈夫ですか?お兄さん」驚きで返事の出来ない僕に再度の呼びかけ。
「え、えぇ……」声を出す事に必死だった。
「そっか、良かった!」屈託のない笑顔が、あまり女性との接点がなかった、ましてやこんな状況の僕にとてもよく染みる。
彼女の笑顔を噛み締めていると、彼女は僕の顔をジッと見つめ、「お兄さん、私とどっかで会ったことある?」と聞いてきた。
ナンパかな?と思考を横切るがこの人を逃すとまた一人で立ち行かなくなってしまうので、「いえ、初めてお会いしましたよ」と真面目に答える。
そっかー、と今度は僕の全身を眺めると、ハッとした顔をして、
「お兄さん、異世界の人でしょ!」