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05

お久しぶりです……。

一番最初から誤字脱字のチェック・改稿を行いました。

騎士団→騎士隊になりました。その他細かいことが変わっていたりしますが、読み直さなくても特に問題はないかと思います。

「ウィンド」


 ルナレイアたちと別れ、ユスティは壁を登っていた。否、駆け上がっていた。その姿に小さくどよめきが上がるが、それは無視した。このくらい、魔術師なら誰でもできるのだ。


「ま、詠唱省略できるのは僕くらいなもんだけどね」


 そう言って、笑った。今からスタンピードを止めるというのに、不思議な気分だった。撃ち漏らしたとしても、仲間たちがちゃんと斬り伏せてくれる。だからだろうか。


「自由に魔術を使っていいなんて久しぶりだなあ。不謹慎だけど、楽しみだ」


 最後に全力で魔術を使ったのは何年前のことだろうか、と、ユスティは思った。強大な力を持つと、それを振るうのは制限される。仕方のないことだとは思っているが、窮屈ではあった。

 城壁の上に到達し、そこへ立ち、詠唱する。


「真面目に詠唱するのも久しぶりだ。――風よ、眼前の敵を殲滅せよ。サイクロン・アグレッション」


 暴風が魔物たちに襲いかかる。たくさんの魔物が吹っ飛び、命を落とした。


「あれ、おかしいな。思ったより効果が薄い。――風よ、眼前の敵を殲滅せよ、サイクロン・アグレッション。風よ、眼前の敵を殲滅せよ、サイクロン・アグレッション」


 続けて二発撃ったが、やはり効果は少ない。それでも多くの魔物を殲滅しているが、思った程ではなかったのだ。


「相手にも魔術がつかえる魔物でもいるのかな。水に切り替えよう。――水よ、眼前の敵を殲滅せよ、アクアヴァハ・アグレッション」


 激流が、魔物たちを襲った。その時、ユスティは魔法を受けてもびくともしない、黒い集団を見つけた。一番外側にいるのは、黒いゴブリンだ。


「黒いゴブリンなんて見たことないや。とにかく、風も水も効きにくいなら、火と土も使ってみよう」


 このままじゃ埓があかないと、ユスティは苦手な魔術も使うことにした。あまり残しても、シドとラナリーの負担になる。


「炎よ、眼前の敵を殲滅せよ、イグニス・アグレッション。地よ、眼前の敵を殲滅せよ、グラヴィエ・アグレッション」


 業火と砂塵が魔物たちに襲いかかる。苦手なせいで風や水より威力の弱いそれは、やはり一定の魔物たちには効かないようだ。


 ユスティは考え込んだ。このままでは、シドとラナリーの、街の冒険者の負担が大きくなる。シドはともかく、ラナリー、そして、街の冒険者たちがこのスタンピードに激突すれば、負傷者が多くなり、そして、大好きなルナレイアの負担も増える。


 こうなると、もう手はひとつしかない。


「危ないから使いたくはなかったんだけどね。――風、水よ、眼前の敵どもを打ち払い殲滅せよ。我が敵を駆逐せよ! サイクロン・アクアヴァハ・エクスターミネーション!」


 二段詠唱、それは、失われた技術のはずだった。古い文献でそれを見つけたユスティは、ちゃんと覚えておいた。だが、練習のしようがないその魔術を、ユスティは封印していた。どんな効果かもまだわからない、そんな魔術だったからだ。

 失敗する危険性もあった。そうなると、街を巻き込んで爆発していたかもしれない。それでも、ユスティは使った。街と、だいすきな仲間たちを守るために。


「はっ、はあ……はあ……」


 ユスティは膝をついた。魔力は既に空っぽだった。回復するために、魔力ポーションを呷った。


「きっついなあ。……まさか、魔力をこんなに持っていかれるなんて、思ってもみなかった」


 魔物たちに襲いかかった風と水の嵐は、収まった。


「な、なんで……」


 全て殲滅されたと予想していたユスティは、驚愕した。大半の魔物は魔法にやられ息絶えていたが、今回のスタンピードの長と思われる魔物と、ほかにも20体くらいが、生き残っていた。


「親玉が残ってるなんて、おかしいよ……」


 ふと街の外を見ると、シドとラナリーが駆け出していた。もちろん、スタンピードの生き残りを倒すためだ。


「僕も、もうちょっと休んだらいかないと。あの魔法を耐えたんだ。シドとラナリーが倒せる保証もない……」


 だが、ユスティは、城壁の上で倒れ、そのまま意識を失った。膨大な魔力をもつユスティだが、一気にその魔力を使った反動に、体が耐え切れなかったのだろう。


「あれ、おかしいな……、シド、ラナリー、気をつけて……」



***



「ユスティの全力など見たのは、初めてかもしれん」

「そうなの?」

「ああ、あいつの要する魔力は大きすぎる。そのせいで力を制御することを強いられてきた。そのユスティが全力で魔力を解放するということは」


――それだけ敵が、強大であるということ。


「行くぞラナリー、お前は雑魚を片付けろ」

「わかった」


 シドとラナリーは駆け出した。ラナリーは、黒い取り巻きたちに剣を向けた。旅を始めてから一ヶ月の間で、ずいぶんと手に馴染んでいる。


「黒いゴブリンなんて、知らないって」


 文句を言いながら、シドが親玉まで駆け抜ける道を作る。ゴブリンたちの腕を切り飛ばし、足をなぎ払う。戦力で劣るラナリーより、強いシドの方が親玉を叩き落とせる。ラナリーもそれはわかっている。


 それでもラナリーは、シドに並び立ちたかった。もっと、強くなりたいと、願った。


「親玉は任せたわよ、副隊長サマ!」


 シドは振り返ることなく、黒いオーガまで駆け抜け、斬りかかる。背中はラナリーに預けている。


「黒いオーガなど、初めてお目にかかる。なぜ、お前の体は黒いのか」


『体が黒いだけじゃないぜ? オレはそこらのオーガより、何倍も強い』


 シドは何度も斬りかかるが、その度に腕で防がれてしまう。通常のオーガはそのようなことはできず、ただ斬られるだけ。


『オレはオーガキング! 全てのゴブリン、オーク、オーガを統べる者だ!』


「そのようなこと、許せるわけがない!」


 水の魔力を使い、体内の血を躍らせ、身体技術を上げる。ともすれば体がはじけ飛ぶ諸刃の剣だが、今使わずにいつ使う。


 先程よりもスピードも、力も上がったシドについていけなくなってしまったオーガキングは――。


 シドの剣により、首を落とされた。


「呆気ない」


 ユスティの全力にも耐えて凌いだその体は、しかしシドの剣には敵わなかった。


「シド!」


 オーガキングの首をはねたシドに、ラナリーが駆け寄った。


「大丈夫?」

「誰にものを言っている。それよりお前こそ……」


 あたりを見回すと、オーガキングの取り巻きたちは全て倒れていた。


「オーガキングを片付けたら手伝わねばならんかもしれんと思っていたのだがな……」

「あたし、そんなに弱いわけじゃないから」


 そこまで見くびられていたのか、と憤慨するラナリー。


「お前の強さを上方修正せねばならない……、だが、今は……」


 シドは崩れ落ちた。魔法を使って無理に体を動かしたため、限界が来たのだろう。


「ちょっと、あたしにシドを運べって言うの!? 無理に決まってるじゃない!」


 運んでやりたいのはやまやまだが、ラナリーの細い体ではシドを運ぶことなどできない。仕方なくラナリーは、城壁の外の冒険者たちに助けを求めた。


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