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第57回 私の好きなギタリスト ランキング・ベスト30 (20位~11位まで)

ギターをこよなく愛する洋楽ファンの皆様、お待たせしました。

そうでない方も全く遠慮は要りません。むしろ大歓迎です。


さあ、それでは、待望のギタリストランキング、20位から11位までの発表を、行なって行きましょう。


と、その前に、ランキングを作っていて思ったんですが、自分が好きなミュージシャンについて、どのくらい好きか、という尺度って、意外とあやふやなものなんですね。

特に、誰と誰を比べて、どちらが好きか、と考えた時に、どちらにも違った良さがあるのだから差をつけるのが難しい、という事が頻繁に起こりました。

それでも、CDやデジタルデータで集めている音源の数を比べてみると、より好きな方を、たくさん収集しているという事実があったので、その点も踏まえて、世間の評価に関係なく、自分が本当に好きなミュージシャンを上位に持って来る事ができました。


とはいえ、20位以上は、かなりオーソドックスな面子が並んでいると思います。

これまでのコラムの中で、何度も見かけた名前が出て来るのに、気が付く方もいるでしょう。


基本的に、私は王道的で古典に準じたロックが好き、という事でしょうね。




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第20位 サム・アンドリュー&ジェイムズ・ガーリー (【ロック】ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー)


稀代の女性ロックシンガー、ジャニス・ジョプリンを世に出したバンドとして、ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーは有名ですが、ジャニスの個性が強すぎて、ジャニスのバック・バンドだと思われてしまう節があるのが残念な所です。

このバンドには、素晴らしいギタリストが二人在籍しています。

サム・アンドリューとジェイムズ・ガーリーです。

どちらも、知名度はあまり高くないんですが、演奏内容は私の好きな衝動を音にするタイプで、引っ掻き回すような特徴的なソロは非常に聴き応えがあります。

ウィキペディアには、「このバンドは演奏能力が不足していることでも知られ」なんて書かれていますが、どこに耳が付いているんでしょうか?


凄まじいアドリブの応酬を見せるライブ演奏を聴けば、彼らが大胆な冒険心と高い演奏能力とセンス、そして個性までをも確立しているのは明らかです。


映像なら、1967年のモンタレー・ポップ・フェスティバルにおける「Ball & Chain」の全てを出し尽くした熱演が見事ですが、残念ながらこのライブ時の全ての演奏をまとめたバンド単位のCDは公式に発売されていません。


次善のお勧め盤はこちら「Live at Winterland '68」




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第19位 レニー・ブロウ (【ジャズ】)


正直に言うと、私はモダンジャズギタリストの演奏が、全般的にあまり好きではありません。

過去の偉大なアドリブプレイヤー、主にチャーリーパーカーとウェス・モンゴメリーが創造したメロディーラインの引用で構成された、飛び抜けた個性の無い、聴きやすいけれど衝動的な興奮の乏しい演奏の数々。

1960年代初頭までのジャズは、どの音楽ジャンルよりも先鋭的で挑戦精神に富み、トランペット、サックス、トロンボーン、ピアノ、ベース、ドラムスなどのソロ楽器で数多くの天才的なアドリブプレイヤーを輩出していますが、ことギタリストに関しては、小器用な演奏家こそ枚挙にいとまがないものの、私が真に入れ込めるほどの魅力を持った演奏家はほとんどおらず、残念ながら、普段聴きたいと思うギタリストも、ロックギタリストの向こう見ずな激しさの方に軍配が上がってしまう次第です。

しかしながら、この第19位に選出したレニー・ブロウは、ロックギタリストに負けない個性とテクニックとガッツと奥深さを持った、その数えるほどしかいない私の愛聴するジャズギタリストの一人です。

まず、彼の良さは、コード(和音)の選択の独特さです。

カントリー、ラグタイム、フラメンコ、クラシックなど、ジャズ以外のジャンルからの影響をミックスした美しくもなめらかなメロディーラインを、いっそう輝かしいものにしているのは、背後で鳴っているコードの、古臭さを感じさせない新鮮な響きに他なりません。


そして、彼のサウンドにはもう一つ、〝切なさ〟という、私が大好きな感覚を味わえるという魅力があります。

抒情的なメロディーを弾く、という事と、抒情的にギターを弾く、というのは、同じ事ではありません。

抒情的に奏でるというのは、表現力の数あるテクニックのうちの一つなのです。


そして、これを実現できる演奏家が、意外と少ない。


彼の奏でるアルペジオの夢のような美しさとはかなさ、これは、深い寂しさと愛しさを知る人だけが奏でられる音です。


心が疲れた時、彼の演奏を聴くと慰められるのは、自分が感じている辛さと同じ気持ちを、彼も持っているような気がして、安心できるからかもしれません。


お勧め盤『The Legendary Lenny Breau ... Now!』(1979年)が最高なんですが、残念ながらCD化されておらず入手困難!

なぜこれほどの名盤をCD化しないのか。

あまり売れそうにないマイナーなレコードはマニア向けにどんどんCD化されているのに。

音楽産業の方針はつくづく訳が分かりません。




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第18位 マイケル・シェンカー (【ロック】スコーピオンズ、UFO、マイケル・シェンカー・グループ)


ディープ・パープルのリッチー・ブラックモアのテクニックを発展させたクラシカルな速弾きで、ハードロックからへヴィ・メタルへの橋渡し的な役割を果たしたのが、ドイツ人ギタリスト、マイケル・シェンカーです。


私が好きな彼の演奏も、やはり速弾きを中心にしたアップテンポの曲が多いです。


UFO時代では「ドクター・ドクター」「ロック・ボトム」「ライツ・アウト」、マイケル・シェンカー・グループ時代では「アームド・アンド・レディ」「イン・トゥ・ジ・アリーナ」「キャプテン・ネモ」が特にお勧めです。作曲家としても数々の名曲をものにしています。


早く弾ける=カッコいい、という、シンプルな良さが、若い人を中心にマイケルが好まれる理由です。

ともするとそこが、味わいや深みの不足といった、速弾きギタリストにありがちなマイナス面に感じられることもありますが、1970年代から1980年代初頭にかけての彼のプレイは、向こう見ずな大胆さというロックに大切な要素をしっかりと持ち合わせているので、その時代の演奏なら、どれを聴いても満足度が高いでしょう。




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第17位 ポール・コゾフ (【ロック】フリー)


ポール・コゾフは、シンプルに徹したプレイが特徴のギタリストです。

速弾きは全く行いません。クラシックギターの素養があるそうですが、その高度なテクニックを垣間見せる事もありません。


ブルースを基本としたゆったりとしたバッキングとソロで、どの曲も彩られているので、普通は聴いていて飽きが来そうなものですが、彼に関してはなぜか、それがありません。


ギターの響きの事を、「鳴り」と呼びますが、彼のギターの鳴りは、パワフルでありながら繊細さも持ち合わせる、絶妙な音色です。それに加えて、ビブラートの名手でもあり、非常に情感のこもった音の震わせ方を聴かせてくれます。


ギターヒーローらしいテクニックの誇示や派手なアクションを行なわなくとも、音楽ファンから崇められるギターヒーローになれる、という、稀有な例を示してくれたのがフリーにおける彼の名演の数々です。


フリーはライブで本領を発揮するバンドなので、お勧めはこの一枚。


『Free Live』(1971年)




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第16位 ピート・タウンゼント (【ロック】ザ・フー)


1960年代から活躍する、最古参のギターヒーローの一人、それがザ・フーのピート・タウンゼントです。


最近もニューアルバムを発表して、健在を示したザ・フーですが、やはり全盛期は、ドラマーのキース・ムーンを擁した初期の活動でしょう。


ピートは作曲と編曲の名手であり、ギターのフレーズも、曲自体の魅力をサポートする役割程度にかき鳴らされます。

しかし、手数の多いキースと、同じく天才的な速弾きベーシストのジョン・エントウィッスルが後ろでプッシュするので、普通に弾いているだけでは埋没してしまいます。

だから、彼は常に大音量でコードを決め、オーバーアクションで舞台を所狭しと駆け巡り、すご腕揃いのバンドの一翼を見事にになっているのです。


私がよく思うのは、ピートとジミ・ヘンドリクスの、音楽性の類似点です。

共に、サイケデリックなサウンドを好み、ギターを引き立たせる編曲が得意で、陽気でやんちゃな面を曲に込める遊び心も持ち合わせています。

ピートとジミは、交流があまりなかったようで、早逝したジミについて、「友達になりたかった。」と、ピートが語っているのをインタビューで読んだことがあります。


実際、二人が共演したら、新鮮なアイデアにあふれた素晴らしい音楽が生まれたのではないかと思うんです。


そんな思いの影響もあって、私はピートの演奏が好きです。


お勧め盤『Who's Next』(1971年)




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第15位 カート・コバーン (【ロック】ニルバーナ)


カート・コバーンが15位。これはどうなんだろう。妥当なのか、な。

荒々しい情念がほとばしるサウンドは魅力ですが、少なくとも、上位10傑に入るギタリストとは言えないでしょうね。

でも、ギタリストランキングにはぜひ入れたい。

なにしろ、私の中では、演技ではない生身の衝動性を核にしたロックを提示できる系譜の、一番最後に登場したロックバンドこそ、ニルバーナだからです。

私もニール・ヤングと同様、「ロックは死なない」と思っていますが、残念ながら、ニルバーナに続く、精神的に向こう見ずな若手バンドは、まだ私の中では見つかっていません。


ニルバーナは、スタジオアルバムの端正な美しさと、ライブの凶暴な濁音の、両方が聴き所のバンドです。


スタジオアルバムでは1991年の『ネヴァーマインド』、ライブアルバムでは1992年の『Live at Reading』が双璧でしょう。




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第14位 ピーター・グリーン (【ロック】フリートウッド・マック)


ピーター・グリーンは、1970年代初頭のロックシーンでは、ジミー・ペイジ、リッチー・ブラックモア、エリック・クラプトンと比べても決してそん色のない、トップランクのギタリストです。

彼の絶頂期であるフリートウッド・マックでの活動が数年でついえなければ、現在もっとギタリストとしてもバンドとしても高い評価を得られていたのではないかと思います。

どんなに実力があっても、レコード会社のプロモーション不足や販売戦略のまずさで人気や知名度が伸び悩む、という事が、往々にしてあります。

フリートウッド・マックも、初期のアルバムがコンピレーション版だったり英版と米版で選曲やジャケットが異なっていたり、1970年代初期のメンバーと中期以降のメンバーが大幅に違うなど、音楽ファンが混乱する要素を含んでいるので、そこがとっつきにくさにつながっているのではないかな、と想像します。

(一般的には、メンバーを刷新してソフトロックに転向した1970年代中期以降のフリートウッド・マックの方が世界的な知名度があるようです。)


ブルースが得意なバンドですが、ポップな感覚も持ち合わせており、「ブラック・マジック・ウーマン」や「グリーン・マナリシ」、「オー・ウェル」といったロック史に輝く名曲も数多く手掛けています。


レッド・ツェッペリンやディープ・パープル系の長いインプロヴィゼーション(即興演奏)がお好きな方に、特にお勧めしたいバンドです。


お勧め盤『ボストン1970』(3枚組のライブ盤です。3日間の演奏がまるごと収められています。同じ曲でも出来栄えが違うので、聴き比べる楽しみがあります。)




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第13位 リッチー・ブラックモア (【ロック】ディープ・パープル、レインボー)


古典的な洋楽ロックが好きなら、誰もが一度は通る道、それが、ディープ・パープルのリッチー・ブラックモアの怒涛のような速弾きに惚れこむ、という事ではないでしょうか。


リッチ―以前のロック・ギタリストは、ハンマリングとプリング(弦を押さえる方の手の指で弦を叩いたりはじいたりするテクニック)で早いメロディを奏でていたんですが、リッチ―は一音一音きちんとピックで弾くという、本当の速弾きを行なった事で当時のロックファンの度肝を抜き、絶大な人気を博しました。ハンマリングとプリングだけによる疑似速弾きよりも、メロディラインがはるかに自由になり、ソロを印象深いものにできるようになった事も、成功の要因でしょう。


1970年から1972年にかけてのリッチ―のライブ演奏が、私は特に好きです。

速弾きにしてもメロディの創造にしても、自分の限界に挑戦しようとする、若い情熱がひしひしと感じられるからです。


特に、1970年のイギリスBBCでのライブにおける「Wring That Neck」は、彼の数ある名演の中でも白眉の出来栄えだと思います。録音バランスがベース過剰で音割れしているのが難点ですが、最近のリマスター版では改善されて来ています。


この演奏は下記のお勧め盤に含まれています。


『In Concert』(1970年と1972年のライブ録音)




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第12位 レイ・マンザレク (【ロック】ドアーズ)


レイ・マンザレクの独創的なメロディラインは、ドアーズの謎めいた曲調にとって、ボーカルのジム・モリソンの存在感と同じくらい必要不可欠な要素です。


ドアーズのデビューは1967年。当時の、ブルースとサイケデリック一辺倒だったロックシーンを考えてみると、ドアーズの音楽がいかに洗練され、オリジナリティーに溢れていたかが分かります。


その、彼らの魅力の集大成とも言える初期の2枚のアルバムが、私にとっては、ドアーズの全てと言って良い位置を占めています。

セカンドアルバム以降は、ジム・モリソンの過剰な飲酒の影響による喉の荒れが、曲の出来栄えにも単調さとなって表れて来てしまいます。


『ハートに火をつけて(The Doors)』(1967年)

『まぼろしの世界(Strange Days)』(1967年)




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第11位 ロバート・フリップ (【ロック】キング・クリムゾン)


キング・クリムゾンの激しくも愁いを帯びた高度にテクニカルな演奏を、いつの時代も陰に陽向に支えているのは、ロバート・フリップの理知的で精密で、それでいて攻撃的な、統率者としての力を備えた威厳のあるギタープレイです。

ギターヒーローとして持てはやされる事はあまりないようですが、そういう派手な脚光とは縁遠い、どこまでも曲に貢献しようとする求道的な姿勢が、彼の演奏の大きな魅力であるとも言えます。


キング・クリムゾンというバンドの音楽性についての論考は、第15回のコラムと、第39回のベーシスト・ランキングでも書いているので、そちらも参照にして下さい。


お勧め盤『クリムゾン・キングの宮殿(In the Court of the Crimson King)』(1969年)

『暗黒の世界(Starless And Bible Black)』(1974年、ライブ音源を主体に構成された半ライブ盤)




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― 新着の感想 ―
[一言] 失礼します。 いよいよロックの有名ギターヒーロー達が続々と登場して来ましたね。 とは言いつつ、20位にビックリ! 今までロックに関する文章を色々読んで来てますが、ビックブラザー(以下略)を…
2020/01/18 01:33 退会済み
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