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音楽コラム 『ロックの歴史』 -時代を彩る名ミュージシャンたち-  作者: Kobito


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第56回 私の好きなギタリスト ランキング・ベスト30 (30位~21位まで)

とうとう、このテーマを手掛ける時が来ました。

ロックミュージックの真の花形、ギター奏者に、自分の好みで順位をつけて紹介する、という企画です。


これまでのコラム連載で、ある程度、ロックの歴史の基礎部分は語り終えましたし、また、ロックの発展を語る上で欠かせない主要なギタリストもおおむね紹介し終えたので、いよいよ、満を持して、ギタリストのランキングに着手しようという気持ちになれました。


ドラマーランキング、ベーシストランキングと同様、ギタリストランキングも昇順に紹介して行きますが、好きなギタリスト、ぜひ紹介したいギタリストが20位では収まりそうにないので、今回はベスト30という事で、30位まで決めさせてもらいます。


ロックに限らず、ブルース、ジャズ、クラシック、ワールドミュージックなど、オールジャンルのギタリストから候補を選考してみました。


なお、あくまでも、私の好みだけを根拠に作成したランキングであり、歴史的な意義や商業的成功の度合いは最重要の判断基準ではない事をお断りしておきます。(ただし、普段よく聴くわけではないミュージシャンでも、演奏技能の高度さや感情表現の巧みさに敬意を表して、高めの順位でランクインする、という事はあります。)


さて、皆さんのご贔屓ひいきギタリストは、果たしてランクインしているでしょうか?

そして、選出されているなら、いったい何位に位置づけられているでしょうか?


では、手始めに30位から21位まで、とくとご覧あれ。



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第30位 オーティス・ラッシュ (【ブルース】)


オーティス・ラッシュは、1950年代のシカゴ・ブルースの代表的ギタリストであり、名ボーカリストであり、優れた作曲家でもあります。特に、ギタリストとしては、従来のバッキング重視のブルースシーンを、大音量のリードギターが主役になるように転換した、ブルースのみならずロックシーンに与えた影響も極めて大きなミュージシャンです。


むせび泣くような哀切な音色で奏でられる多彩なリックには、彼の感情を音にする才能の豊かさがまざまざと表れています。


活動初期である1950年代の、コブラレーベルに残した一連の演奏こそが、彼の長いキャリアの中でも飛び抜けた名演であり、極端な話、これ以外は持っていなくても大丈夫なくらいの決定版です。


お勧め盤『The Classic Cobra Recordings 1956-1958』



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第29位 ニーニョ・リカルド (【フラメンコ】)


フラメンコにおけるギター演奏というのは、あらゆるギターミュージックと比較しても、とりわけ高度なテクニックを要します。

その凄みが、如実に味わえるのが、ニーニョ・リカルドの鬼のようにテクニカルな演奏です。

土着的なフラメンコに、クラシックギターの複雑さや繊細さを融合させた、深みのある音楽性は、まさに圧倒されるの一言です。

フラメンコは、ともすると音のアタックの強さで箔を付けて、かっこ良く見せている部分が多くなりがちな音楽なので、ニーニョのように細部まで埋め尽くすような音の洪水を生み出す真に技巧派の演奏家の演奏こそ、まず初めに聴いて、ギター好きな方にぶったまげてもらいたいです。


お勧めは、1940年代の、若さみなぎる一点の隙もない演奏ですが、なぜだか、彼の演奏が聴けるCDは、フラメンコのオムニバス盤ばかり。


速弾きギターファンは、フラメンコという究極の速弾きジャンルが、眼中にないんでしょうか?

彼の演奏が、音楽ファンの間で持てはやされていないどころか、軽視されている現状が、不思議であり、残念でなりません。



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第28位 サビーカス (【フラメンコ】)


サビーカスは、第29位のニーニョ・リカルドに比べると、より一般大衆向けの演奏家と言えるでしょう。

サビーカスも、実はテクニックの点ではニーニョと同様、あ然とするほどの超絶技巧派なんですが、ニーニョより親しみやすい明るめのサウンドと音の間の余裕が感じられます。ニーニョの演奏はコンサートで着席して聴くのにふさわしい厳粛さがありますが、踊り出したくなるダンスミュージックとしてのフラメンコの伝統を味わえるのは、サビーカスのノリノリな楽しい演奏です。


サビーカスの単体のCDは、ニーニョよりは入手しやすいようですが、それでも、実店舗のCDショップには置いてない可能性が高いです。

できれば、1950年代の、若い頃の充実した演奏で楽しんでもらいたいです。


お勧め盤「Gypsy Flamenco」(1958年)



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第27位 バーデン・パウエル (【ボサノバ】)


ボサノバというのは、今では軽めのムードミュージックのように思われているジャンルですが、1960年代の、ボサノバ誕生から10年程度しか経っていない頃にシーンに登場したバーデン・パウエルのストイックな演奏を聴けば、探究に値するれっきとした芸術的深みのあるジャンルなのだと分かります。


1964年のアルバム、『Le Monde Musical de Baden Powell』が、初期の彼の技術とセンスの粋を集めた傑作です。

バーデンの魅力の肝は、コアなギターフリーク向けの複雑な演奏にあるので、軽快で分かりやすい現代のボサノバに慣れたライトな音楽ファンの方が聴くと、難し過ぎると感じるかもしれません。


でも、アルバム冒頭の見事な乗りと響きのカッティングからも分かる通り、非常にハイレベルで聴き応えのある、インストゥルメンタル部分に重きを置いたギター音楽なので、そういうのが好きな方にはたまらない作品となるでしょう。


ジャズ的なアドリブのメロディーラインから、そこはかとなく、ジプシージャズギタリストのジャンゴ・ラインハルトからの影響を感じるのも、面白い所です。



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第26位 アタワルパ・ユパンキ (【フォルクローレ】)


フォルクローレとは、南米のアンデス山脈周辺の地域の伝統音楽の総称です。

哀愁を誘う、素朴な雰囲気のメロディーが特徴で、サイモン&ガーファンクルがカバーした「コンドルは飛んで行く」が、フォルクローレの名曲の一つとして有名です。


このフォルクローレの演奏家で、ギターの達人が何人か挙げられるんですが、中でも、アタワルパ・ユパンキは、技巧の点でも、感情表現の点でも、最高の存在として、ギター好きな皆さんに自信をもってお勧めできるミュージシャンです。


ボーカルが得意なので、歌入りの曲が多いんですが、その伴奏として奏でられているギターの音色に、耳を澄ましてみて下さい。

その自然で豊穣な音の響きに、根っからのギターミュージック好きなら惹き付けられること間違いなしです。


お勧め盤『Camino del indio』(1957年)



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第25位 ウェス・モンゴメリー (【ジャズ】)


全時代を通して、ジャズギターの代表的存在と言えば、もうこの人しかいないでしょう。

ビバップ以後のジャズギタリストで、ウェスの影響を受けていないミュージシャンは皆無と言って良いくらい、その演奏のモダンでスムーズな見事さは水際立っています。


ウェスの良い所は、ジャズ初心者でも楽しめる、演奏のカッコ良さにあります。

本当は、複雑で奥深いテクニックを駆使しているんですが、それがちっとも高踏的こうとうてきにならず、一貫して耳馴染みが良いので、繰り広げられるアドリブの冴えを、まるで自分が演奏しているような共感を持って楽しむことができます。


他の楽器に比べて、スーパーヒーローが不在だったジャズギターの分野で、ウェスという天才が現れてくれたことに、私たちジャズファンは心から感謝しなければいけません。

それは、現代の数多のジャズギタリストの、技巧的ではあるけれどもどこか型にはまった演奏を聴く度に、新たにする思いです。


お勧め盤『The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery』(1960年)



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第24位 チャーリー・クリスチャン (【ジャズ】)


ウェス・モンゴメリーの登場以前に、ジャズギターで最高の存在だったのは、ベニー・グッドマンのバンドで花形ギタリストだったチャーリー・クリスチャンです。

ジャズの分野でエレキギターを本格的にソロ楽器として用いはじめた人、それがチャーリー・クリスチャンだと言われています。


その、開祖的なクリスチャンの演奏が、未熟さなど感じさせない完成されたスタイルで、めっぽうカッコいいのです。

クリスチャンが活動していた1940年代初頭は、スウィングに代わるジャズとして、より複雑で激しい音楽性であるビバップが生み出されようとしていた時代でした。


ビバップの音楽理論は、酒場で夜通し腕を競い合うミュージシャンたちによって、徐々に形作られて行ったのですが、クリスチャンはその中心人物として、非常に重要な役割を果たしています。


ありがたい事に、一人のジャズファンの青年が、この真夜中のジャムセッションを、手持ちの機材で録音してくれており、クリスチャンの存在がいかに周りのミュージシャンから抜きん出ていたかを、現在、私たちは実際に演奏を聴いて確認する事ができます。


ベニー・グッドマンのバンドでの、大人し目のスウィング演奏から解き放たれた、先取りの気性に富んだ彼の力強い演奏は、私たちをジャズの歴史的な一場面に立ち会っているような高揚した気持ちにさせてくれます。


お勧め盤『After Hours』(1941年、ミントンズ・プレイハウスでのライブ)



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第23位 エルモア・ジェームス (【ブルース】)


エルモア・ジェームスは、三連符を並べた独特な伴奏で、強烈な個性を確立したブルースマンです。

あらゆる音楽ジャンルのギタリストを代表する、スライドギターの名手でもあります。

テクニック的にさほど難しい事はしていない彼の演奏ですが、その音楽は時代を超えて聴き継がれ続ける深い魅力にあふれています。


その秘密は、スライドギターの音色にあります。


他のギタリストでは味わえない、凄まじい興奮をかき立てられる、魔術的とも言える不思議なサウンドです。


そして、三連符の絶妙に濃厚なグルーヴ感。遅れたり早まったり、音の置き方を微妙にずらすことで、リズムに陶酔的に心地良い揺れを生み出しています。


こういう、感覚的なテクニックは、譜面には書き表すことができません。

クラシックなどでは、譜面に書かれてある通りに演奏する事だけが正しい演奏なんだと主張する音楽家が多々見られますが、それは完全な間違いです。

音楽は、そんな機械じみた不自由なものではないんです。


楽譜では表しきれない、作曲家が望む微妙なニュアンス付けは、演奏家が自分のセンスで見出さなくてはいけません。

そうする事で、大昔の音楽は、生きて私たちを楽しませてくれるものになるのです。


エルモアのギターの音色は、晩年になるほど大胆でとろけるような美音になります。

1960年~1963年頃が最も熟成された三連符が聴ける時期です。


お勧め盤『Big Box of Elmore James』(輸入盤6枚組で2543円。ファンなら安い買い物です。名演が網羅的に収録されています。音質も非常に良いです。)



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第22位 ジェフ・ベック (【ロック】)


第22位でやっとロック・ミュージシャンの登場です。

しかも、ギターファンには人気の高いジェフ・ベックがこの順位。

完全に自分の嗜好の問題です。


彼の数あるアルバムのうち、『ブロウ・バイ・ブロウ』(1975年)は好きでよく聴くんですが、それ以外のアルバムで時々聴きたくなるのは、『ジェフ・ベック・グループ』(1972年)だけという、極端に好き嫌いが生じるミュージシャンです。


ギターミュージック好きな私を、ジェフがここまで惹きつけない理由は何なのか、考えてみると、評論家や彼のファンが絶賛するほど、彼のフレージングがロックやポップスの伝統的メロディから自由ではないように感じるからだと思います。


もちろん、斬新なフレーズやアーミングの大胆な使用など、随所に素晴らしいアイデアが聴かれはするんですが、全体のメロディーの流れは、予測不可能とまでは言えない、むしろ馴染み深いラインをたどっているように感じるんです。


そして、もう一つ、惚れ込めない理由は、ギターサウンドの固さです。

粘り気のある、押し出しの強い、分厚い音なんですが、これがのっぺりして野暮ったく、感情表現に乏しく感じられてしまう。


しかし、これだけ駄目出ししようとも、ロック・ギターの歴史上、極めて重要なギタリストである事は、認めなければいけないし、上記に挙げた二枚のアルバムでの彼の演奏は、ギターヒーローとして崇められるにふさわしい見事さです。


結局は、私の好みの問題なだけなんです。

それでも、好みは理屈ではないので、いかんともしがたいのです。



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第21位 ニール・ヤング (【ロック】バッファロー・スプリングフィールド、ニールヤング&クレイジー・ホース)


ニール・ヤングをギタリストとして評価するという方向性は、意外と珍しいかもしれません。

しかし、ライブでは常にギターを抱えているし、長足のソロもお手の物ですから、もっとギタリストとしての腕前に注目が集まっても良いように思います。


ロックミュージシャンとしては珍しく、ライブではアコースティックギターによる弾き語りと、バンド形式でのエレキギターによる演奏という、二部構成のセットリストを組むのも彼の特徴です。


そして、重要なのは、アコースティックギターの演奏が、エレキギターの演奏に引けを取らないほど、迫力があって感動的だという点です。


ロックに必要不可欠な、衝動性を露わにする事に長けた、彼ならではの、誰にもまねのできない素晴らしい魅力です。


虐げられる弱い者に味方し、権力の横暴に憤り、ロックンロールを愛し、信じてやまない、彼の心意気を込めた楽曲の数々を堪能するには、虚飾を排したライブ作を聴く事を強くお勧めします。


また、彼は長い音楽活動の中で、期間をおいて音楽家としての絶頂期を何度か迎えた、珍しいミュージシャンでもあります。


1970年、1976年、1989年が、その絶頂期に当たります。

面白い事に、1976年と1989年に、彼は来日コンサートを開いているので、日本のファンは彼のキャリアの中でも最高の演奏を聴けた、という事になります。


しかし、残念なことに、この三つの年のライブ盤は、ブートレッグこそ多いものの、公式盤の単体での入手は難しい状況です。

なので、次善の選択肢として下記の名曲揃いのスタジオ盤をお勧めします。


お勧め盤『Everybody Knows This Is Nowhere』(1969年)




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― 新着の感想 ―
[一言] 明けましておめでとうございます 今年もよろしくお願い申し上げます というかラインナップが渋いですね…… ジミヘンが何位くらいに来るのか楽しみです
[一言] 失礼します。 遂にギタリストランキングですか! いよいよこの連載もクライマックスですね! と、テンション上がった所で、知らない人たち! ウェス・モンゴメリーが出てくるまで私は名前も知らない…
2019/12/28 02:40 退会済み
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