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音楽コラム 『ロックの歴史』 -時代を彩る名ミュージシャンたち-  作者: Kobito


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第53回 ジミ・ヘンドリクス・フォロワーの筆頭格 スティーヴィー・レイ・ヴォーン 1983年~

ジミ・ヘンドリクスのフォロワー(追随者ついずいしゃ)。

意外な事に、この肩書きを冠せられたギタリストは、現在までのロックの歴史全てをひっくるめても、ジミの偉大な才能に比して少ない印象があります。

ロビン・トロワ―、フランク・マリノ、スティーヴィー・レイ・ヴォーンが、誰が聴いてもフォロワーだと分かるギタリストの代表格ですが、彼ら程、ジミのテクニックやサウンドを追及して自分の音楽に反映したミュージシャンは、ロック・シーンではむしろ珍しい部類に入ります。

そして、たいていの場合、〝ジミのフォロワー〟という肩書きは、彼らにとって不名誉な意味合いを帯びるようです。

おそらく、ジミの演奏の個性があまりにも完成されているために、似たように弾けば単なるジミのイミテイター(模倣者)になってしまい、オリジナリティーの欠如だとして批判され、軽く見られる、という問題があるからでしょう。


そういう点で言えば、1983年にブルースロック界に颯爽さっそうと登場したスティーヴィー・レイ・ヴォーンが、ジミのギター・テクニックやサウンドメイクに多大な影響を受けていたにもかかわらず、偉大な一個のギタリストとして音楽ファンからの敬意を勝ち得たのは、珍しいパターンであったと言えます。

(しかも、スティーヴィーのバンドの編成は、ジミのバンドと同じ、ギター兼ボーカル、ベース、ドラムスのトリオですから、比較は免れないにもかかわらず、です。)


彼が単なるイミテイターとして軽視されなかった理由を考えてみると、まず、彼が好んで楽曲に用いた、シャッフルのリズムの魅力が挙げられます。


シャッフルというのは、スウィングと同義語でもあるリズムで、連続した音符の初めの音符の長さを長めにし、ふたつめの音符を短くする事で、揺れるようなリズムを生み出す手法です。


乗りの良い、ダンサブルな明るい曲調になる事が多く、その効果は彼の音楽性の大部分で個性として表れています。スティーヴィー・レイ・ヴォーン&ダブル・トラブル名義で発表したファーストアルバム『テキサス・フラッド』(1983年)の中の「Pride and Joy」「Tell Me」「I'm Cryin'」、セカンドアルバム『Couldn't Stand the Weather』(1984年)の中の「Cold Shot」「Honey Bee」などが、典型的なシャッフルリズムです。


ジミもスウィング感のある演奏を時折行なってはいましたが、スティーヴィーのように個性として打ち出すほどではなかったので、ここでスティーヴィーはジミと明確な違いがあるミュージシャンとして一線を画する事ができたと言えます。


それから、トリオのメンバー、ベースのトミー・シャノンと、ドラムスのクリス・レイトンのリズム隊が、非常にシンプルに徹したタイトなバッキング演奏しか行わない、というのも、スティーヴィーのバンドの特徴です。

ジミのバンドでは、ベースのノエル・レディングとドラムスのミッチ・ミッチェルが常に流動的なアドリブ演奏で、複雑なグルーヴ感を作り出しており、聴き応えの点では、ジミのバンドに軍配が上がりますが、一般受けする聴きやすさという点では、スティーヴィーのバンドの方が分があるようです。


それが証拠に、ブルースという聴き手の限定されがちなジャンルでのデビューにもかかわらず、ファーストアルバムは50万枚を売り上げてゴールドディスクを獲得しています。


個人的には、やはりジミのバンドの、全員がアドリブ巧者という構成から来る迫力ある演奏の方に魅力を感じますが、クリーントーンによる超人的なブルースの速弾きでスカッとしたい時には、スティーヴィーの演奏が最高ですから、取りも直さず初期の2枚のアルバムを聴く事にしています。


なお、ジミとの比較の話題が主になりましたが、ギターの演奏技巧という点では、スティーヴィーはロックギタリストの上位10傑に入るほどの素晴らしさなので、技巧派好みの方には、ブルース・ロック界に現れた次世代の天才ギタリストとして、機会があればぜひそのテクニックの冴えを堪能してみて下さい。

(1990年のヘリコプター事故により、彼は惜しくも帰らぬ人となっており、残された音源は彼のファンのみならず、かけがえのない音楽界の遺産となっています。)



 挿絵(By みてみん)



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