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音楽コラム 『ロックの歴史』 -時代を彩る名ミュージシャンたち-  作者: Kobito


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第47回 ハードロックからへヴィメタルの時代へ ジューダス・プリースト 1974年~

ディープ・パープルやブラック・サバスに代表される、印象的なリフやドラマチックな曲調が特徴のロック、〝ハードロック〟が人気を博し始めたのは1970年代初頭の事です。

それからしばらくは、メインストリームのロックシーンは、ハードロックのお決まりのスタイルを踏襲したバンドの乱立で大いに活況を呈しましたが、五、六年もすると、さすがに音楽的なアイデアが底をつき始め、安易な真似や自己模倣の繰り返しによってマンネリ化したロックシーンには停滞感が漂い始めます。


イギリスのロックバンド、ジューダス・プリーストがレコードデビューしたのは、このようにハードロック人気が全盛期を過ぎようとする、1974年の事でした。


レコードデビューは1974年ですが、彼らは長くつらい下積み時代を経験しており、レコードデビューしてからも、マイナーレーベルのガル・レコードと交わしたバンドに不利な契約条件により、生活も立ちいかないほどの報酬しか受け取れないという、悲惨極まる状況での音楽活動を余儀なくされます。


ファーストアルバムの音楽性は、ヴォーカルのロブ・ハルフォードのクールな低音から超高音の金切声までカバーする驚異的な声域と、K.K.ダウニングとグレン・ティプトンのコンビによるツインリードギターの攻撃的なサウンドに個性の萌芽は見られるものの、ありふれたハードロックの亜流の域を今一歩脱し切れておらず、ロックファンの間で期待したほどの人気を得る事はかないませんでした。

しかし、アルバム発表後に粘り強いツアーを敢行するうちに、そのライブ・パフォーマンスの素晴らしさに魅せられた聴衆からの支持を集めるようになり、1976年にはセカンドアルバム、『運命の翼(Sad Wings of Destiny)』の発表にこぎつけます。


私はこのアルバムが、ジューダス・プリーストの数あるアルバムの中でも一番好きです。


ハードでメロウなサウンドの心地良さ、引き締まった演奏から醸し出される硬質な抒情性、そして、全編にわたって繰り広げられるツインリードギターの相性抜群の絶妙の絡み合いが、アルバムを非常に印象深いものにしています。


また、第31回のコラムのドラマーランキングで、8位に選出したアラン・ムーアの、いかにもイギリスのミュージシャンらしい、湿度のあるほの暗い、それでいて音の粒の明瞭なドラムサウンドが楽しめるというのも、個人的なお勧めポイントです。


ジューダス・プリーストの経済的困窮は、結局、大手レーベルのCBSに移籍して、3枚目のアルバム『背信の門(Sin After Sin)』を発表する1977年まで続きます。


この経済的困窮が、ジューダス・プリーストの音楽の、他のバンドでは味わえない硬質な美しいサウンドや、哀愁や抒情性につながっている可能性もあるので、一概に悪い事ばかりではなかったと言えるかもしれませんが、少なくとも、ドラマーのアラン・ムーアは、セカンドアルバムを最後に赤貧に耐えかねて脱退してしまったので、私にとっては残念な結果を招いたと言え、ガル・レコードの搾取的な経営陣に対して、唾棄だきしてやりたい気持ちでいっぱいになります。

(ファンタジーレコードの経営者もそうですが、音楽業界にはどんなに優れたミュージシャンであろうとも、どこまでも搾取して、雀の涙の報酬しか渡そうとしない悪名高い人が多いのです。)


つい熱くなって、わき道にそれてしまったので、話を元に戻しますね。

ところで、ジューダス・プリーストの音楽的成功は、このセカンドアルバムが頂点ではなくて、それ以降のアルバムの方が、世間一般では評価が高いようです。


重厚で勇壮なドラミングのアラン・ムーアが脱退した事により、ジューダスの音楽性は、よりアップテンポで勢いのあるものに変化して行きます。


この、「アップテンポで勢いのある」音楽性と、「ツインリードギターの華麗さ」、そして「引き締まった硬質な演奏」という要素が組み合わさった結果、彼らの音楽は一聴して分かるほどの個性を確立して行くのですが、それは、マンネリ化しつつあったハードロックに飽き足らなくなったロックファンに、新しい刺激的なサウンドを提供する事にもなり、レーベル移籍以降のバンドは、驚異的とも言えるほど急速に人気を高めて行く事になります。


彼らの生み出したサウンドは、その金属的に硬質な印象から、やがて『へヴィメタル』と呼ばれるようになります。

現在、私たちが、激しさのあるアップテンポの曲が得意なロックバンドを指して、「ヘビメタバンド」なんて言いますが、そのジャンルの定義は、ジューダス・プリーストによって完成されたと言えます。


ジューダスのへヴィメタルバンドとしての代表作は、1982年の『復讐の叫び(Screaming for Vengeance)』です。

このアルバムを聴くと、冒頭からもう、「ああ、これこれ、これがへヴィメタルだよね。」と、納得してもらえると思います。


こういう聴き慣れたサウンドは、ポンと簡単に生まれたわけではなく、やはり、先人の苦労と修練の結果、生み出されたという事を、意識しながら聴くと、いっそう感慨深いものがあるのではないでしょうか?



挿絵(By みてみん)




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