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音楽コラム 『ロックの歴史』 -時代を彩る名ミュージシャンたち-  作者: Kobito


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第37回 オーストラリアから世界に進出したスタジアム・ロック・バンド AC/DC 1974年~

オーストラリアは、言うまでもなく英語圏の国で、文化的な背景には英米の影響があるわけですが(ちなみに、オーストラリアが英語圏の国になった歴史は、人類の暗い過去として知っておくことをお勧めします)、ロック史の観点で言うと、世界的に成功したミュージシャンをそれほど輩出していないという、ちょっと意外な国でもあります。このロック・シーンにおけるオーストラリアのポジションは、カナダの音楽事情に近いものがあります。


そんな中で、ワールド・ワイドな人気を獲得したロック・バンドはというと、まず筆頭に上げられるのは、マルコム&アンガスのヤング兄弟が率いるハード・ロック・バンド、AC/DC(エーシー・ディーシー)という事になります。


AC/DCには、大きく分けて二つの活動期間があります。

第一は、ボーカルのボン・スコットが在籍していた時代。(1974年~1980年)

第二は、ボーカルのブライアン・ジョンソンが在籍する時代です。(1980年~)


AC/DCの音楽性自体は、初期から現在まで、ほとんど変わらない、ブギーを基本にしたシンプルで分かりやすい一直線のハード・ロックです。


リード・ギタリストのアンガス・ヤングが披露する、ジミー・ペイジのテクニックを基礎とした速弾きソロが、このバンドの一番の目玉ですが、それもすべての時代を通じて、技術的、サウンド的な変化はほとんどありません。


となると、二人のボーカルの魅力の違いが、このバンドの歴史の上で、非常に重要な変化だったという事になります。


ボン・スコットの歌唱は、皺がれた鼻声のハイトーンで、独特のアクの強さがあり、それが彼の歌声の魅力にもなっています。

特にライブでの存在感は抜群で、1978年のライブ・アルバム『ギター殺人事件 (If You Want Blood)』での彼のハイテンションなパフォーマンスは、アンガスの生きの良いギターソロと引き立て合って、このアルバムをロックの数あるライブアルバムの中でも傑作と呼べる内容にするのに一役買っています。


惜しい事に、ボンはバンドが世界的成功を手にしようとしていた1980年に、不慮の事故でこの世を去ってしまいます。


AC/DCは新たなボーカルを迎えてバンドを存続する道を選びますが、ボンほどの強烈な個性を持ち、ファンからも愛されていたメンバーの後任を探すというのは、容易な事ではありません。


しかし、AC/DCが幸運だったのは、ブライアン・ジョンソンという、ボンに負けない強烈な個性と魅力を歌声に備え、なおかつバンドの音楽性にも完璧にフィットするボーカリストを見つけることができた、という事です。


ブライアン加入後初のアルバム『バック・イン・ブラック (Back In Black)』(1980年)は、ボンを追悼する意味合いの濃い内容になっていますが、そのほの暗さが、かえってAC/DCの猪突猛進型の単純なブギー・ロックに深みを与えた事で、これまでにも増して聴き応えのあるアルバムに仕上げることに成功しています。


ブライアンの歌唱は、すりつぶしたような枯れ切ったしわがれ声なのに安定した音程と高音域を披露できるという、非常に珍しいタイプで、後年のデスメタルの極端に潰れた声で歌うスタイルの元祖的な存在とも言えます。


AC/DCのブギー・ロックとブライアンの歌声の組み合わせの妙は、ハード・ロック・ファンのみならず、幅広い音楽ファンの支持を得て、『バック・イン・ブラック』は現在までに5300万枚を売り上げ、全世界で歴代2番目に売れたアルバムという、とてつもない記録を作るほどの大人気作となります。


ブライアンの歌声は、個性が強いけれど、聴きやすい声でもあった、という事です。

一方で、ボンの歌声は、ブライアンと似たところのあるしわがれ声ではありますが、やや癖の強さがあり、そこが好きになれない、という人も、中にはいるかもしれません。


でも、私が好きなのは、ボンの歌唱の方です。

ブライアンの歌唱は、あまりにもバンドサウンドにフィットし過ぎて、安定感があるために、スリルという点が希薄になってしまう嫌いがあります。

そこが、一般的にはなじみやすくて好まれる点ではあるのでしょうけれど、私は、そういう耳馴染みの良さよりは、破調の美、とでもいう荒々しさが、ロックにはあってほしいと思うので、ボンのいつでも全力投球の情熱的な歌声の方に、より惹かれるものを感じます。




 挿絵(By みてみん)




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