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音楽コラム 『ロックの歴史』 -時代を彩る名ミュージシャンたち-  作者: Kobito


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第34回 中世の世界観とロックの融合 レインボー 1975年~

10月に、『私の好きなドラマーランキング・ベスト20』という企画をやりましたが、その後、あの人も入れたかった、この人も漏れていた、という事に気が付く事が多くて、あらためて、洋楽の優れたドラマーの多さに感謝の念を抱いた今日この頃です。


マウンテンのコーキー・レイング、CCRのダグ・クリフォード、T・レックスのビル・レジェンド、チープ・トリックのベン・E・カルロスなどは、味と深みのある素晴らしいリズムマンです。

特に、ベン・E・カルロスは、パワー系のドラマーの中でも抜きん出たあおり感を表現できる人なので、その至芸はぜひライブ映像などで聴いてもらいたいです。


さて、余談はこのくらいにして、話題をコラムの主題であるロックの歴史に戻しましょう。

ところで、このコラムを更新しようと思って、次に取り上げるミュージシャンを、1973年~1974年頃にデビューした人たちの中から選ぼうと考えてみたんですが、その頃にレコードデビューして一時代を築いたロックバンドというのが、あまりない事に気が付きました。

もちろん、それ以前にデビューして、1970年代中期まで人気を保ったミュージシャンは大勢いるんですが、1973年~1974年デビューの秀でたミュージシャンとなると、このコラムでも紹介した、クイーン、ボブ・マーリー、マイク・オールドフィールドといったところで、そう多くはないように思います。


1973年~1974年頃というと、日進月歩、進化の道を突き進んでいたロックが、ある程度真新しいサウンドやテクニックを開拓し尽くして、これまでにない表現を生み出す事が難しくなりはじめた時期でもあります。


古参のバンドが、過去の自作品の焼き直しや、サウンドの軟化によるポップスファンへの迎合に走りはじめたのもこの頃で、新参のロックバンドが新鮮さをアピールするには、過去をいかに乗り越えるかという点で、ハードルが高くなって来た時代だったとも言えます。


ディープ・パープルの人気ギタリスト、リッチー・ブラックモアも、この頃、バンドのファンク化、ソウル化に嫌気がさして、脱退を考えており、ハードロック路線を推し進めるための新たなバンドの立ち上げを模索していました。

当時、ディープ・パープルのコンサートの前座として、エルフというマイナーバンドが起用されていたのですが、リッチ―はそのバンドのボーカリスト、ロニー・ジェイムズ・ディオのスケール感の大きな歌唱を気に入っており、ディープ・パープル脱退前から、エルフのメンバーの内ギタリスト以外を丸抱えする形で、自身が実質的なリーダーのバンド、〝レインボー〟の旗揚げ準備を進めます。


1975年、リッチ―はディープ・パープルを脱退し、レインボーのファーストアルバム『Ritchie Blackmore's Rainbow(銀嶺の覇者)』を発表します。

このアルバムは、エルフのメンバーの演奏がやや平坦な点に物足りなさがあるものの、リッチ―が構想した「中世の物語に通じる重厚な世界観を感じさせるハードロック」という様式美を具現化した、最初の記念すべき作品と言えます。


エルフのメンバーの演奏能力への不満は、リッチ―も感じていたようで、ファーストアルバムの発表後、ボーカルのロニーを残して、他のメンバーは全員解雇する、という、思い切った措置を取ります。

レインボーでは、リッチ―の一存でメンバーが解雇されるという例が、この後も続く事になるので、この大量解雇は、バンド内の権力集中の傾向を如実に表した出来事だったと言えます。


ともあれ、セカンドアルバムは、メンバーを一新して製作が行われる事になりました。


ドラムス コージー・パウエル

ベース ジミー・ベイン

キーボード トニー・カレイ


この新メンバーで重要なのは、やはり、ハードロックの渡り鳥的ドラマー、コージー・パウエルの存在です。

リッチ―の目指した「中世の物語的な重厚さを感じるハードロック」を実現するには、ロニーのボーカルと同様、スケールの大きな演奏ができるドラマーが必要不可欠であり、パワーも重厚さも十分のコージーは、まさに最適な人選だったといえます。


セカンドアルバムは、『Rising(虹を翔る覇者)』と題されて、1976年に発表されました。


コージーのドラムスの迫力、ロニーのボーカルの、へヴィメタルに先駆けた多彩なテクニックと力強さに加えて、リッチ―のスネークチャーマー(蛇使い)と呼ばれる中東風の独特なメロディライン、トニー・カレイのスペイシーなキーボードサウンド、いずれも中世的な世界観を表わすのにぴったりの、雰囲気のある演奏で、アルバム全編にわたって、統一感と一体感がかもし出されています。


『Rising(虹を翔る覇者)』以降も、幾多のメンバーチェンジを経ながら、レインボーはコンスタントにアルバムを発表して行きますが、セカンド・アルバムで成し遂げた、オリジナリティーと風格溢れる音楽の創造といった高度な成果は、残念ながら上げる事ができず、アメリカ市場で売れることを意識した、乗りの良いキャッチ―な音楽性へのシフトもあって、個人的には、繰り返し聴きたいほど好きなバンドではなくなって行きます。

ただし、1980年に加入したボーカルのジョー・リン・ターナーは、そのいかにも女性受けしそうなルックスと、甘く切ない歌声で、レインボーを一層ポップスファン好みのバンドに移行させたにもかかわらず、音楽性の面では、ハードロックへの愛情からほとばしる硬派な抒情味のある表現によって、私好みのハード&メロウなバンド・サウンドを確立するという、何とも嬉しいロック回帰をバンドにもたらしてくれています。


このジョー時代のレインボーのお勧め盤は、『Bent Out of Shape(ストリート・オブ・ドリームス)』(1983年)です。

ジョーの安定した歌唱力の魅力以外にも、新加入ドラマーのチャック・バーギの、簡潔にして的を得た、緊張感のある素晴らしいドラミングが味わえるので、ご興味があれば、ぜひ聴いてみて下さい。

(そういえば、チャック・バーギも、ドラマー・ランキングに入れたいくらい好きなドラマーでした……。)



 挿絵(By みてみん)

ジョー・リン・ターナーの肖像です。口の位置が高いので、少年のような幼さのある顔になりました。

口の位置を下げると、もっと本人に似て来ると思います。水彩画は修正が難しいので、今回は少年時代のジョーだと思ってご覧下さい。



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