第30回記念 私の好きなドラマー ランキング・ベスト20 (20位~11位まで)
このコラム連載では、今まで、ロックの主役であるギタリストを中心に、アーティストを紹介してきましたが、先日、『ロックの要はドラムにあり』という事を、ユーザーさんとの対話の中で気が付かせてもらったので、節目となる第30回と、第31回のコラムでは、「私の好きなドラマー ランキング・ベスト20」と題して、お勧めのドラマーを20人、音楽のジャンルを問わず、紹介してみようと思います。
今回は、20位から11位までを紹介して行きます。
読んでもらえばわかりますが、このランキングは、あくまでも私の個人的な好みや、思い入れを基にして作成したものです。
歴史的な意義とか、世間の評価とかは、二の次なので、音楽メディア等のドラマー・ランキングでは見かけない顔ぶれも、ちょくちょく顔を出すと思います。
なぜそのドラマーが好きなのか、理由も書いてあるので、「なるほど、Kobitoさんはこういう傾向のドラマーが好きなんだなぁ。」と、自己紹介文を読んでいるような気持ちで楽しんでもらえればと思います。
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第20位 テレンス・サリヴァン(テリー・サリヴァン) (【ロック】ルネッサンス)
私が好きなプログレ・バンドの一つであるルネッサンスは、その高度な実力に対して、日本での知名度があまりにも低いので、ここで声を大にして宣伝させてもらいます。
プログレッシブ・ロックというジャンルは、クラシック音楽からの影響を採り入れて発展したと、以前のコラムで述べましたが、数あるプログレ・バンドの中でも、もっともクラシック的な、生ピアノ主体の、シンフォニックな美しさを楽しめるバンドというと、ルネッサンスがまず筆頭格として名前が上がります。というより、このバンド程、クラシックとの自然な融合に成功したロック・バンドは、他にないでしょう。
アニー・ハズラムの驚異的な声域を誇る美声と、ジョン・タウトのクラシックに精通した流麗なピアノが二大看板ですが、ジョン・キャンプのゴリゴリとした複雑なベース演奏と、ドラマーのテレンス・サリヴァンの、ドラマー泣かせの凝りに凝った編曲を物ともしない安定した演奏のサポートがあってこそ、初めて音楽的な完成を遂げることができたバンドだとも言えます。
代表的なアルバムは、『Ashes Are Burning』(1973年)と、『Scheherazade And Other Stories』(1975年)です。
彼のドラムの音は、デジタル化された際に、パワーがスポイル(油抜き)されて貧弱になってしまう傾向があるので、できれば最新のリマスタリングされたCDで、その本来の実力を聴いてもらいたいです。
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第19位 コージー・パウエル (【ロック】ジェフ・ベック・グループ、レインボー、マイケル・シェンカー・グループ)
サウンドから武骨な真剣さを感じる、職人タイプのドラマーです。
多彩な一流バンドを渡り歩いてプレイしたことでも知られています。
彼の演奏が好きだというドラマーは、プロ・アマ問わず多いようなんですが、一般の聴き手が彼の良さを理解するには、けっこう色んな曲を聴き込む必要があるようにも思います。
ドカドカと、やや野暮ったさすら感じるバスドラムの響きが、どのバンドでプレイしても、彼の演奏だとすぐに分かる個性として際立っている事に気が付くと、色んなバンドでプレイする彼の演奏を聴いて行くのが楽しみになって来ます。
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第18位 イアン・ペイス (【ロック】ディープ・パープル)
イアン・ペイスは、ギタリストのリッチー・ブラックモアの凄まじい演奏の影に隠れて、あまり目立たないドラマーですが、独特な弾むようなドライブ感があって、ディープ・パープルらしさと呼べるサウンドを、バンドの最後方で定義付けている存在だと言えます。
1970年と1972年のBBCでのライブの模様を収めたアルバム、『イン・コンサート』の中の、1970年の演奏「Wring that Neck」が、イアン・ペイスのベスト・プレイかはともかく、ディープ・パープルの数ある名演の中でも最も好きな演奏です。
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第17位 ポール・クック (【ロック】セックス・ピストルズ)
セックス・ピストルズは、パンクの代名詞と言えるバンドであり、不良とかチンピラの奏でる質の低い音楽というイメージを持たれがちですが、実際は、チャック・ベリーのロックン・ロールを基礎とした極めて堅固な演奏能力を誇るバンドであり、その要の一人として、ドラマーのポール・クックのタイトでパワフルなビートは、欠かす事のできない存在だと言えます。
スタジオアルバムは『勝手にしやがれ!!(Never Mind the Bollocks)』(1977年)わずか一枚という、驚くほど寡作なバンドですが、彼らの音楽の個性と美点の全てが込められた、ロックの歴史に残って当然の名盤です。
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第16位 デイヴ・グロール (【ロック】ニルヴァーナ)
ニルヴァーナの極度に内省的な音楽を、一般受けするロック・サウンドに仕立てたのは、デイヴ・グロールのパワフルで明解なロック・ドラミングだったと言えます。
ドラムスにパワーを求める聴き手には、レッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムか、このデイヴ・グロールを勧めておけば間違いはありません。
グランジというジャンルのシンプルに徹しようとする音楽性の特徴から、テクニックを誇示する場面はあまりありませんが、バッキングの迫力と、フィルイン(曲の転換点でのちょっとしたフレーズ)のかっこ良さから、素晴らしく上手いドラマーだとすぐに判ります。
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第15位 ウィルガー・キャンベル (【ロック】ロリー・ギャラガー)
ロリー・ギャラガーがソロ活動を始めた初期の頃のバンド・メンバーです。
有名ではありませんが、手数の多い、ジャズ的なアプローチが私好みです。
ロリーのバンドの歴代ドラマーの中で、一番好きなドラマーです。
代表作は、『ライブ・イン・ヨーロッパ』(1972年)。
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第14位 ジム・ゴードン (【ロック】デレク&ザ・ドミノス)
パワーを誇示するタイプではありませんが、ジム・ゴードンのドラムは、メリハリがあって、音のしまりが良く、聴いていて気持ちの良いサウンドです。
デレク&ザ・ドミノスのアルバム、『いとしのレイラ』(1971年)が、代表的作品です。
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第13位 マイケル・ジャイルズ (【ロック】キング・クリムゾン)
プログレッシブ・ロックのドラマーですが、テクニックとしてはデレク&・ザドミノスのジム・ゴードンに近い、迫力よりも手数の多さで聴かせるタイプです。
トコトコという、軽めのサウンドが、キングクリムゾンのファーストアルバム『クリムゾン・キングの宮殿』(1969年)の詩的な繊細さと絶妙な調和を見せています。
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第12位 ジョン・デンスモア (【ロック】ドアーズ)
ドアーズは、シンガーのジム・モリソンのカリスマ性があまりにも大きなバンドですが、インストゥルメンタル(器楽演奏)の面でも非常に優れたメンバーが揃っており、ジョン・デンスモアのストイックなドラムも、バンドが内省的な個性を確立する上で主要な役割を果たしています。
ドアーズの初期のアルバム、『The Doors』(1967年)と、『Strange Days』(1967年)の長足の曲に、カタルシスを生み出すことを得意とする彼の持ち味が表れています。
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第11位 マックス・ローチ (【ジャズ】チャーリー・パーカー、バド・パウエル・トリオ、ソニー・ロリンズ他)
1940年代から、生まれたばかりのジャンルである〝モダン・ジャズ〟の第一線で活躍していた、モダン・ジャズ・ドラミングの完成者です。
彼の演奏の良さは、ソロ演奏よりも、バッキングのドライブするスピード感にあるように思います。
名演としては、バド・パウエルの1940年代のトリオ演奏での、パウエルのピアノの鬼気迫るスピード感にぴったり合わせる事ができる抜群のリズム感と、ソニーロリンズの『サキソフォン・コロッサス』(1956年)で披露した、音楽的引き出しの多様さが挙げられます。
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いかがでしたか?このドラマーがこの順位か、とか、あのドラマーが入ってないじゃないか、という不満を持たれた方も、いるかもしれませんね。
そういう方は、自分のドラマー・ランキング20を、作ってみて下さい。面白いけど、順位付けってけっこう難しいのです。
気になる第10位から第1位までは、第31回のコラムで紹介するので、どうぞお楽しみに。
1位、2位を決めるのは簡単なんですが、それ以降を決めるのに苦労します……。




