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第18回 【補完コラム】1970年代初頭までの未紹介のお勧めミュージシャン(後編・1960年代~1970年代初頭)

これまでのコラムで紹介しきれなかったミュージシャンやバンドを紹介して行く【補完コラム】の後編です。

今回は、1960年代から1970年代初頭までの、未紹介のお勧めアーティストを採り上げて行きます。

ロックミュージシャンだけでなく、ロックに影響を与えたジャンルのミュージシャンも紹介します。

ロックは、様々なジャンルの音楽を採り入れ、組み合わせることで成立、発展した音楽だからです。




【1960年代】

ロック発達期。アメリカでは、ロックンロール追放運動などで、シーンが停滞しますが、イギリスから続々と優れたロックミュージシャンが登場し、人気を博する事で、アメリカでも逆輸入的にロックンロール・ブームが再燃します。作曲の才能と、若者受けする刺激の強い曲調が重視されるようになり、様々なバンドがラジオヒットを狙った個性あふれる曲を競うように発表するようになります。



○ジャズ


・ジョン・コルトレーン

ジャズ・テナー・サックス奏者。

マイルス・デイヴィスに見いだされ、才能を開花させた、1960年代を代表する偉大なミュージシャンです。

音を隙間なく敷きつめたメロディを一気呵成いっきかせいに奏でる〝シーツ・オブ・サウンド〟という奏法を編み出し、他の追随を許さない圧倒的な迫力で、ジャズサックスの一流派ともいえるスタイルを築きました。ジャズが進化の一つの頂点に達しようとしていた1960年代初頭、ロック界ではようやくビートルズが登場して、音楽性の多様化が始まるという、発展のとば口に立ったところでした。


:お勧め盤:

『至上の愛(ラヴ・シュープリーム)』(1965年のアルバム。神に捧げられた、組曲形式の威厳ある作品で、静と動のバランス、編曲の見事さ、演奏の完成度、新鮮さ、アドリブの冴え、アルバムとしての統一感、全てにおいて、モダン・ジャズの一つの到達点として高く評価されています。)


・ビル・エヴァンス

ジャズ・ピアニスト。

流麗で詩的な演奏によって、多くのジャズファンを魅了した、モード・ジャズの代表的なミュージシャンです。一般的に、黒人のコクのあるジャズ演奏に比べて、白人のジャズ演奏は線が細く情念が不足している、と言われますが、エヴァンスの演奏は黒人の力強い演奏に引けを取らず、それでいてむしろ白人ならではの繊細な情感が活かされた、テクニック的にも完璧な、非の打ち所のない素晴らしさでした。

1959年から1961年にかけて活動した、トリオ編成でのバンドが、彼の絶頂期であり、一音一音に込められた抒情性や響きの美しさは、他に比類がありません。


:お勧め盤:

『ワルツ・フォー・デヴイ』(1961年のライブアルバム。ベースの天才、スコット・ラファロの演奏と絡み合う、極上のエヴァンスのピアノタッチが堪能できます。)



○ソウル


・オーティス・レディング

ボーカリスト。温もりのある力強い歌唱で、ソウルミュージックの枠を超えて、ロックファンにも幅広く愛された、1960年代を代表する稀代の名歌手です。

ゴスペル的な滋味あふれる曲から、ローリング・ストーンズの「サティスファクション」といった荒々しいロックのカバーまで、彼は幅広い表現力で聴く者を魅了してやまない数々の名唱を世に送り出し、ライブでは独特のあおるようなグルーブとフェイク(崩して歌う手法)を駆使したアドリブで、観客を興奮のるつぼに叩き込むという、一流のショーマンシップを発揮しました。

1967年の飛行機事故による突然の死が、極めて惜しまれる、ボーカル史に燦然と輝く真のスター歌手です。

スタックス・レコード専属のスタジオ・ミュージシャン集団であるブッカー・T&ザ・MG'sのグル―ヴィーな演奏も、彼の音楽を楽しむ際の大きな聴きどころです。


:お勧め盤:

『The Very Best of Otis Redding』(1992年発売のベスト盤。最新のベスト盤も何種類かあるようですが、スタジオ曲とライブ曲の両方が聴けるベスト盤を選ぶことをお勧めします。彼の魅力を十分に味わうには、ライブの熱狂を体感する事が必須です。)



○ロック


・ザ・ビーチ・ボーイズ

ビートルズを筆頭とするイギリスのロック勢が台頭する1960年代初頭に、アメリカ西海岸で結成された、アメリカン・ロックを象徴する名物バンドです。カリフォルニアの明るい日差しとサーフィンに代表される若者文化を反映して、初期の曲調は明るくさわやか。ハーモニーの美しさを駆使した分かりやすくノリの良い作品でアイドル的人気となり、多くのファンを獲得しました。

1960年代中期になると、イギリス勢の内省的で凝った音楽性が人気となり始め、それに影響を受ける形で、ビーチ・ボーイズの音楽性も、より複雑で内面的なものへと進化を遂げます。

結果として、シンプルな明るさを好む既存のファンには不興を買ったものの、作品の完成度や深みに惹かれた多くの新しいファンを獲得することにもなり、今ではロックの歴史に残る名バンドの一つとして、ロックファンのみならずミュージシャンたちからも高く評価されています。


:お勧め盤:

『ペット・サウンズ』(1966年発表のアルバム。軽快で親しみやすいロックを離れて、より味わい深い文学的な音楽性にシフトした頃の代表作です。繊細な青年の心情を表わした切ない響きと、神々しいほど豊かなコーラスワークに、時代を超えた美しさや斬新さを感じます。)



・ザ・バーズ

1965年に、ボブ・ディランのカバー「ミスター・タンブリン・マン」でデビューしたバーズは、フォークとロックを厚いコーラスで融合させる、というユニークな音楽性で、フォーク・ロックというジャンルの形成に初期から貢献した、ロックの発展史を語る上で欠かせないバンドです。

彼らの初期の曲は、ギタリストのロジャー・マッギンが奏でるリッケンバッカーの12弦エレクトリックギターの響きが音楽性の核になっており、そのきらめくような独特のサウンドは、ディランの曲がまるでバーズのオリジナル曲であるかのような錯覚が起きるほど、バンドのイメージを決定付ける個性的なものでした。

1960年代後期には、音楽性をカントリー寄りにシフトさせ、それと共に、初期の繊細さやオリジナリティが失われて行きますが、新加入のクラレンス・ホワイトの名人芸的なギター演奏など、ライブでの演奏能力の高さは特筆ものです。


:お勧め盤:

『グレイテスト・ヒッツ』(1967年発表の、初期の曲を中心に編纂へんさんされたベスト盤です。彼らの創造した当時最先端のサウンドの魅力がいっぱいに詰まっています。)



・クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル

CCRという愛称でも知られる、アメリカ生まれのロックバンドで、1970年代を代表するシングル・ヒット・メイカーでもあります。

1968年に「スージーQ」「アイ・プット・スペル・オン・ユー」というヒットカバー曲を含むファーストアルバム『クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(邦題は「スージーQ」)』を発表。

彼らの音楽は、アメリカ南部の古いブルースやカントリーミュージックの雰囲気を、再現するようにアレンジした曲調が特徴で、後のサザン・ロックや、スワンプ・ロックと呼ばれる、同系の音楽ジャンルの元祖とも言われています。


バンドの中心人物であるジョン・フォガティの、シャウト系の歌声の魅力、作曲やアレンジのセンス、ギター演奏の見事さにけん引されて、バンドは、「プラウド・メアリー」、「グリーン・リヴァー」、「雨を見たかい」などのヒットを、1972年の解散までの間に立てつづけに飛ばします。


:お勧め盤:

『グリーン・リヴァー』(1969年発表のアルバム。「グリーン・リヴァ―」、「コモーション」、「バッド・ムーン・ライジング」といった人気曲を楽しめます。タイトで引き締まったラジオ受けする編曲。それでいて素朴さと手作り感を感じさせる絶妙な演奏という、バンドの特徴が最善の形で表れています。)



【1970年代初頭】

ロック完成期。各バンドの演奏スタイルを分類するためのジャンル分けが定着し、ビート・ミュージック、フォーク・ロック、サイケデリック、ブルース・ロック、プログレッシブ、ハード・ロックなど、各ジャンルで中心的役割を果たすミュージシャンが多数登場して来ます。それと同時に、単純な若者向けの音楽だったロックンロールが、内面性と芸術性を備えた、聴き応えと多様性のある音楽に深化して行きます。


○ジャズ

ジャズはこの頃から、進化が停滞して発展に行き詰まりを見せるようになり、それまで影響を与える存在だったロックから、楽器編成やサウンドの特徴を取り入れることで、ロックとジャズの中間のような「ジャズ・ロック」や、口当たりの良い「フュージョン」と呼ばれる、ポップスに近いジャンルを生み出し、そこに活路を見いだすようになります。

それらの音楽は、商業的には成功したものの、ジャズの二番煎じのジャンルでもあるロックから、ジャズが受け取れる新技術や新鮮味は乏しく、やがてジャズはマンネリ化が顕著となり、シーン全体が衰退の道をたどるという残念な結果を招く事になります。


○ロック


・フリートウッド・マック

レッド・ツェッペリンと同時代に登場し、人気を博した、ハードロック&へヴィ・メタルの元祖的バンドです。

ブルースを基本にした演奏ですが、優秀なギタリストが二人~三人在籍するという、当時としては珍しいバンド編成で、ギタリスト同士の掛け合いやバトルが、主な聴きどころになっています。

1970年代半ばに、メンバーを大幅に変えてソフト・ロックに転向し、商業的な成功を収めますが、私が好きなのは、1970年代初頭までの、ギラギラしたアドリブ演奏主体のフリートウッド・マックの作品群です。


:お勧め盤:

『ボストン・1970』(2016年に発売された、1970年のライブ音源です。ピーター・グリーン、ジェレミー・スペンサー、ダニー・カーワンという、凄腕のギタリストが三人在籍していた頃の演奏で、単なるブルースロックとは異なる、美しく斬新なメロディの連続と、凄まじいインタープレイの応酬を堪能できます。)



・フリー

イギリス出身のバンド。ブルースとソウルを基調にした、シンプルに徹した味わい深いロックで、硬派なロックファンの人気を集めました。

バンドの中心人物は、黒人のようにソウルフルなボーカルで注目を集めたポール・ロジャースですが、ギタリストのポール・コゾフの表現力溢れる演奏あってこそのフリーであったとも言えます。

レコードデビューは1969年ですが、成功を収めるのは1970年の3rdアルバム、『ファイヤー・アンド・ウォーター』の大ヒットからです。

イギリスと日本では評価の高いバンドですが、アメリカでの評価はそれほど高くないようです。

飾りたてた豪華なサウンドを好むアメリカでは、フリーのサウンドはあまりに素朴過ぎたのかも。

そこが他のバンドでは味わえない、一番の魅力でもあるんですけどね。


:お勧め盤:

『ファイヤー・アンド・ウォーター』(前述の通り、1970年発表のヒットアルバム。イギリスのチャートで2位を記録、アメリカでは17位。彼らがシンプルな演奏から醸し出すグルーブ感は、簡単なようで真似のできない、非常に心地良いセンスにあふれています。ポール・コゾフのギター演奏も、難しい技法は使用していなくとも、一音一音に込めた情感や、心を揺さぶるビブラートの妙といった、聴き込むほどに味が出る、素晴らしいサウンドに聴きどころがあります。)



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