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第17回 【補完コラム】1970年代初頭までの未紹介のお勧めミュージシャン(前編・1940年代~1950年代)

このコラムでこれまでに紹介してきたバンドやミュージシャンは、紙幅の関係上、ロックの進歩に極めて重要な貢献を果たしたアーティストに限られていましたが、紹介したくても割愛せざるを得なかった大好きなミュージシャンやバンドも数多いので、今回は、紹介からは漏れたけれどお勧めしたい実力派のアーティストたちを、前編、後編に分けて、短い解説を添えてまとめてご紹介したいと思います。


前編は1940年代~1950年代、後編は1960年代~1970年代初頭を対象に、年代順に紹介して行くので、ご自身の好きな時代、好きなアーティストに近い傾向のアーティストを見つけるのに活用して頂ければと思います。

ロック・ミュージックだけでなく、ロックに影響を与えた他のジャンルの音楽も紹介します。

ロックを介して、他ジャンルの音楽も聴くようになると、ロックに対する理解がより深まり、音楽を聴く楽しみも広がるので、興味のあるアーティストがいれば、是非トライしてみて下さい。

(前編で取り上げる1940年代~1950年代は、ロックンロール誕生前後という事で、ロック系の際立ったアーティストがまだ少ない時代です。なので、ロックンロール以外の音楽をメインに紹介します。)



【1940年代】

ロックンロール誕生以前。アメリカで、黒人の音楽であるブルースやジャズが流行、発達し、白人もその素晴らしさに感化され、まねをすることで、黒人と白人が共に演奏する機会が増えて行きます。


○ブルース


・マディ・ウォーターズ

ブルース・ギタリスト、ボーカリスト。

1940年代後半から頭角を現してきた、エレクトリック・ブルース隆盛りゅうせいの立役者です。

それまでのブルースは、アコースティック・ギターの弾き語りによる、素朴な演奏を行なうミュージシャンが主流だったのですが、マディが活躍する頃から、エレクトリック・ギターとバンド編成による、力強く華のある演奏を行なうブルース・ミュージシャンが人気を博するようになって行きます。

エレクトリック・ブルースの発展の中心がアメリカ中部のシカゴだった事から、彼らの音楽スタイルはシカゴ・ブルースと呼ばれています。

マディのギター演奏は、粘りのあるスライド奏法(指にはめたガラスや金属製の筒を、ギターのネックに当てながら演奏することで、独特な音色を得る手法)が基本で、エレクトリック・ギターの太い音色の特性を生かした、つやのある男性的な色気と、巧みなテクニック、感情表現の豊かさなどが魅力です。

ロック・ミュージックの誕生につながる、エレキギターの使用やバンドスタイルの普及に果たした役割の非常に大きなミュージシャンで、ブルース・ミュージシャンのみならず、多くのロック・ミュージシャンからの尊敬を集めています。

お勧め盤:

『ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ』(1955年発表のベスト盤。1960年代以降のマディの曲は、ボーカルがメインになり、ギターの腕前を前面に出すことが少なくなって行くので、彼のギター演奏の実力を味わうには、1940年代後半から1950年代半ばの初期の曲を聴く事をお勧めします。)



○ジャズ


・チャーリー・パーカー

パーカーは1940年代半ばから活躍し始めたジャズ・アルト・サックス奏者です。

パーカーが登場する以前のジャズと、以降のジャズでは、演奏様式が一変してしまうほど、彼がジャズ・シーンにもたらした影響力は多大なものがあります。

彼を中心にしたミュージシャンたちが創造した新しいスタイルのジャズは、『ビ・バップ』と呼ばれ、また、彼ら以降の、現在に至るまでのジャズは、様々な演奏様式に細分化してはいるものの、総称して、『モダン・ジャズ』と呼ばれています。

ダンスのための音楽、もしくは、流行歌的に親しまれていたジャズは、彼らの登場によって、高い芸術性と複雑さを備えた、鑑賞するための音楽としての性質を発展させ始めることになります。

1970年頃からロック・シーンで人気が高まるプログレッシブ・ロックに先駆ける事35年も前に、複雑なアドリブ主体の革新的な演奏を披露していたチャーリーたちが、いかに時代の先を行っていたか、時系列で考えると改めて実感できます。

お勧め盤:

『チャーリー・パーカー・オン・サヴォイ~マスター・テイクス』(1940年代の全盛期の演奏を収めたベスト盤。冒頭の数曲の歌謡曲的なノリから、徐々により高度なビ・バップが確立して行く過程を聴く事ができます。)




【1950年代】

ロックンロール創生期。ブルースやカントリーミュージックが、若者のダンス向きの荒々しく乗りの良い音楽に発展することで、ロックンロールが生まれます。ジャズからの影響はまだ一部にとどまります。


○ブルース


・エルモア・ジェームス

エレキ・ギタリストでありボーカリスト。マディ・ウォーターズと同様、スライド奏法の名手であり、彼の特徴である3連符の繰り返しは、今ではブルース演奏の定番の一つとして、ロック・ミュージシャンにも広く愛奏されています。ただ、3連符はあくまでも彼が用いた奏法の一部であり、それ以外の奏法の曲を聴くと、伴奏にしてもソロ演奏にしても、一つのスタイルに囚われず、アイデアを豊富に持って曲に活かしていたことが分かります。

エルモアの1950年代の演奏を順に聴いて行くと、バンドスタイルで奏でられるブルースが定着して様式化して行く様子と、その様式がよりロックに近い、ドラムのリズムが強調された洗練されたサウンドになって行く過程を知る事ができます。

お勧め盤:

『Big Box Of Elmore James』(輸入盤ですが、6枚組で2700円程度と安く、彼のスライドギターの艶やかなサウンドがたっぷり楽しめます。)



○ジャズ


・マイルス・デイヴィス

ジャズ・トランペット奏者。

チャーリー・パーカーの一派の一人として、徐々に実力を蓄えて行ったマイルスは、1950年代半ばから、ビ・バップよりもより編曲に力を入れて聴き馴染みやすくした『ハード・バップ』と呼ばれる演奏様式を取り入れる事で、多くの聴衆の人気を獲得したミュージシャンです。

創造から10年経って、マンネリ化が見られ始めたビ・バップは、マイルスたち新しい感性を持ったミュージシャンによって、新たな進化の段階に入ることになります。

お勧め盤:

・『リラクシン』(1956年発表のアルバム。マイルスに続いて1960年代にジャズの中心的存在となるジョン・コルトレーンが参加し、初々しい演奏を聴かせています。)

・『カインド・オブ・ブルー』(1959年発表のアルバム。ハード・バップが早くもマンネリに陥って来た事を危惧したマイルスが、ビ・バップの定番フレーズに囚われない自由なアドリブを志向して作ったアルバムです。抑制されたサウンドと、クラシックなど他ジャンルのメロディラインを取り入れた音楽性は、『モード・ジャズ』と名付けられ、以降のジャズシーンの主流の演奏法になって行きます。このアルバムにも参加しているジョン・コルトレーンの、三年の間の成長ぶりも顕著です。ジャズは先人が後進を見いだして育てることで達展させて来た音楽なのだという事がよく分かります。)



○ロックンロール


・ジーン・ヴィンセント&ヒズ・ブルー・キャップス

ジーン・ヴィンセント(ボーカル)のバンドには、クリフ・ギャラップという優れたテクニックを備えたエレキギタリストが在籍しており、特にギターミュージック愛好家にとって、ジーン・ヴィンセントの音楽を時代を超えた味わい深いものにしているのは、彼の名演奏によるところが大きいと言えます。

1950年代半ばの時点で、ジーン・ヴィンセントのバンドは、初期のエルヴィス・プレスリーのバンドと比肩する実力を持っており、エルヴィスのスタイルから多大な影響を受けてはいるものの、荒々しさとテクニックがバランスしたロックンロールらしい曲が多く、ギター演奏以外の演奏やアレンジにも聴き応えがあるのが魅力です。

お勧め盤:

『ブルージーン・バップ』(1956年発表のアルバム。ギターヒーローが注目されるようになる以前に、これほどギター演奏の巧みさが前面に出て楽しめるロックンロールバンドは貴重です。)



後編に続く


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