〜朝〜
黒い烏が鳴く時何かが起こる。
「さぁ、選べ」黒いフードを被った死神が冷たい声で私に問う。
「私は……。」
ピリリリ目覚ましの音で目を覚ます。
「今のは・・・夢?」
すごく鮮明な夢だったなぁ。そんなことを思いながら私 結城 理也は学校へ行く支度をする。
親は共働きで私が起きる頃にはもう出勤して家には私だけだ。
トースターで焼いたパンに目玉焼きをのせケチャップをかける。とても簡単だけどとても美味しい、いつもの朝食を作って朝のニュースを見ながら頬張る。
「また変死体が見つかったのか・・・。」最近家の近所で多発している獣に身体を食い千切られたような遺体が見つかるという事件だ。都心に近い街でこのような事件は奇妙過ぎて連日ニュースになっているのだ。
不思議だなと思いつつどこか他人事の事件に気を取られていたらあっという間に学校に行く時間だ。「あぁ!もう出ないと遅刻する!」バタバタと廊下を走り玄関へ。
「・・・行ってきます。」静まり返った家の中にポツリ呟いて学校へ急いだ。
なんとか遅刻せず小学校に着くとこができ、息を整えながら5年2組の教室のドアを開ける。
「おはよう。」一応挨拶はしてみるが返答はない。
ため息をつきながら席に着くと予鈴が鳴り先生が教室に入ってきた。
窓の外を見ながら頬杖をつき先生の話に耳を傾けるいつもの朝だ。
「おはよう!今日は遅かったんだね。寝坊でもした?」
ぼーっと外を眺めていたらいつの間にか朝のHRが終わって一人の女の子が笑いながら話しかけてきた。
「おはよう。ユキこそ、私が来た時いなかったじゃん。」
「いやー参ったよ家族全員寝坊しちゃって!ギリギリ遅刻しなかったよ!」
笑顔で話す彼女は私の唯一の友達。
ふふふ、二人で笑いあっていると次の授業を告げるチャイムが鳴った。
「じゃぁまた後でね!」
「うん!」ユキが席について間もなく先生が入ってきて授業が始まった。
「んあぁー!給食だ!」クラスの誰かの声が聞こえてみんな友達と机をくっつけて食べる用意をしている。
「理也ぁー!算数教えてー!」必死な表情で机をくっつけながらユキがノート片手に行ってきた。
「いいけど、どこが分からないのか分からないは教えられないからね。」笑いながら返すと大きな目を見開いて顔を真っ青にして机に突っ伏した。せっかく可愛い顔をしているのに時々残念だなぁ。
給食を食べて算数を教えていたら、飽きたユキが朝のニュースで見た事件の話を切り出した。
「そういえばさぁ、また変死体が見つかったってね。これで何件目なんだろうね。」
「ねー。私も今朝そのニュース見て遅くなったんだ。」
「でも現実味ないよねー。こんな街中に獣っているわけないじゃんって思っちゃう。」ユキの言葉に深く頷く。
「あっ!私先生にプリント渡すの忘れてた!」とユキが勢いよく立ち上がりちょっと職員室行ってくると駆け出した。
「行ってらっしゃい」私は手を振りユキを見送った。
他の女の子たちはこういうとき一緒についていくんだろうけど、私はそういう女子独特の行動が苦手だ。だからなのかわからないがユキ以外の女の子はみんな私を避ける。
はああああ。そんなことを考えているとため息が出た。
私は天気のいい空を眺めながら机に突っ伏した。
キーンコーンカーンコーン予鈴の音で目覚めた。
っは!?寝てた?!吃驚して起きるとユキがいつの間にか帰ってきていた。
「おはよう。ふふふ、よく寝ていたから起こさなかったの。」楽しそうに笑いながら言って私の頭をポンポンと叩いた。
「起こしてよ。・・・でも確かに暖かくて気持ちよかったよ。」そういった私の顔を見て口角を上げ楽しそうにじゃぁね♪と席に戻っていった。
本鈴が鳴って先生が入ってきた。5時間目が始まる。
「おーい!ここだよぉ!」濃い茶髪のショートヘアの女の子が大きく手をふる。
「うるさいなぁ。わかってるよ。」カラフルなピンで前髪を上げている金髪の不良のような男の子が返事をする。
その光景を微笑ましそうに口元をほころばせながら後ろからついていく、冷徹無比な無表情の男の子。
三人は昼休みの終わりを告げるチャイムを聴きながら一歩一歩5年2組の教室を目指した。