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予感
中学一年の春、入学してからというものHRが終われば誰よりもはやく校舎から姿を消していた。これは他人と関わることを拒絶していたためだった。
いつも通りに階段を一段とばしで駆け下り昇降口まで辿りついた時、天気が崩れ始めていた。気にせず校門の外まで出たが、やはり降られた。生憎折り畳み傘を持ち歩く性分ではなかったため、私は家までの距離と帰路途中で降られる雨を考え、足先を見つめながら肩を落として学校へ引き返した。
さて、どこへ行こうか。
自分の教室、というかどの教室も雨天の為、運動部がミーティングをしているらしかった。
海になりつつあるグラウンドを眺めていると、何か楽器の音がまっすぐのびるように聞こえた。まるで私は手招きされている様な錯覚に陥り、無意識の内に音のする方を目指して歩き始めた。階段をぐんぐん上る。この先は屋上への階段だった。やはりこの上に誰ががいる。関わってはいけない、しかし、この音の正体を今知らなければきっと近い未来後悔することになるだろうと感じていた。