短編(1300字程度)
ここ2日ほどで書いた小説と言うには何かが足りない作品です。
思いついた言葉を書き並べただけなので、もしかしたら書き足したり削除したりするかも…(苦笑)
それでもいいよって方のみ閲覧ください。
指摘等あれば是非コメントしていってね。
一生忘れたくないと思える言葉や出来事はありますか。
いつもはつまらない授業を右から左へ聞き流しているのに、この時は先生の言葉が耳に残った。
僕には忘れたくない、たぶんきっと一生忘れない言葉がある。
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それは僕が10歳の頃、祖父母の家に遊びに行った時のこと。
いつもは話さないおじいちゃんに声をかけたのは、ただの気まぐれ、もといなんとなくの行動だった。
その時家族はリビングでテーブルを囲んでおり、おじいちゃんは縁側で一人晩酌をしていた。
「なにしてるの?」と声をかけると、「まあ座れ」と返されたのでそっと近くに座った。
季節は夏の終わりごろで、蝉が落ち着いてきたころだった。
まだ少しベタつく襟元を仰ぎ、どう声をかけるべきか迷っていると僕の顔を見ないまま「そこに居るなら何か話せ」と、おじいちゃんの声が聞こえてきた。
僕はその頃大きな悩みがあったのでそのことを話した。
「僕ね、夢があったんだ。でもそのことを人に話すと、みんな叶いっこないって言うんだ。だから夢を諦めようか悩んでいるんだ……。」
そう言うとおじいちゃんは顔をしかめながら「意味が分からん」と一蹴し、こう続けた。
「確実に叶う夢しか語ったらいかんのか、最近の若者は。夢は叶う叶わんやなくて、見上げて進みたい先にあるものやろ。」
この時のおじいちゃんの言葉は、当時の僕には衝撃で。でも、はっきりとした物言いが心地よかったのを覚えている。
「言ったら人に笑われる夢なんてワシかてもっとるで。」
笑みを含ませた口調で、おじいちゃんが言う。
僕は驚き「マジで?!」と大きな声を出しおじいちゃんの方へ身を乗り出す。おじいちゃんは苦笑しながら頷き、遠くを見つめるような表情で語りだした。
「ワシはな、物書きになりたいねん。物書きはええもんやで。人間ひとりの人生しか過ごすことができんのに、物書きは紙の上でなんぼでも色んな人生を体験できる。頭んなかでいろんな事が考えられるっちゅーことは、それだけ目で色んなもんを見れるってことやしな。才能がないと叶わん職やから、なかなか人には言えないし言ったところで笑われるのがオチやけどな。」
最後の方は少し悲し気で声がしおれていたが、言い終わると僕の方を向きニィっと銀歯を見せて笑った。
「人の夢を笑う奴なんて気にせんでいい。そういう奴らのことをイチイチ気にしてたら何も出来んなるで。最近の若者の世界はワシには分らんが、これだけは確かやと思う。」
おじいちゃんは僕の目を見てそう言い、グラスを煽った。
いつもはむっつり黙り込み、一人離れて過ごすじいちゃんをこの時初めて身近に感じた。
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なりたい夢を語ればいい、笑う奴なんて気にしなくていい。
この時おじいちゃんは僕が欲しかった言葉を全てくれた。だから僕は今でも当時と変わらず同じ夢を持ち続けているし、少しずつだが叶える努力をしている。
苦しい思いは当然したし、本当に挫折しそうになったこともある。だけどあの時諦めていたら手に入らなかったものもが確実にある。
僕はそう信じ、これからも夢を追いかけると思う。
夢は見上げるものであり、先にある希望だから。