戦い *
一応残酷表現ありですので、印をつけておきました。
心臓が嫌な音を立てる。今のは、なに?
急に黙り込んでしまった私を見て、ルイさんが声をかけてくる。
「…ミリア?どうかしたの?」
「あ、いや…っ」
言うべきこと?でもそんな途方もないこと。
「あの、ここら辺ってよくだれか通るんですか?商人の方とか」
「いや、ここは一応隠れ家にしてるから通らない筈だけど…どうして?」
「あ、いえ!それならいいんです!」
ただの取り越し苦労だといいんだけど…。
「そう?それなら、次はケンドウとやらを見せてもらおうかな。剣を使うんだろう?僕も剣が1番好きだ。自分の身体の一部のように扱えるからね」
「はあ、でも私のは本当にスポーツなので。使ってるのも言ってしまえば竹の棒です」
「そうなの?こういう剣は使わないのかな?」
そういってルイさんが取り出したのは…
「し、真剣?!」
怖すぎ!!生で見たの初めてなんですけど?!こわいよ!こんなの切れちゃうじゃん!人が!
「まあ、よく切れるよ」
「ななななななにとは聞かないので言わないでくださいね!」
いや無理でしょー絶対無理でしょー私平和ボケしてるで有名な日本人ですよー。いきなり本物の剣持たされて人殺せっての?だめだ、剣はダメ。せめて相手を気絶させられるくらいの打撃ができるようにならないと…。
「ミリア、相手は一片の躊躇も無く襲ってくるよ」
ゾクッ
先ほどまでの柔かな笑顔とは打って変わって、何も映し出さない彼の顔は酷く美しく怖かった。
「でも、もしその手を汚したくないんなら」
「僕ができる限り護ってあげよう」
ルイさんに夢中になっていて気づかなかった。ガラガラと近寄ってくる荷台の音、そして下品な笑い声。
囲まれてる!!
「ゲヘヘ…ようやく見つけたぜ…!」
「こいつら2人だけですか?こんなの潰すだけで2000万gelかよお!」
「こんなおいしい話はねえぜ!!」
さっき見た映像——こいつらだ!黒い布を顔に巻いた10人組…!持ってる武器も同じ!!さっき見た映像は今起こることを教えてくれていたの…?
「おいおい、何も知らされずに死ににきたのか?」
エ…ダレ…?
「そいつぁかわいそうだ。せめて一瞬で殺してやらなきゃなぁ?ついでに雇った奴らのことも教えてもらおうか」
ル、ルイさん?本当にさっきまでのルイさんですか?キャラ違いすぎません?そしてなんでこの危機的状況で 笑 っ て や が る 。
「おいジン!でてこーい」
「もういるわ!ったく。折角何かわかりそうだったのに落ち着いて読書もできねえじゃねえか」
「とりあえず掃除したあとだな、援護頼んだぞ」
「あいよ。ミリア、おめえは死にたくなきゃ家の中入ってな」
「し、死ぬの?!やだよ!!」
「だから死にたくなきゃ家の中いろって!」
だからって家の中って!!戦いがどんなものか見たかったし、しょうがないからドアを少しだけ開けて覗き見て危険が来たらドアを即座に閉めるという案を採用した。自分で。
「さぁウォーミングアップ、いきますか」
「あんま怪我すんなよ?俺が請け負うんだから」
「はいはい。おいお前ら!喧嘩を売ったのがカイドウモン(・・・・・・)の人間ってこと、あの世で覚えとけよ?」
「カイドウモン?!あのレジスタントの?!」
「親方、どうするんですか!」
「うるせえ!こちとら2000万gelがかかってんだ!10人対2人だぞ!お前ら底力見せてやれ!」
「ウオオオォオオオ!!!」
ダンッ!
先攻はこっち。ルイさんは5メートル先に立って銃を構える相手に一気に詰め寄り、言葉を発させることなく首元を掻っ切った。
血がまるで破裂した水風船のように飛び出し、男は叫び声を発するまでもなく亡骸となった。
「ウ…ウソ…」
目の前で人殺しが行われた、血を見てしまった、色々なショックが頭をぐるぐるし、私はドアを閉めそのまま倒れてしまった。
ー
「酷いことをさせてごめんね。だけど君にしか頼れないんだ。任せたよ」
「神様、何か言いましたか?」
「いや、なーんも!」
ルイって変態っぽいよね。