混乱
なんで。
私、日本で暮らしてたじゃない?
お父さんはいなかったけど、お母さんとお兄ちゃんと3人で仲良くやってたじゃない。
そりゃ遅刻しそうになって自転車かっ飛ばしたけど、挙句だれか他人と入れ替わるって、そんなんアリ?
「わたし、そんな人じゃない!!わたしは、日本人なんです。こんな金髪じゃないし、外国人ぽくないし、お肌ももっと荒れてる!!なんで?!私は、私なのに…!!」
涙が次から次へ出てくる。
泣きたい。お母さんのところに戻りたい。
高校通いたい。
「お、落ち着いてくださいルーヴェルトン様!訳を聞かせて下さい」
「ルーヴェルトンじゃ…ない…」
「兎に角、落ち着いてください。どういうことですか?」
「わかんない…私はこのルーヴェルトンて人じゃない。身体はこの人だけど、私は違う。日本の、高校生なの普通の」
「ニホン…コウコウセ…?すいません、聞いたことがない単語です…」
「なんでよ!!私たちが今話してるこの!言葉も!日本語って言うのよ?!」
「こ、この言葉はメボル語という共通語です!貴方もメボル語を話しています」
「知らないそんな変な名前の言葉!習ったことない!私は日本語を話してるの!」
「おいおい、なに揉めてんだ?」
いつの間に部屋に入ったのか、今度は黒髪の男がいた。
「ジン、この方ミミリア・ルーヴェルトン様な筈なのに、違うって言うんだ。それで混乱しちゃってて…」
「ルーヴェルトン?ノーブロリアの輩じゃねーか。なんでこんなところにいる」
「こらこら、倒れてたんだよ森に。それで介抱してたんだ僕が」
「また拾いモンしてきたのかよ。どーせ治すの俺だろーが!!」
「ご、ごめんほっとけなくて…」
「ったく!おい、そこのお前」
ジンと呼ばれた黒髪の男は私の方を見てきた。
「なによ!!黒髪ならさすがに日本人でしょ?!日本!分かるでしょ?!」
「なに言ってんだよ、お前は紛れもなくミミリア・ルーヴェルトンだが…見た目の話だな。変装してんのか?いや、できすぎてるな…」
「このままお母さんにもお兄ちゃんにも会えずに1人で知らない土地で死んでいくんだぁぁあうわぁぁああ!!!」
なんで私だけこんな目に!ミミリア・ルーヴェルトンってなによ!長ったらしい名前!!そもそもルーヴェルトン家には捨てられたのよ!!
「あれ?」
そう、ルーヴェルトン家には捨てられた…
私がひどい性格で婚約者に捨てられたから…
婚約者は、別の女の子を選んだんだ…
ストンとはいってきた。
「お前…家に捨てられたのか?」
「た、多分。この子は捨てられたみたい」
「この子って…お前だろ?」
とりあえず、状況を整理しないと。
主将も言ってた、勝負するとき大事なのは相手の上をいく慎重さ、そして大胆さ。
「私の話を聞いてください。全部話します。その代わり、信じてください!」
真実を差し出して、味方を得られるなら。
この知らない場所で生きるためには強かさが重要。
「ま、話は聞いてからだ」
「兎に角事情がありそうだし、お茶を飲みながら話そう」