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青い瞳のペンドルトン  作者: 若宮葉子
2/7

私と彼と酒場の主人1

ひと段落したので初投稿。少し短い。

導入が終わったら導入が始まるという新たな境地。

彼の語った物語を、さてどれから書き起こしてやろうか。と考察してみた。その結果はやはり私の印象にひときわ強く残っている物を優先するべきだ、という事になり、したがって今回は彼との最初の出会いで聞かされたものにすると決めた。


まずは私の状況について説明しておこう。征暦1882年3月23日。大学の卒業式を終えた私はその足で学生時代の行きつけの酒場に向かっていた。ここに住み込みで働くことを願い出るためである。


この行動には二つの目的がある。一つ目が、酒場、という環境を活動の拠点とする事。そもそも酒場というのは、ただ、酒を飲むための場所ではない。貧乏人、知識人、労働者、貴人、流れ者。あらゆる人々が集い、酒を肴に日々のアレやコレやといった出来事を語るための場所だ。「世界の事を知りたくばまずは酒場に行け」古い諺にもある通り、酒場というのは古今東西、果ての海の天気から、隣の家の夕食までありとあらゆる情報の坩堝なのだ。「打倒勇者」のネタを求めて

いた私が拠点とするのにうってつけの場所だろう。


もう一つの目的は、生活の上で必須となる衣食住の確保だ。多くの作家がペンを折る理由として、これらの欠落があげられる。そこで住み込み、という労働形態をとることで、毎日の食事と安全な寝床、そして筆記具を買い揃えられるだけの給金を同時に確保してしまおうと考えたのだ。


今にして思う。私の頼み事は、要するに「わずかばかりの労働力と引き換えに、役立たずの厄介者を養え」という事だ。まったく世間知らずの子供は恐ろしいことを考える。(このことについて「何て合理的なアイデア!」なんて書かれた当時のメモが出てきたときには卒倒するかと思った。)厚顔無恥ここに極まれり、だ。しかし、酒場の主人は笑ってそれを認め、そればかりか可能な限り私の創作活動に便宜を図ってくれた。今更になって彼の厚意に畏れ入るばかりだ。


ありがとうございます。


さて。私の事情についてはこれくらいにして、いよいよ彼の話に移ろう。

【次】一週間以内


【用語解説】征暦:この世界で使用される年号。この世界で初めて確認された「魔王」が討伐された年を1年とする。魔王を「征」したことで生まれた「暦」

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