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緋碧ノ娘  作者: 桐夜 白
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緋碧ノ娘 7




ドサッという音と共に、冷たい床に押し倒される娘。

何が起きたのか理解が出来なかった。


緋碧宮とは違う、冷たくひんやりしたつるつるした石の床に、何かガラスのようなモノに閉じ込められた吊り下げられた火達。

見たこともない刃物が先端についた長い棒を構えて立つ何人もの重たそうな服を着た人達に、大きな椅子に深く腰掛ける大きな体の男の人。


「陛下、コレがお求めのモノでございます」


陛下。

そう耳にした瞬間、娘の顔が強張り、視線が冷たく突き刺さるような心が見える方へと向けられる。

読みたくなくても読めてしまう、悲しく暗い心。

とても大きく、恐ろしい心。


陛下と呼ばれた男──緋碧ノ国の国王が鼻で笑う声が聞こえた。

娘の体が強張り、床に押し付けられたまま娘はわずかな抵抗でしかないが国王を睨みつける。


「気丈なものよ。

たった一人で何ができる。

もう側に居た男も居ないというに」



娘の目が大きく見開かれる。

ソレは陛下と呼ばれた男の言葉だけではなく、見えた冷たい心にも反応して、だ…。

言葉で表されなくても、知りたくなかったモノが見えてしまう、娘の持って生まれた力──心を読む力。


「アムル…?」


震える唇で愛しい人の名を呼ぶ娘。

そんな娘に、国王はさらに鼻で笑う。


「恐れも敬いもない。

馬鹿息子と、ソレに賛同した一部の馬鹿国民共と変わらぬか。

嘆かわしいことよ。


心が読めるのであろう?

ならば分かるであろう、我が、心が…!」



国王の冷酷なまでの想いが痛い程、娘の目に、頭に過ぎる。

娘の目から涙が零れる。

信じられない、という風に。



カラン…!と冷たく音が響く。

娘の前に投げ捨てられた、折られた剣。

緋碧宮に祀られていた、女神──アカーナ神の剣だった。


「信仰などくだらん。

我はこれより大陸をも平定する王となるのだ!

使える力は使うまで、お前も我の為にここでソノ力を大いに奮え!

我の為に!!」



娘の喉から嗚咽が漏れる。

嘘だ、という言葉は声にならず、ただひたすらに娘の涙と共に零れてゆく。

見たくない心を読む力は、知りたくない真実をも突きつける…。


冷たい床に押さえつけられて、娘は目の前に投げられた剣へと手を伸ばした。


「逆らえば、アノ馬鹿息子と同じ…、黄泉ノ世界へと送るまでだ」



国王がそう言葉を零したソノ瞬間、娘の中で何かが切れた…。



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