緋碧ノ娘 3
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──名すら戴けず、どのくらい経っただろうか?
そう天を仰ぎて、自分の胸に問いかける。
気づけば十七という年を迎え、一人変わらず生まれてからずっとココで日々を過ごす。
緋碧宮は静かなモノだ。
私の歌声と、自然の音、鳥獣達の声以外は滅多と訪れないのだから。
そう祀られる剣を見つめ、娘は静かに想う。
剣の周りには円形にレンガが敷かれ、ソノ外側に円形の溝が掘られ水が流れる。
そんな円形の溝には幾つもの線状の溝が、緋碧宮の外から続き、合流するように付けられている。
水は絶えず流れ、循環し、潤いを見せる。
天を仰げば鮮やかに彩られた空が光を降り注ぎ、緋碧宮の天井に空けられた円状の穴から、鳥達の飛ぶ姿が見え、同時に生い茂る木々の葉が蔦と共に伝う。
ソレが剣の祀られた、緋碧宮の建物の中央。
緋碧ノ国の成人ノ儀で使われる場所にして、娘が毎日過ごす、祈りの捧ぐ祭壇の在る部屋。
静かで、とても寂しく、誰も訪れない部屋…。
けれども、そんな部屋にも光が訪れるようになった。
彼という名の、光が…。
明日も日が上り、ココで歌を歌えば、ソノ歌声を聴いて彼が、そして鳥獣達が寄り添ってくれる。
ココに来てくれる。
それだけが今の私には堪らなく嬉しいことだった。
誰も訪れなかったコノ場所に、国の者が生活に必要な最低限のモノだけを荷台に乗せ、ただ置いていくだけのコノ悲しいお家に、好んで来てくれるただ一人の人…。
「あぁ、早く会いたい…!」
そう娘は心から愛おし気に言い、歌を歌う。
とても美しく、澄んだ声で…。
風が波が、音を折り重ねるようにして共に歌ってくれる、織り成す調べ。
とても美しいソノ旋律に、耳を傾ける。




