レポート01 ~入学式で出会った少年と友達になったと思ったら突然勝負を挑まれた~中編
中編
「それじゃあ、今日はまず一グループが、全員の前で模擬戦をおこなってもらう!自信のあるグループは前に出ろ!」
それが、きっかけだった。もちろん、僕はそんなことしたくなかったが、相方の恭介が、
「はい!、俺らがやります!!」
と威勢よく、手を上げて立候補した。……そうなるのは、言われた時点で気づいていたよ。うん。
「速く準備しろよ煌!」
だけど、そんな調子のいい声で手招きをしてくる相方を見ていると若干腹がたつ。……絶対に負けるもんか!!
「わかってる、少し待て」
と僕は言って、すぐにイージスを展開して構えた。
恭介の武具は槍。リーチさえ気おつければなんの問題もない。むしろ、攻撃方法の方が心配になってくるくらいである。
「……それでは、制限時間三分、試合開始!!」
担任のそんな掛け声で試合は開始された。
「じゃ、いくぜ~!!」
頭の上で数回槍を回してから恭介は僕に槍先をむけて突っ込んできた。
「くっ!!」
しっかり、ガードの体制を組んだにもかかわらず、衝撃で、少しだけ腕が痛かった。
(なんて重い一撃なんだ!)
僕がそう考えて弾き返すように押しのけた。
「てっ~!やっぱ盾を攻撃すると、反動で自分にもダメージが返って来るんだな……てか、お前すごいな」
なぜか、そう聞いてきた恭介に僕はついつい
「どこが?」
と聞き返してしまった。それを見た先生はジェスチャーで「HP確認しろ」と言ってきた。無論盾で今の攻撃をすべて受けきったとは思っていない。だが、一撃でもう決着がつくほど、差が開いたのだろうか?
五〇〇〇〇
……いや、まさか無傷だとは思わなかった。ちなみに補足説明だが、自然回復というシステムはないので、本当に無傷なのである。そして今度は恭介のHPを確認する。
四八〇〇〇
「……!そんなことあってたまるかー!!」
恭介が叫ぶ。うん、たしかにそうだ。攻撃した側が二〇〇〇も喰らっていては、ゲームバランスが崩壊してしまう。いくら、上位十名に与えられる武具のランクがまわりより、一つ高いからって、こんなのは正直認めたくない。
それは向こうも同じく、連続攻撃の態勢にはいる。それを僕は盾の大きさを肩幅より少し小さいくらいの大きさまで小さくして、的確に槍が来たコースに盾を突き出し、弾き返した。盾と槍がぶつかると、僕のHPは微動だにせず、恭介のHPがどんどんさがる。そして、一分が過ぎた段階で、
煌 五〇〇〇〇
恭介 三〇〇〇〇
という、大差がついてしまった。そして、
「この!負けるか~!!」
もう完璧に熱くなってしまった恭介は一心不乱に槍を振り回す。
(これは……もう終わらせなきゃ!)
試合開始から二分が過ぎた。僕は、恭介のことを考えて、次で勝負を決めることにした。そんなこととはつゆ知らず、恭介が強力な一撃を放ってくる。
(今だ!!)
そう判断した僕は、その攻撃をうまく受け流し、間合いを詰める
「しまっ!!うぐっ!」
間合いを詰めたあと恭介は回避しようとしたが体重がすべて前に行ってたため、バランスを余計にくずし、僕が盾を篭手に変換し装備した右腕で、強力な肘打ちをお見舞いした。
それを喰らった恭介は、その場から一メートルほど吹っ飛んで地面に転がった。HPを確認すると、
六七八
とちょうどいいくらいに残っていた。そして、先生のポケットから出てきたホイッスルが鳴り響き、模擬戦は幕を閉じた
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「悪い、大丈夫か?」
いくら、VR技術が発達したとはいえ、衝撃の痛みとかは現実の体の神経が受けるため、あまりにも一撃が強力だったら、「安全保護システム」が働いて、試合が強制的に終了し、勝敗はHPが多いほうが勝ちとなる。(この勝敗ではお金は動かない)そして僕は相方がいなくなってしまったので、こうして僕は気絶した恭介を連れて保健室へ来ていた。そして、当の恭介は虚ろな瞳をしてベットの上で目を覚まし
「あははは、大丈夫、大丈夫 心配いらねーぜ煌 たいしたことねーよ」
元気なさそうに答えた。そして続けて
「やっぱツエーな、まさか、能力値が高かったりすんのか?」
「いや、テストしていないからそれはないよ」
そういったが、すかさず、僕がツッコミを入れて「それもそうだな」と言った。それからしばらくして
「今度はぜってー負けねー」
と急に恭介が話かけてきたため、僕は、
「こっちも負けないよ」
と言ってやり、保健室を後にした。
そして、二人は帰宅のため玄関にいくと、担任の黒江先生が立っていた。そしてこちらを向いて手招きをしている。
「なんか用すっか黒江先生」
恭介が若干先生に軽く話しかけると、
「まず、今日やった小テストの結果を伝えようと思ってね」
「……まさか悪かったんですか、あの小テスト」
僕が気まずそうな声のトーンでそう言った黒江先生に答えると首を横に振った(ちなみに、ここでの小テストとは五十点満点で、学期ごとに行われるテストでは百二十点満点というのを採用している)
「いいえ、逆にすごいわよ。……満点なのよ二人とも。こんなの、今の生徒会長以来よ、」
そういわれたが、二人はたいして実感がわかなかった。確かに入学してから二人ともほぼ毎日四時間以上を復習、予習に当ててはいたが、ここまで結果が出てくるとは……すると黒江先生は教師用の携帯端末をポケットからとりだして何かを二人の情報端末に送ってきた。
「今回の満点報酬よ!」
二人で送られてきた報酬を確認するとそこには、二〇〇〇ベレーが追加されていて、レザー防具(頭・胴・肩・脛)の一式が入っていた。
「こんなにいいんかい黒江先生!」
驚いたように大きな声で恭介が聞き返した。それにたいして先生は、
「もちろんよ!」
と親指を立てて、ウインクをしてきた。
……なんかイメージと違うなー と僕が考えていると、今度はメールを送ってきた。確認すると、
二人に、生徒会会長から勝負の話が来たからかってにOK出しといたから 笑
「「かってなことしないでください~!!」」
あの恭介までもが律儀な口調で言ってしまうほど、驚いた。黒江先生は舌をかわいく少しだけ出している。
「だって、ちょうど昨日、徹夜で仕事を終わらしてビール一缶飲んだあとにきたもんだからさ、つい、ゴメンね♪」
とりあえず、聞きたいことは山ほどではないにしろいくつかあったが、なんとか飲み込んで、
「わかりました いつでしょうか」
と聞いた。そして今度返ってきた言葉は
「明日」
「え、なんですって?」
……聞き間違えですよね。そう言ってください先生!!
「いや、だーかーらー、明日だってば」
「……僕先生のこと信用できなくなりました…………しつれいします」
僕らはすぐさま回れ右をして靴箱へ向かった。先生のあわてて、謝る声が聞こえてきたきがしたが、今度はいや、今度こそ空耳だろうと思い、飛び出しっていった。
そして、次の日、昼休みに二人で指定された場所に行くと、そこには袴をしっかり着こなして、身長は優に百九十センチオーバーの人がいた。
「あなたが、生徒会長ですか?」
僕が、とりあえずたずねると、
「いかにも、俺が現生徒会長、草壁 烈だ」
とても腹に響きそうな低い威圧感のある声を出した。
「どうして、俺らと戦うだなんていったんですか先輩は」
恭介がそう言って草壁生徒会長に声をかけると
「満点を取ったそうじゃないかあの最初の小テストで、……酔った黒江先生がかってに教えてくれたよ」
(黒江先生のバカヤローーーーーーーー!!)
二人で草壁先輩に背を向けて今はいない黒江先生に向かって心の中で毒を吐いた。
「では、二人同時にかかってこい!!」
そう言って背を向けたことには何も言わずに、武士が持ちそうな大きな刀を構えた。どうやらあれが草壁生徒会長の武具らしい。
「泣いてもしらないで生徒会長」
「全力でいかせてもらいます」
僕達はそれぞれの武具を展開させながらそう言い、いきなり、生徒会トップの人と交戦した。
後編へ続く
中篇です。まず、すみません細かく分けてしまって。初めて自分の小説を読んだのなら、ぜひ感想や、気づいた事を教えてください。
お待ちしております