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ある男女による孤児院ほのぼの運営  作者: myure
第一章 その瞳に映るモノ
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第七話  孤児院の日常 「決断」

パチ、パチパチ、パチ……パチ……パチ、ヵラン……


現在、空は星星ほしぼしが互いに自己主張する様に輝き、月の光が辺りを優しく照らしている時間帯。草も殆ど生えていない荒野の中、一組の男女が寄り添い合い、焚き火を前に会話をしていた。彼等の少し先には、木々が立ち並ぶ森林が広がっている。そして更に後方へ視線を向けると、天を貫くかと思う程の山々が立ち並んでいた。


「……こうやって二人で野宿するのも久しぶりねぇ、リヴァ?」


「……うん。ここ数年は、必ずどっちかが孤児院に残る様にしていたからね。……寒くない?セイラ。」


(それ昨日も言ってたけど……とは言わないでおこう。)


「えぇ、大丈夫よ。……余り気にしてはいなかったけれど、随分経ったものね。村を作り始めてからは、毎日が楽しかったから……ふふふ。勿論、今も楽しいのだけれどね。たまには悪くないわ。」


「あぁ〜……確かに。でも、今回の目的が目的だけに、余り楽しめないなぁ。」


「あら、私とリヴァが居れば獣の百や千どうとでもなるわよ。魔王と戦う訳でもないのだし……それにしても、ここまで殆ど魔獣に遭わなかったわね。ここって国からも随分離れているんだけど、どうして?」


「油断は禁物だよ?……魔獣に関しては、最近引切り無しに冒険者が通ったはずだから、警戒しているんじゃないかな?気配だけは感じられたしね。」


(まぁ手元には、常にエクスが置かれてるし油断はしてないか。)


「でも、もう森は目の前よ?魔獣が寄って来ても可笑しく無いじゃない。今なんか、気配すら感じないわ。」


「何故かは分からないんだけど、森に住む魔獣は外に出てこないんだ。……それに外の魔獣は森を避けてる様な感じ。森に近づくに連れて、隠れて追って来てた気配も段々減っていったしね。エクスは何か知らない?」


『うぅむ。我も余り外の事を知っている訳ではないのだよ。寧ろ、主と出会うまでは殆ど動く事は無かった。』


「……あぁそういえば、前にそんな事言ってたね。」


「……エクス、私にも説明しなさいよ。……それにしても『念話』って、こういう時は不便ね。『同時』に複数は繋げられないなんて。」


「確かにね。それに、向こうから繋げて貰わないといけないから、戦闘中では逆に気が散る可能性が高いしね。冒険者の中では、余程互の呼吸が合ってないと使わないみたいだよ。

……そろそろ寝ようか?明日も早いしね。」


「そうね。エクス、魔獣が感知範囲に入ったら起こしなさい。敵意、進路関係無くよ。」


『了承。主、良き夢を。』


「よろしくね、エクス。御休み、セイラ。」 「御休みなさい、リヴァ。」


二人は互に重なる様に寄り添い合い、一つの毛布に包まり眠りに着く。


しかし、明日に対する不安か、それとも久方振りの旅で少し興奮しているのか、直ぐに眠りに付けないリヴァルは、村でクオンと別れた後の事を思い出し、次第に意識を落としていった。


(……明日には森の調査か。……それにしても、やっぱりセイラには敵わないな。)


 * * * * * *


「……『防衛線』?この村を?……ちょっと行ってくるわ。」


「うん……って、待って待って!何処行く気なのセイラ!?」


「決まってるわ。そんな巫山戯た提案した奴には『教育』が必要よ。私が直接締め……『教育』してあげるのよ。」


ギルドとの対話を終えて現在は孤児院の一室、リヴァルとセイラの部屋である。あの後、クオン達と分かれる前に、ちょっとした『騒動』はあったが直ぐに収拾し、リヴァル達は孤児院へと戻ることとなった。そこでライオスと少し相談したが、続きはセイラが戻ってからとなり解散。ライオスは、獣王の森についての情報を整理すると言って帰った。セイラが戻る頃には夕食時となっており、それが終えてから今朝の説明に入り今に至る。


「……今、不穏な言葉が聞こえたんだけど。それは駄目だよ?ギルドの代表にそんな事したら全体を敵に……とまではいかなくても、村にとって良くないのは確かなんだ。それに、今回の事はギルドが悪いって訳じゃない。彼等は彼等で良かれと思っての事なんだよ。」


「何故?……そもそも防衛線を作りたいなら、もっと森に近い所で村なり、砦なり作ればいいじゃない。態々この村に作る必要なんか無い。……ここには子供達もいるのに。」


「……言ってる事は解るんだけど、そう簡単な話じゃないんだよ。村や砦を作ろうにも時間が掛かる。この村の様に、初めから人が集まっていた訳じゃないし。態々辺境に、それも魔獣が直ぐ近くに居る場所で進んで住む物好きは居ないよ。商人だって早々近づかない。ここだって、普通は村を作ろうだなんて思わない場所なんだし。……それに、危険が何時迫ってくるか分からない状況でもある。出来て未だ数年とは言え、ここを選ぶのは間違った判断じゃないだ。」


「……リヴァはギルドを作るのに賛成なの?」


「……正直、賛成とは言えない。今は村も落ち着いているけれど、畑も多い訳じゃないから、食料の問題だってある。近くの森も荒らされるかもしれない。人が増えれば、それだけ騒動の原因にもなるし。何より冒険者が多く集まれば、子供達に悪影響を及ぼすかもしれないからね。なまじ力を持つ分、酒とか入ればどうなるか分からない。……でも、現状では直ぐにでも断ると云う訳にはいかない。さっきも言った様に危険が何時迫ってくるか解らないんだ。

……単純に魔獣が攻めてくると云うだけなら、この村全員で対処すれば何とかなると思ってる。でも、『黄金の獣』の存在や『北方の民』の目的が不明瞭な事で、不足の事態に陥るかもしれない。それだけは避けたいんだ。」


そう、冒険者が増える事事態は既に手遅れだ。噂を止めるすべも無ければ、広まるのも時間の問題。それはリヴァルも十分理解している。しかしリヴァルは、ギルドが『防衛線』にすると判断したのなら、この村にある程度の冒険者達を『常駐させる』つもりなのだろうと考えている。この村周辺で採れる薬草の類や、魔獣の素材を選別し依頼を回すのだろうと。


そう考えていたリヴァルの頭に、以前領主が帰る前に零した言葉がぎる。


(『今後、事態が大きくなっていけば村を捨てる、と云う考え方も有ります。もしその様な事態に成れば、私も微力ではありますが力となりましょう。』……か、確かにそれも一つの手だ。でも、その手だけはりたくない。今いる子供達の生活を不安定にさせたくない、と云う事も当然有る。なにより、既に独り立ちした子達にとって、ここは唯一残った『故郷』なんだ。思い出が詰まったこの場所を捨てるわけにはいかない。……もし捨てる様な事になったら、それは本当にどうしようも無くなった時だけだ。)


「……わかったわ。」


「うん。解ってもらえてよ「私たちで森を調べるわよ」かっ……え?」


「だから、私とリヴァで森を調査するのよ。『黄金の獣』の皮剥いでコートでも作れば良い。そうよ、これから段々寒くなるのだし丁度良いわ。きっと手触りも良いのでしょうね〜♪……あぁついでに北の引き篭りが何したのかも調べるわよ。良いわね?……ん〜♪久しぶりに二人きりでの旅ねぇ。何着て行こっかな〜♪楽しみ〜♪」


「……え?それは……いや、これだったら……。」


まるで、ちょっと買い物に行ってきます。という雰囲気を放っているセイラを尻目に、リヴァルは現状を整理し思考にふける。


(……確かに、俺達で調べると云う方法はクオンと対話する前に考えてはいた。しかし、クオンに事情を聞いてからは、どうやって村を守ろうかとばかり頭が回ってたんだ。でも、最悪『北方の民』について分かれば、冒険者の常駐『だけ』は避けられるかもしれない。あれが絡んで来たからギルドも腰を上げるしか無くなった訳だし。……何よりセイラはもう行く気でいるしね。こうなったら納得させられるだけの理由がなければ止められない。そうと決まれば、あれを見た場所をライオスに……いや、クオン達に聞くか。……あぁ、セイラも楽しそうにしちゃって。)


リヴァルは、素早く現状を整理し結論を出す。考えている間も、楽しそうに服を引っ張り出しているセイラを見て苦笑するしかない。


(後は明日……だな。)

 

 * * *


「……は?獣王の森を調査する?貴方がたで?それは、村にギルドを置くことに反対すると解釈してもよろしいのでしょうか?……ククク。正直、その回答が出るとは思っていませんでした。失礼ですが、それがどういう意味を持つか理解した上での決断ですか?……ククク。」


昨晩、セイラとの話し合いから翌日。明朝に、リヴァルはライオスの家を訪れ、話し合いの結果を報告した。彼は酷く驚いていたが説得の末、一応の納得はした様だ。その時に整理した情報を聞き、一度孤児院に帰ってきて朝食の準備を行なった。朝食を終えた後、子供達に授業の休みを伝えて、リリ、エクスそしてラーナに子供達を任せた。


そして現在、セイラとライオスを連れてクオンの元へ行き、村の総意を伝えた所になる。クオンとケイネは、これを聞いて酷く驚いている様だ。いや、寧ろ落胆しているとも見れる。しかし、


「いえ、ギルドを置く事自体には反対しません、というよりも出来ませんしね。但し……『故意』に冒険者達を常駐させる様な事はしないで頂きたいのです。……理由はお解りになるかと。」


「あぁ……ククク。なるほどそういう事ですか。安心しましたよ。しかし、確約はできません。そうするには、それ相応の情報を持ち帰る必要がありますが?……ククク。」


「ええ、分かっています。最低限、北方の民が何をしていたのかは調べてみせます。その内容にも寄りますが、一時的なしくは既に問題なしと判断できれば、冒険者には注意喚起のみで大丈夫ではありませんか?」


「ふぅむ……ククク。中々考えましたね。確かにそれであれば、上位冒険者がやぶれる程の『強い』魔獣が居ると説明するだけで、中位までの冒険者を抑制できるでしょうね……ククク。こちらとしても、『北方の民』がネックになっていますから。それを取り除けるなら大丈夫と判断できるかもしれません。しかし、北方の民を確認してから既に数ヶ月程過ぎていますよ?何をしていたのか等調べられるのでしょうか……ククク。」


「そこまでは分かりません。しかし、あの森には殆ど人は近づかないと聴きます。北方の民の痕迹こんせきは隠れてはいても、消えている訳ではないでしょう。一年なら未だしも、数ヶ月なら大丈夫かと。それに目撃された場所で、ある程度は絞り込めますし。こう言っては悪いですが……『死体』又はそれに『類する物』でも見つかればと思っています。」


(そう死体さえ見つかれば、魔獣を怒らせたていたとしても復讐は果たされていると考えられる。それは、現状で魔獣が外に出ていない事が理由となる。又は、持ち物である程度は分かるはずだ。)


「……ククク。確約はできませんが、それならば上も納得するかもしれませんねぇ。それで、どなたが行くのですか?村人の中に上位冒険者並の実力者が居られるので?……ククク。流石に、今から街で募集しても何週間、若しくは何ヶ月掛かるかわかりませんよ?上位冒険者など、そう多くは居ませんからねぇ。こちらとしても、そこまでは待てません……ククク。あぁ、そういえば初めに私共をもてなして頂いた隻腕の女性、グローネ殿でしたか?うちの護衛の者が言うには、かなりの使い手との事でしたので、彼女が?」


「……初めから、王国を通して領主に圧力を掛けるつもりでしたね?」


「あぁん?」 「っひ!?」 「そういぅことですかぃ。」


(通りで終始余裕を崩さなかった訳だ。……まぁ予想はできてたけど。……ケイネさん怯えてるなぁ。クオン殿も手震えてるし。まぁ、セイラは睨みつける時に殺気も飛ばすからね、仕方ないか。)


「……素直に了承して頂ければ、お互い気持ちよく交流を続けられたのですがね……ククク。こちらとしても看過できない事態ですので御理解ください。セイラ殿は顔に似合わない性格の様ですねぇ……ククク。」


「納得はできませんが、理解はできます。後、調査に向かうのは私と、そこで睨んでいるセイラの二人です。」


「「……は?」」


「……コホンッ、何度も失礼しました。あぁ〜リヴァル殿とセイラ殿、御二人で調査を?」


「はい。護衛の方が言った通り、確かにグローネはこの村で強い部類に入りますが。私とセイラの方が強いのですよ。」


「瞬殺……は無理でも、余裕なのは確かね。」


「……ククククク。いやはや、全く面白い方々ですね。分かりました。情報を持ってきて頂ければ、私が責任を持って上を説得しましょう……ククク。約束します。期限は、そうですね?一週間、いえ10日程ならば待つ事ができます。あぁ、勿論証言だけでなく何かしらの証拠もお願いしますよ?……ククク。」


「分かっています。……それで、目撃された場所について、知っている限りの情報を教えて頂きたいのです。」


「勿論ですよ……ククク。先ずは……」


 * * * * * *


「……ぅん?朝……か?」


『夜明け前だ。未だ寝ても問題ない。主も当分起きる事は無いだろう。』


「……あぁ、いや起きるよ。この位の時間で、眼が覚めるのは癖になっていてね。ん〜……はぁ。おはようエクス。」


『あぁ、おはようだ。リヴァル。』


エクスの言う通り、まだ夜明け前の時間帯。リヴァルは、自身へもたれる様に眠っているセイラを、起こさないように横へ寝かせ離れる。そして、消えかけている火に薪をべた。まだまだ周囲は暗闇の中。火の明かりと薪の焼ける音だけがそこに色を付ける。


「……そういえば、セイラは『剣』を使える様になった?」


『全く駄目だ。オーガやトロールが鉄の棒を持っているのと変わらん。……昔よりは、マシに成ってはいるがな。今では一応だが、刃の部分で当てる事はできる。』


「あぁ〜。確かにそうだね。そもそも剣術なんて習ってないからねぇ。旅をしてる時も、触りたくない魔獣にだけ武器を使っていたし。それ以外は殴る蹴るで事足りたから。」


『今でも我を、唯の丈夫な金属の塊と見ている節がある。まぁ、主の膂力は異常に尽きるからな。全力で振るえば、大抵の物は両断できるだろう。』


「まぁね。エクスが居なかった時は、1回振るう毎に武器を駄目にしていたからねぇ。賊に襲われるたび、回収しないといけなくて大変だったんだよ?……ねぇエクス。連れて来た事、後悔してる?」


『急だな。当時は、そうだな……思う所が無かったとは言えん。だが、今では悪くないと思っている。……これで良いか?』


「……うん。そうか、それは良かったよ。前から気になっては居たんだ。……半ば無理やりだったからねぇ、あの時は。」


『そうだな。主は説得と言ってはいるが、あれは脅迫でしかない。我は死を覚悟した。』


「そうなんだ?現場には居たけど、話の内容までは知らないんだよね。」


『ふむ。ならば話してやろう。あの時は……』


リヴァルとエクスが会話に没頭している間に、段々と世界に色が満ちていく。そして、小鳥の鳴き声が聞こえてくる頃に、ようやく眠り姫が眼を覚ますことになった。


「……ん……んぁ〜、リぃ〜リぃ〜……リぃリぃ〜?……鳥ぃ〜?ぉ〜「リリは置いて来たでしょ?セイラ。」……んぁ?ふぅあぁ〜……あぁ〜、おはよぉ、リヴァ。」


「うん。おはようセイラ。」


(さてと、朝食を終えたらいよいよだねぇ。この調査が吉と出るか凶と出るか……嫌な予感はやっぱりするんだよねぇ……はぁぁ〜。)


セイラとリヴァルが朝食を摂っている時、森の奥では魔獣達の活動も始まっていた。弱肉強食の森の中、魔獣や獣は、より強い魔獣や獣に食される。そして、森の奥に在る広大な湖の端、まるで、太陽の光が水に反射している様な黄金に包まれた獣は、森の外へ顔を向けていた。まるでその先の何かを観ている様に……。



----グルルルルぅ

ようやくここまで来ました。


次辺りに戦闘入れられそうです。


ちなみに、書き方をちょこちょこ変えてますが、何話位の書き方が読みやすいでしょうか?読んでいた時は特に考えなかったのですが、書き出してから気になりました。特に無いのであればこのまま行きたいと思います。何か有ればメールでも良いのでお願いします。

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