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ある男女による孤児院ほのぼの運営  作者: myure
第一章 その瞳に映るモノ
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第六話  孤児院の日常 「ギルド」

「……っっぁはっはっはっはぁ、はぁ。な……んで……何で……何でこんなぁ<ガサッ>っっ!?」


周りは薄暗い森の中、必死に駆ける者の姿がそこには在った。顔を恐怖に歪め、言葉になっていない声を上げている。一体どれ程の距離を走って来たのか、顔中を汗で濡らし顎の下から滴り落ちていた。足取りは重く身に付けた鎧は擦り合っているのか、甲高い音が静かな森に響き渡る。


----グルルルルぅ


「ぁぁぁあ。ぃゃ……ぃやだぁ、

 死にたくなぃ……ぁぁ……神よ<グシャッ……っちゅぐちゅ、ガリッ>……。」


ポタっ……ポタっ……ポタっ……


 ******


タタタタタっタンっ

「とうさま〜♪」


「ん?っっおっと!?……こらこら、いきなりは危ないよ?」


朝食を食べ、年少組の授業を終えたリヴァルは、背後から呼ばれる声に振り返ると同時に、腰から膝に掛けて衝撃を受ける。その箇所に顔を向けると、年少組の少女が抱きついていた。少女は腰に体重を預けるように抱き締め、向日葵ひまわりを思わせる笑顔で親に甘えている。


「えへへ〜♪抱っこ〜♪抱っこして〜♪」


少女はリヴァルの腰から手を離すと、体重を預けながら、まるで万歳をするように両手を広げ催促する。その様子に苦笑し、少女の両脇に手を入れ持ち上げると、胸の位置に来るよう抱きかかえる。少女はリヴァルの首に腕を回して顔をうずめ、尻尾を忙しなく動かしている。どうやら御満悦らしい。


「……ちょっと重くなったかな?身長も少し伸びてるね。」


リヴァルは腕に感じる重みにえみを深め、少女の成長を素直に喜ぶ。


この少女は猫の獣人で名前は『タマ』。薄い茶色の髪を肩まで伸ばし、毛先が内側にカールしている。本来は大きな瞳だが、何時も笑顔の為に常時細められている。5年程前、村の前に捨てられている所を村人の一人が発見した。発見した場所には、昨晩は何も無かったとの事なので、空が明けてから村の前に捨てたのだろう。ここの村人から発見されなかったのだから、かなりの使い手だと分かる。当時はまだ生後半年程で、セイラ共々苦労したのを覚えている。今まで、孤児院にそこまで幼い子供はいなかったからだ。名前に関しても、包んであった布以外は持っておらず分からなかった。名前を付けなければと思った時に、セイラから『タマ』と名付けられた。理由を聞くと『猫だから』らしい。意味は分からなかったが特に否定する理由もないので承諾した。


「……あ、とうさま〜?えっとね、お外に『おじちゃん』いたよ〜?とうさま呼んでって言ってた〜。」


「……そういう事は直ぐに言おうね?『おじちゃん』って誰だろ?「お髭ないおじちゃん!」ライオスだね。」


タマは村人を呼ぶ時、男なら『おじちゃん』女なら『おねえちゃん』で統一している。顔と名前が未だ一致してない様だ。元々、村にあまり連れて行かないのが原因だろう。言葉遣いが移るという問題もあるが、年中組に成れば嫌でも村に行くようになる。できるだけ正しい言葉使いで育ってほしい。


孤児院を運営した当初はリヴァルも気にしていなかったが、既に独り立ちした『初期』の子供達の口調が相当悪かった事。更に、タマが初めて発した言葉が『きゅしょ、やりょう♪』だったからだ。恐らく『糞野郎』と言ったのだろう、意味は当然分かってないだろうが。この言葉を聞いてリヴァルは頭を抱え、セイラは大爆笑していた。どうにかセイラを説得し、村人に事情を話して大人組の言語矯正に入ったが、逆に何故かと聞かれる程進歩が無かった。一月の矯正期間で、どうにか言い含めた当日のみ効果を発するようにはなったが、常時は諦める事にした。


「おはようごぜぇやす、若。前に話してたぁ件について、情報が入って来やした。」


「おはよう。前に話してた件って……冒険者の事だよね?それは前に領主から聞いたんだけど。あれ?伝えてなかったっけ?」


ライオスの元へ行こうと思い、タマを下ろそうとしたが中々離して貰えず少し時間が掛かった。奥の手として、タマの弱点であるくすぐりを実行したので未だ廊下に転がっているだろう。楽しそうに転がるタマを背に孤児院を出るとライオスが立っていた。軽く挨拶を交わし、話しを聞いてみると冒険者の件らしい。大体一月程前、視察に来た領主に最近冒険者がこの村に来る頻度が多くなっている事について聞いた。その時に聞けた話では『黄金の獣』と『獣王』について知ることとなった。今回の件には『黄金の獣』を見たという噂が、冒険者の間で広がっている事が原因ではないかという話だったはずだ。噂の範囲は獣王の森を出ていないので、こちらから森を直接調べる必要は無いだろうと合意したはずなのだが。


(ん〜?確かに伝えたはずなんだけど……)


「いえ、領主の奴の話は聞かせていただきゃした。ですが念の為ぇ、情報収集の方は続けていたんでさぁ。 情報ってぇのは多いに越したこたぁありやせん……今回入ってきたぁ情報ってぇのは、領主から聞いたのとぁちょっち違うんで。お伝えしとこうかと思いやした。」


「なるほど、理由はわかったよ。確かに多いに越したことはないね。それで、領主が言っていた事とは違う情報ってどんな事なの?」


ライオスが言っている事は最もだ。情報は、多ければ多い程助かるし領主が知っている事が全てという訳じゃない。また、自分の領地だからといっても知らない事は当然あるだろう。


(ここ数年、商人やって無かったから鈍ってるな〜、色々楽観視し過ぎてるかも……子供達がいるんだから逆に気にしないといけないのに。)


「へい。調べさせた内容は最近の冒険者……特に死竜山脈、獣王の森関係でさぁ。これは当然なんですがぁね。中には領主の言っていた『黄金の獣』についてもありゃした。内容は領主が言ってやがった事とそう変わりやせんがぁ、追加として最近上位の冒険者チームが行ったっきり帰ってきてねぇそうでさぁ。


……ここからが新しい情報になりやす。、どうやら『黄金の獣』を見たってぇ話より前に流れてた噂があった様でさぁ、そいつぁ森の奥で『黒い仮面を付けた集団』を見たってぇ「っっ!?それって……」……へい、十中八九『北方の民』と思ぇやす。その噂が本当だってぇなら何やってたのかぁ気になりやすが、そこまでは分からなかったそうでさぁ。もし本当だってぇなら碌な事やっちゃぁいやせんね、あいつらぁ王国を目の敵にしてやすから。亜人族は魔獣の一種だとか、人族の下で在るべきだとか。


……まぁ毎度やる事はショボイんすがねぇ。街通に家畜の糞散蒔ばらまいたり、町の中で布教活動やってぇ民から袋叩きに有ったり、騎士団に喧嘩売ってぇ返り討ちに有ったり……何がしてぇやら。」


「あ〜……確かに良くわからない連中ではあるね。王国側も、亜人族に対して意識を改めるなら受け入れるって言ってるのに、それを断って北方に住んでるからね。はぁぁ〜……その噂の真偽ってどんな感じ?」


「真偽についてぁ結構高いと思いゃさぁ。上位の冒険者チームが薬草取りに行く依頼で見かけたそうなんでぇ、どうやらぁ湖挟んで反対側だったらしく詳しくぁ分からなかったそうでさぁ。この噂ぁ聞いたのも違う冒険者からってぇ事でやす。」


「その冒険者はギルドに報告してないのか?北方の民を見たのなら、普通は報告位するんじゃ……。」


「報告はしてねぇ様でさぁ、これを聞いた時にゃぁギルドの受付も驚いてたそうなんでぇ。まぁ連中のやる事ぁ気にしない冒険者が大多数を占めてる様なんでさぁ。一個一個気にしてたらぁ切りがありやせん。この話も普通なら無視する所ですがぁ……若の勘じゃぁいかがなもんで?」


「このタイミングで聞かれるのは、ちょっと気になるんだけど……嫌な予感は消えてないね。寧ろ強まった感じ。」


「……そいつぁ本格的にやべぇじゃねぇですか。どうします?村の連中使って直接森を調べさせやすか?何らなら俺が行って「それは駄目。」……何故でさぁ?」


「上位の冒険者もまだ帰ってきてないって、今言ってたよね?確かに村のみんなは強いけど、彼等より強いって訳じゃないでしょ?例え同じ位強くても冒険者程、経験を積んでる訳じゃない。まぁ中には元冒険者も混じってはいるけど、それも昔の事だよね?冒険者に依頼するって云う手も有るけど、彼等がどの程度調べてくれるかも分からない。なら経験を覆す程『強い者』且つ、事を『重要視』してくれる者が望ましい。

……それにライオスには、できる限りこの村にいてほしいって事もある。村に何かあった時、村人を適切に指示できる者が必要だ。俺とセイラはそんな事できないしね。さっきの話が本当なら、今は尚の事。」


「じゃぁ、森の事はどうされるんでぇ?……まさか若「若ぁ〜!」あん?」 「ん?」


ライオスによって集められた情報を元に今後について話していると、村の方から一人の男がこちらに向かって走ってきた。リヴァルを若と呼んでいる時点で村人の一人と分かる。どうやらリヴァルに様があるようだ。声に反して表情は焦っている様子はない、何か問題が起こっている訳ではなさそうだと当たりを付ける。


「あぁ、ライオスの兄貴もいやしたかぁ、そいつは丁度よかった。若、おはようごぜぇやす、今、村にギルドの代表を名乗るもんが来てやす。この村の代表と話しがしてぇようで。……姐さんは?」


「おはよう。セイラなら授業で出てるよ。今日は付近の森に行ってるはずだから、帰ってくるのは夕方じゃないかな?ギルドの人が来てるんだ……このタイミングでねぇ、良いのか悪いのか。……うん、確かに聞いたよ。ありがとうね。場所は領主と話し合った一軒家で良いのかな?」


「へい。そこで合ってやす。一応今は『グローネ』がもてなしてるんでぇ、準備ができたら来てくだせぇ。ギルドの奴にゃぁ俺から言っておきやす。……じゃぁ、俺ぁこれで。」


「了解。エクスとリリに伝えてから必ず行くよ。よろしくね。……ライオス、どう思う?」


「へい、絶対たぁ言えねぇですがぁ、領主の言ってた件じゃぁねぇでしょうか?……最近じゃぁ多い週にゃぁ5組程の冒険者チームが村に来やすんでぇ。大きい町や村じゃ多いとぁ言えやせんがぁ、こんな小さな村じゃ十分な回数でさぁ。

……今後、噂が他の国々に広まっちゃぁもっと増える可能性もありやす。『黄金』なんてぇ付いてんでさぁ、皮とか狙う冒険者が居たとしても不思議じゃありやせん。それ以外にも冒険者ってぇ奴の中には、未知への探究心がぁヴィナ王国の研究者に並ぶ者もいやすんでぇ。加えて、元々獣王の森や死竜山脈にゃぁ貴重な薬草類が多いってのはぁ常識になってやす。……タイミングとしちゃぁ微妙としか言えやせん。」


(確かにタイミングとしては微妙だね。別に悪い訳ではないんだけど。セイラは居ないし、ライオスとの話し合いも途中だ。……ギルドの人がどれだけ滞在するかかな〜?急ぎじゃなければ、今日は軽く話して一旦明日に持ち越して貰おうかな。)


「だよねぇ。……先ずは、話だけでも聞きますか。ちょっとエクスとリリに伝えて来るよ。少しだけ待ってて、ギルドの人の所へは一緒に行こう。」


「分かりやした。」


 ******


「初めま<ドン!>っっ!?ぃっっつぅ……。」 「「「……。」」」 「はぁぁ……。」


(盛大にぶつけたな……あ、後ろの女性は付き添いか?溜息漏らしてる。何だろう、この人とは気が合いそうだ。)


エクスとリリに事情を説明した後。村の一軒家へとやってきたリヴァルとライオスだが、彼等が部屋に入ったと同時に立ち上がろうとしたのか、男性は膝を机にぶつけた様だ。場には何とも言い難い雰囲気が満ちている。


「……あの、若。アタイはどうしようか?戻ってもいいかい?」


「あ、『グローネ』。戻って貰って大丈夫。ありがとうね。」


「あいよ、気にしないでおくれ。」


リヴァル達が来るまで接待をしていた『グローネ』とは、赤髪をショートにした人族の女性。身長は160程で見た目は20代後半だが今年38になる。女豹を思わせる肢体に鋭い眼付きと勝気な性格で、村の女連中では筆頭の立場だ。特に特徴的なのは『隻腕』で有る事だろう。『大戦』時に左腕を失われたが、実力は村で上位に入る。魔力は平均より少し多い程度だが、召喚契約は済ませており、特化魔力は『風』。両腕が健在で有れば村人最強は彼女だったと言われている。そして、ライオスの妻でも在り尻に敷いているとか。


彼女が、今回ギルドの接待をしていたのは、彼等が雇ったと思わしき護衛の人達を『強者』と判断したからだろう。そうでなければカナリア辺りに頼むはずだ。間違っても彼女は接待に向いている性格じゃない。


「んっん〜、コホン。……失礼しました。……私の名前は『クオン』と申します。後ろの彼女は『ケイネ』。本日は御時間を頂きありがとうございます。私どもは『冒険者ギルド』の代表として、この村と『交渉』がしたくやってまいりました……ククク「代表、また出てますよ?」……失礼、どうやら癖の様でして聞かなかった事にして頂きたい……ククク「代表?」……。」


(……何か変なのが来たな。……ケイネさんは既に疲れきってるし。大丈夫か?この人達。)


『クオン』と名乗った男性は、黒髪を肩まで伸ばしているのだが、前髪も同じ位長く右目は完全に隠れている。顔色は青白く病人の様だ。見た目の年齢は30程だろうか、亜人族の特徴は無いので人族だろう。全身から何やら暗いオーラを放っている。


対して『ケイネ』と紹介された女性は、金色の髪を背中まで伸ばし、両端を三つ編みにして前に垂らしている。見た目の年齢は20歳程の人族。今は疲れきった顔をしているが、本来は元気な性格なのだろう事は、大きな瞳と雰囲気で察せる。リヴァル達が到着して、既に4度目の溜息に差し掛かっていた。


「初めまして。この村の代表の一人でリヴァルと申します。後ろの者はライオス、この村で重要な役割をになっている者です。本来は、もう一人代表がいるのですが、今は諸用で外しておりまして私達のみとなります。

……後、ケイネさん。癖ならば仕方ありません、御気になさらず。……それで『交渉』とはどういった事でしょうか?」


明らかに安堵した様子を見せるケイネを視界の端に収め、ギルドの代表が村に訪れた目的について聞いた。


「ありがとうございます。交渉と言いましょうか……単刀直入に申しまして。この村にギルドの支部を作る許可を頂きたいのです……ククク。」


(やっぱりか……後はこちらの情報とあちらの持つ情報との食い違いが在るかどうか。それに、他にも何か理由が有るのかもしれないし。少し揺さぶるか?)


「それは……どういった理由で?この村にこれといった名産がある訳ではありません。そもそも辺境にあるので、人の出入りも多いと云う訳ではありません。魔獣はいますが、対処できない程でもない。支部を建てる程の事は無いと思うのですが。……何か『特別な』理由がお有りで?」


「ふむ……ククク。確かに、『特別な』理由に成るかと思います。最近、獣王の森に関してある噂が流れておりまして。リヴァル殿も『ご存知』かと思いますが……ククク。最近この村に冒険者が良く出入りしておりませんか?」


「はて?……確かに冒険者は出入りしていますね。彼等が『死竜山脈』の方へ向かっている事は聞いております。それで、最近流れている噂と言うと?特別な理由とはどういったものでしょか?この村に何か関わりが?」


「……ククク。何、それ程大した理由ではありませんよ。噂の方も、獣王の森に『珍しい魔獣』が居るかもしれないという程です……ククク。それに惹かれた冒険者が、この村に多数出入りする可能性が有ると云う事です……ククク。」


「……可能性だけで、このような辺境の村に作ると云うのは些か早計ではないですか?それに所詮は噂、それを信じるに値する『何か』が在るのでしょか?……この村にギルドを『建てなければならない』程の。」


「……ククク、クハハハ♪「クオン殿?」クク失、礼……ククク。……失礼しました。中々聡い方のようですね。「代表!?」……良いではありませんかケイネさん。このままでは支部を作るのに協力して頂けないかもしれませんよ?「しかし……」それに、元々私はこのような『騙す』やり方は反対だったのですよ……ククク。」


(……急に笑い出してどうしたんだ?何か予想してたのと違うのが釣れたか?内輪揉めしてるし、それに……)


「……『騙す』とは、穏やかではありませんね。どういった事でしょうか?クオン殿。」


「……ククク。申し訳ありません。御察しの通り、この村にギルドを建てなければならない『理由』ができましてね。その前に……ククク。リヴァル殿は噂に関してどの程度知っておられますか?……あぁ、これからは、私の知っている情報で許される限りは話しますので……ククク。信じて頂けませんか?……ククク。」


(何だ?急に友好的に成ってきたな。……何か勘違いされている様な気もしなくはないが、乗ってみるか?)


「……私の知っている情報は、そう多くありませんよ。『黄金の獣』『上位冒険者』それに……『北方の民』「っ!?」……位です。ケイネさん、何か?」


(ケイネさんは明らかに動揺しているな、クオン殿は……何だ?何で満面の笑?意味が分からん。)


「……ククク。ほらね?ケイネさん。では、次に私の知っている情報なのですが、リヴァル殿が知っている情報とそう変わる物では「構いません。順序立ててお願いします。」判りました……ククク。


先ずは『黄金の獣』についてですが、これは大体3ヶ月程前から噂されたと、ギルドでは予想しています。まぁ噂の正確な時期など分かろうはずもありませんしね……ククク。そして、その頃から何組かの冒険者チームの消息が絶たれています。冒険者には当然危険もあるので、これに関係していないとも十分考えられますが。問題は全てのチームが薬草採取に関しての依頼を受けていたと云う点です……ククク。更にこの薬草ですが、全て獣王の森でも『採れる』事は確認されています。


……ギルドが噂に気がついたのは、『上位冒険者』のチームが消息を絶たれてからですね……ククク。言い方は悪いですが、中位から下位の冒険者が命を絶つ事は珍しくありませんので。その冒険者が消息を絶つ前に受けていたのが、獣王の森で比較的浅い位置に生る薬草の採取です。明らかに可笑しいと気づいたギルドが、情報収集を行った結果が先の話しとなります……ククク。更に、最近……一月程前ですか、別の上位チームに獣王の森の調査を依頼したのですが……未だ戻って来ていません。


『北方の民』については、本当につい最近知りました……ククク。まぁこれが、この村にギルドの支部を作る原因となりますね。当然これから増えるだろう、森に潜る冒険者に対する計らいもありますし、情報を素早く収集する目的『でも』あります。……後は言わずとも解っている通りかと……ククク。」


(上位冒険者は二組も消息を絶っていたのか……それに他にも大勢いると云う話しだ。理由に関して十分理解できる……最後の、当然知ってるかの言い方は完全に勘違いしているな。……クオン殿は『騙す』と言った。それは、この村に利益以外にも『不利益』が在ると云う事だろう。と云う事は……!?)


「……この村を、最悪の場合は『防衛線』として使うおつもりで?」


「っ!?若……そいつぁ……本当ですかぃ?」


「やはりお気づきに成られていましたか……ククク。普通、村にギルドの支部を作るのに否定する方は居られませんからね。居るとしたら何かしらの不利益に気づく方です……ククク。それで、如何ですか?ギルドの支部をこの村に作らせて頂けませんか?……ククク。」


「……。」


(ギルド側は既に、獣王の森を調査するつもりでいるんだろう。冒険者を止めることはできないんだ。其れくらいは当然行う。支部を作っても作らなくても、村は常に危険を孕む場所となる……今は未だ、被害は獣王の森を出ていない。しかし、これから先冒険者が荒らす事となったら、どうなるか解らないのだから。良い案が思いつかない。……どうする?)


「……代表同士の話し合いの中ぁ口ぃ挟んで申し訳ありやせん。ここにいる若……リヴァル様、以外にもう一人代表がいるんでさぁ。話しぁ明日に持ち越して頂けねぇでしょうか?ここぉ使って頂いて構いやせんので。」


(……そうだった、セイラにも相談しないと。……冷静を欠いてたな。ライオスには後で御礼言っとこう。)


「あぁ、最初にその様な事をおっしゃってましたね……ククク。構いませんよ、元々こちらから頼んでいるのですから。十分に相談して結論を出してください……ククク。」


ライオスの機転により、話しは一旦明日に持ち越しとなった。彼等も泊まる道具を取ってくるのだろう、共に家を出る。


「本日は、急な訪問にも関わらず、話を聞いて頂きありがとうございました……ククク。明日は良い返事を頂けることを祈っておりま「あれ?『グアン』じゃない。何でこの村にいるのよ?」っっ!?ら、ららら、ラーナ、さん?」


家を出て、別れの挨拶を行っている時、偶々通りかかったらしいラーナがクオンに向かって声を掛けた。どうやらこの二人は知り合いらしく、ケイネを含めた三人はクオンの狼狽ぶりに驚いている。


「……ラーナ?『クオン』殿と知り合いなの?」


「ええ、『グアン』とは冒険者として生活してた時に、タクト商業国の主都で会ったのよ。……何でここに『グアン』がいるの?」


「……彼は、この村にギルドを建てたいと代表として交渉しに来られたんだよ。……さっきから何で『グアン』って呼んでるの?『クオン』と言う名前だと聞いたんだけど。」


初めは聞き間違いかと思ったが、ラーナは変わらず『クオン』を『グアン』と呼んでいる。愛称とは、また違う含みを感じ、本人に確かめる事とした。


「へぇ〜。この村にギルドを?呼び名に関してはね「ら、ラーナさん。」……何よ?今話してる途中何だけど。」


(……何だ?村の外では何時もこんな対応なのかラーナは?……知ってはいたけどキツイ性格だな。まぁ、それはセイラ譲りか。)


「ラーナさんは、どうしてこの村に?……ク「変な笑いしたら『また』蹴っ飛ばすわよ?」……。」


「はぁ、この村はね、私の故郷よ「っ!?」……何そんなに驚いてるのよ?悪い?」


「えっと……ク「ん〜?」……悪く、ないです。」


(何だこれ……)


「「はぁぁ〜。」」


先程までの余裕が嘘の様になくなっているクオンと、一瞬で空気を変えたラーナの遣り取りを見て、この先の問題について深い深い溜息を吐くこととなった。


(……やはり気が合いそうだ。)


1話では書ききれなかった。申し訳ないです。


どうにも説明臭くなりますね。勢いも無いし。


さて、そろそろかな?


書き方を少しづつ変えているのだけど、どうだろうか……


次か、その次辺りで戦闘入れれるかな?

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