プロローグ
遥か昔、エルイムナ大陸は魔法文明が栄え、そして、争いが絶えなかった。
増え過ぎた人族は、食料を求めて国家同士で争い、森に住むエルフ族、獣人族から食料を奪った。
山々では優秀な鍛冶師が多いドワーフ族を襲い、戦争のために武具を作らせた。
争い事を好まず、自然と共に穏やかに暮らしていたホビット族、翼人族は奴隷として捕らえられ戦争に駆り出された。
最後の一人まで抵抗した魚人族は虐殺され、その血を途絶えさせた。
空の覇者であった竜族も、増え過ぎた人族と強力な魔法により、急速に数を減らしていった。
その事に嘆き、苦心の末、人族でありながら人族を滅ぼそうとした者がいた。
其の者は、エルイムナ大陸とも精霊界とも違う世界から様々な化物を召喚し、契約を行い、使役した。
其の者は、使役した化物と共に、そして信頼する白銀の騎士と共に、各国を滅ぼしていった。
人族の王は恐怖した。見た事も無い化物達が襲ってくるさまを見て。
民は恐怖した、家族が目の前で食される様を見て。
精霊達は恐怖した。化物の中には自分達を殺し得る存在もいたからだ。
いつしかその化物は『魔獣』と呼び恐れられた。
各国の王達は休戦を結び、強力して其の者と戦った。
戦争は300年にも長きに続いた。各国は戦争が始まって100年で優秀な戦士を多く減らした事に焦った。
王達は様々な対策を行なったが、戦線は徐々に押され始めていた。
戦争が始まって200年。魔法使い達は協力し、其の者とは違う異界から化物を召喚しようと考え、城の地下深くに召喚陣を描き実行した。化物同士で戦わせようと考えたのだ。
しかし、その目論見は崩れ去った。召喚した化物は敵味方区別無く攻撃を加えたのだ。
王達は考えた。魔法使い達は考えた。
しかし、すぐに現状を打開させる様な良策は浮かばず、兵の育成を行うようになった。
各国の魔法使い達は強力し、兵を育成するため国近くの地下に訓練場を作った。
そして、そこに化物が召喚されるよう召喚陣を書き換えた。地下へ進む程強力な化物が配置されるように。
そして、一定以上化物を倒した時、魔道具を送られるようにし、それを訓練終了の証明とした。
この策は想像以上にうまくいった。育成された兵は前線へと送られ多くの魔獣を討ち取った。
戦争が始まって300年。人族と其の者の力は拮抗した。互いに殺し殺されを繰り返し。多くの国と人、精霊達が土へと帰っていった。
人族は最後の戦に赴いた。この時には既に3カ国しか残って居らず王の血も絶え、国として機能していなかった。
しかし、其の者は攻撃を止める事は無かった。森は焼け落ち、荒野が広がる世界では3カ国でも多いと考えたからだ。
人族は200年、300年でも数を大きく増やすことができる。
しかし、この荒れ果てた大地は200年、300年では元には戻らないのだから。
最後の戦いは熾烈を極めた。各国に残った戦士は八割は倒れた。
白銀の騎士は最後まで人族と戦った。だが、遂には人族の若い兵士に首を貫かれ膝をついた。
最後の一人となった其の者も戦った。手足に『魔獣』を絡みつかせ戦い抜いた。
腕を飛ばされようと戦った、足を飛ばされようと戦った。そして最後には体中を槍に貫かれ、死に絶えた。
戦争は人族の勝利に終わった。
しかし、後に残ったのは1000人にも満たない人族、各100人程の亜人族、
そして荒れ果てた大地のみとなった。
互の種族は協力し合った。心に思う所が無いわけではない。しかし、生きるために協力し合った。
住む場所を大陸の南へと移した。
最後の戦をした場所であるが、自分達の居た最北よりは緑が残っていたからだ。
互いに協力仕合い、向かっていく先には、其の者が居住としていた城があった。
瓦礫が至る所に落ちている廃墟には二人の人族が眠っている。
死した白銀の騎士の顔には笑顔があった。其の者と最後までいることができたからだ。
死した白銀の騎士の眼には涙があった。本当は二人で穏やかに暮らしたかったからだ。
死した其の者の顔には笑顔があった。目的は果たしたからだ。
死した其の者の眼には涙があった。本当は人族を愛していたからだ。
300年間続いた戦争は終わった。この大戦期を生き抜けた人々は、其の者と白銀の騎士に畏怖を込めてこう呼んだ。
『魔獣』を使役する王、すなわち【魔王】
白銀の武具に包まれ、『魔獣』と共に幾多の戦士を討った騎士【魔騎士】 と。
白銀の武具は、大戦期を忘れぬよう、戒めとして代々受け継がれていった。
そして、最北にある。既に廃墟となった城の地下。
今も爛々と輝く魔法陣は、死した魔法使いの血によって、少しの影響を受け機能し続ける。
物語は、大戦期から8000年後に続く。
初投稿です。小説を書いた事など無いので至らない点も多くありますが、よろしくお願いします。
ちなみにこのプロローグ本編にかすりもしないかもしれないのであしからず。