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10話 堅いガラス

堅いガラス


 春男の家に行くと、部屋にでっかいダンボール箱が置いてあった。きれいにたたんである。

「春男、なんだ、これ。」

「ああ、これ、テレビが入ってたんだ。そのダンボール箱は今度のゴミの日に出すんだよ。」

「テレビ?」

 部屋の中を見渡すと確かにテレビがある。薄い形の最新型のものだ。いままでテレビなどなかった。

「買ったのか?」

 オレはあたりまえのことを無意識に言った。

「うん。それでね、今度お墓の話を書こうと思うんだ。」

 春男はさらりと言った。

「は?」

 すっきょうとな声を上げたのも無理はないと思う。みると、そこにはいつもの笑顔があった。

「お墓?って、あのお墓?」

 ほかにどんなお墓があるというのだろう。

「そうだよ。知っていたかい?お墓って、いっきって数えるんだよ。最近始めて知ったよ。」

「いや、それよりも、なんでお墓なんだ?どんな話を?ホラーか?サスペンスか?」

「ううん。SFなんだ。未来の話なんだよ。」

「それで、なんでお墓の話を思いついたんだ?」

「テレビでやっていたから。」

 テレビを買って、最初にみた番組にお墓が出てくるとは、どんな話だったのか。

「つまり、未来のお墓の形を書くのか?」

「いいと思わない?」

 オレはいろいろ考えてみた。いったいどんな形なのか思いつかない。そもそも形があるかも不明だ。

「どんな形のを考えているんだ?」

「強化ガラスに入っているんだ。」

「強化ガラス?」

「そう。震災が来ても大丈夫なお墓。」

 どうやら、春男が見たのはニュースらしい。そのときに、色々な人の骨が混ざってしまうのが気になったようだ。

「絶対に割れないガラス。どぉ?」

「まぁ、未来にはできているかもしれないが……。」

しかし、気になるのは誰が未来のお墓の話など読みたくなるのだろうかということだ。

「ただねぇ……。」

春男はいつになく渋そうな顔をした。

「なんだ?」

「割れないガラスはいいんだけど、どうやって骨を入れるかが問題なんだよねぇ。」

「まだ、あるぞ。」

 オレは付け加えた。

「そんなことをしたら、いつまでも骨があり続けるじゃないか。」

「あっちゃいけないの?」

「骨が増えていく一方になるじゃないか。」

「ああ、そっか。どうしようかなぁ。」

 オレは、ひさしぶりに春男が悩んでいるのを見たような気がする。しかし、悩んでいる内容が、お墓のこととはあまり人には言えない。

オレはため息をついて、新しいテレビを見つめた。


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