5話 最新の機械
最新の機械
「やっぱり、夏はクーラーだな。」
春男の家の中は涼しかった。春男の家に来るまでにかいた汗がすっと消えていくほどの涼しさだった。外から入ってくるとよくわかる。
ずっと、パソコンをつけていて、その前にいるせいか春男自身はそんなに涼しいとは感じていないようだ。
この間、机の上にあった雑誌はとっくに本棚に整頓されていた。しかし、そろそろ、資料が多すぎて、一つの本棚では足りなさそうだ。かといって、もう一つ本棚を置くスペースは引っ越しでもしない限り、ない。
「最近のパソコンっていろいろできてすごいよねー。」
春男は感心するように言っているが、オレはいままで知らなかったことのほうが不思議だった。もしかして、パソコンでテレビが見られると知らなかったからテレビを買ったのだろうか。
春男は最近、パソコンをついに買い換えた。前のが古すぎたのだ。新しいパソコンを買うために持ってきたカタログも本棚に収められていた。しかし、カタログはいつも最新のものでないと役に立たない気がするが、オレはあえて言わないことにした。
「そうだな。それで、今度は電気の話か?それとも、一人暮らしの生活でも書くのか?」
オレは机の上にあるカタログを見て言った。どうみても、電化製品ばかりだ。
「あー、それはね、おやじがひそかに欲しがっている掃除機があるんだ。」
「掃除機?」
春男の親父さんの趣味は主婦だ。しかし、妻には秘密らしい。そのほうが家庭は円満そうだ。ちょこちょこ、春男の家に来ては部屋をきれいにしているようだ。今日も部屋はきれいだから。
「うん。家のなかを勝手にくるくる回るやつ。そんなのがあることさえも知らなかったよ。」
「お前、もうちょっと出かけた方がいいぞ。外のことも見ておかないと時代に取り残されるからな。それでなにか買ったのか?」
辺りを見回しても、なにも新しいものはない。
「ううん。この間きて、お金とそのカタログを置いていった。」
「置いていった?おやじさんが?自分で買わないのか?」
「うん。僕が送ることになっているんだ。母の日のプレゼントに。本当に欲しいのはおやじの方なんだけど。」
「策略家だな。大丈夫なのか?」
「だって、僕が母さんに楽をしてもらおうと、贈るもんだから。おやじも使用許可をだすことになる。そこが本人のねらいでもあるみたいなんだけど。」
春男は一人でニヤニヤしながら言った。
「じゃ、別に機械の話を書くわけじゃないんだな。」
「うん。今度の話は、米びつの話。」
米びつ?オレには思い当たることがあった。
「まて!それは、オレがこの間、いとこの結婚祝いに贈った話を基本にしているのか?」
「あたりー。」
「おい!誰が今時、米びつの話なんか読みたがるか!それだったら、まだ最新機械の紹介の方がましだ!」
この間、オレのいとこが結婚した。式には忙しくて行けなかったので、結婚祝いを贈ることにした。メールで何がいいかと聞いたら、米びつがないから欲しいというのでそれを贈ることにした。
ところが、最近の米びつは台所にすでに設置されているのが主流で、それ本体だけが売っていることが少なくなっていて、探すのが大変だったという話を春男にした。
「大丈夫、昔の話だから。」
「そういう問題じゃない!売れなくても知らないぞ!」
オレは怒鳴りつけた。しかし、春男はオレのことなどほっといて、作品を打っている。この原稿が終ったら絶対に止めようと再び誓った。




