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45話 地震

 地震


 地震が起こったその時、オレは帰宅途中で小走りだったせいか、なんとなくしか感じなかったが、後から人に聞くとかなり揺れたらしい。震度五近くだったそうだ。しかし、オレがその事に気がついたのは、家に帰ってテレビをつけてからだった。

 ニュース速報が流れ、やっと地震があったことを知った。なるほど、周りを見渡せば、積んであった本が崩れている。しかし、もともときれいな部屋ではないので一目では分りにくい。

 そのあとすぐに、春男からメールが入った。地震後にしては早いほうだった気がする。

『紙に埋もれた。助けに来て』

 何をバカな話だと最初は思ったが、よく考えてみると春男の家は紙だらけだ。書類やら、資料やら、わけのわからない魔よけもたくさん飾ってある。しばらく考えて、春男の家に向かった。万が一と言うこともある。なんてオレは心配性なのだろう!

すると、春男のアパートには電気がついていて、しかも、ドアが開いていた。中を覗きこむと髪の長い人の後ろ姿が見える。ついでになにやら、話し声まで聞こえる。

「あのー。」

 オレはおそるおそる声をかけた。誰だろう。

「あ、こんにちは。」

 二人が振り向いて、オレに声をかけてきたのは、春男の隣の家の子だ。彩ちゃんといったはずだ。じゃ、隣にいるのは母親だ。なんせ、前に一度みただけなので、記憶がはっきりしていなかった。

「あ、こんにちは。隣の者のですが。いえ、隣からかなり大きい音がしたものですから、気になって。」

 その母親はいった。向こうもオレのことは覚えていなかったようだ。

しかし、部屋の中に入ってみると、お隣さんがのぞいてみたのもよくわかる。机の上の棚の資料はほとんど落ちていて、後ろにあった本棚の資料も半分以上落ちている。足の踏み場を確保するのも大変だ。ところが、本人の姿が見えない。

「あの、春男は?」

「助けてー。」

 どこからとももなく、声がしてきた。声のした下の方のぞき込むと、春男は机の下にいた。地震の時は机の下という判断は間違っていなかったが、その入り口を紙でふさがれるとは思っていなかったようだ。

 隣の母親は段ボール箱を持ってきた。そして、そこに資料を入れるという作業が始まったのだ。

 整頓は後で。とにかく春男を机の下から出す方が先決だ。紙の束をどんどん片付けながら積んでいった。

 すると、電話が鳴った。家の電話だ。

「春男、出るぞ。」

 許可を取ってから出てみると、春男のお父さんだった。

「はい。ああ、どうも。担当の佐々木です。いつもお世話になっています。え、ええ。ちょっと紙に埋まっていますけど、けがはないようです、はい。それじゃ。」

 オレは電話を切った。

「春男のお父さんからだ。大丈夫かと聞くんで、一応平気だと言っておいたからな。」

「わかった。」

「作家さんなんだって。」

 彩ちゃんがお母さんに説明していた。

「こいつの担当の佐々木洋介です。初めまして。」

 ついでに、挨拶も行われた。これで、オレと春男の関するお母さんの誤解も解けたと良いのだが。

 段ボールが三つ重なったところでようやく春男が出てきた。

「ああ、大変だった。ありがとうございました。」

 春男が出てきたので、隣の親子は帰って行ったが、オレはこの先の整頓をやり直すのかと思ったら、なんだか、お先が真っ暗に見えた。


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