43話 魔よけ
魔よけ
春男の家はよくわからないものが、部屋のあっちこっちに画鋲でぶら下がっている。人形やら、怪しげなものから、よくわからないものから。
いや、おそらくそれぞれに意味はあるのだろうが、こんなにたくさん、それも宗派の違いそうなものがいっぱいあっていいのだろうか。オレはちょっと、春男の家に来るたびに気にしていた。おそらく、春男自身は全然気にしないだろう。
日本のものだけではなく、外国の土産売り場でしか見かけないようなものまである。自分は出かけないのに、どうしてその土地のお守りがあるのか。それは春男の母親からの贈り物だとついこの間、判明した。
春男の家でインターホンが鳴った。オレが出てみるとなにやら、荷物。ところで、春男のハンコは玄関に置いてある。危ないからといつも言っているのだが、直りはしない。
「春男、荷物だぞ。お母さんからだぞ。」
「あけてみてー。」
パソコンに夢中で向かっている春男を止めさせるのも、どうだろう。というわけで、オレがさっそく開けてみると、食料と同時に、置物が入っていた。次々に出してみる。
「なんだ、これ。」
置物だけではない、お守りや、ストラップなど大量に入っている。全部お守りや、魔よけだ。
それで、判明した。だから春男の家には変わったものが多く置いてあったのだと。コップまで入っている。どうりで統一感のない食器がたまにあると思ったら。
整頓好きな春男のお父さんもさすがに、ここまでは口を出せなかったようだ。そりゃ、自分のほれ込んでいる妻だからな。文句も言えないだろう。
やっと、調子のよかった部分が終ったのか、春男もこっちに興味を示した。
「今回も、いろいろ来たねぇ。こういう、いろんなものをくれるのは母さんなんだよ。父さんは一つのものをまとめてくれる。父さんはおじいさんに似ているんだよねぇ。田舎から何か来る時も、同じような傾向があるんだ。」
春男自身はどうなのだろう。
「お前はどうなんだ?」
「僕?さぁ。結婚でもしてみないとわからないね。妹は母さんに似ているけど。」
「お前の母さん、いま、どこにいるんだ?」
「どこだっけかなぁ。あんまり興味がないんだよね。さて、これは、どこに飾ろうかなぁ。」
春男は部屋の中を見渡した。もうすでに置物でいっぱいだ。地震があったらかなり危ないんじゃないかと思う。救いはそんなに重たい物ではないことだろうか。落ちてきてもけがをすることはなさそうだ。
そんなことをいうと、春男はため息混じりに言った。
「最初はしまっておいたんだけど、母さんがここにきた時に何も飾っておかなかったら、怒り出しちゃってね。それ以来、とりあえず、飾ってあるんだよ。」
そう春男は言いながら、今日来た新しい分を部屋に置いた。それにしても、普通お守りというものは一年に一度、取り替えるものではないだろうか。春男の家では増えていく一方のような気がする。
すっかり壁は魔よけだらけだ。
「誰かにあげるわけにも行かないし、勝手に捨ててもいいものか迷うし。送ってき続けるから、増えていくんだよねぇ。それに、これらの掃除が結構面倒なんだ。で、今度、古いものからまとめて倉庫に持っていこうと思うんだ。」
「大丈夫なのか、そんなことをして。」
「資料も大事だ。それが入っている倉庫にも魔よけがあったって問題はないだろう。」
春男はそう言っているが、本当のところ、この数の魔よけをどうにかしたいだけじゃないだろうか。それにしても、こんなにたくさん必要なほど、春男になにかあるというのか。
どうも、春男のお母さんの思考はいまだに、よくわからない。




