41話 クリスマス
クリスマス
オレはため息をついた。
本日は、クリスマスイブだというのに、会社からの帰りに一人寂しく歩いていた。
それも土曜日と重なっているせいか、すっかり暗くなった道に一人で歩いているやつなんて見当たらない。カップルばかりだ。
なんとなく、町の明るさが悲しい。オレにだけか?
そんななか、俺がどこに向かっているかといえば、当然のように春男の家に向かっていた。暇なら来いとメールが来たからだ。見栄を張って予定があると言いたかったが、あいつの家の料理には勝てない。
手ぶらで行くのも、なんなんで、オレは春男の分だけアイスクリームを買って、家に向かった。普通なら酒でも買っていくものだが、春男は酒は飲まない。せいぜい料理に使うくらいだ。酒はオレの分だけでいい。
「よぉ。これ、土産。冷凍庫くらいはあいているだろう。」
「うーん。大丈夫、このサイズなら入る。」
冷凍庫もいっぱい、いっぱいのようだ。
春男がにこやかに迎え入れてくれた。机の上にはのりきらないほど料理の山だった。たしかに、うまそうなのだが。春男の母親の作るものは実験的なものが多い。うまいかどうかは、その人の好みに寄ると言えるかもしれない。
「今年も、送ってきたのか?」
「ううん。朝からやってきて、大量に作って帰った。自分がうまいと思ったものだけ持って帰ったから、ちょっとは去年より少ないんだけどね。」
春男はすでにげんなりしたような顔をした。春男の母親には、作る限度というものがないのだろうか。これはどうみても、一人で食べきれる量じゃない。これで、減ったとは、最初はどれだけあったというのか、想像したくない。
「おすそ分けは?」
「済んだ。」
こっくりと春男は頷いた。よくみると、確かに減っている部分がある。
お裾分けして、この量かとオレは思った。だから、春男が太るのだと。作家になって、ただでさえ家が好きなのに、それが悪化したかのようにめったに家から出なくなってしまった。それなのに、これだけの量を食べれば太るはずだ。
とりあえず、テレビをつけながら、食べ始めた。しかし、しょっちゅう春男の家に入り浸っているせいか、改めて話すことは何もない。ひたすら、たわいもない会話をしながら二人でもくもくと食べていた。
春男は先に少し食べていたようで、そんなに大量には食べなかった。オレの方は、酒も入れば、多少は会社の愚痴も入る。しかし、食べるにも限界というものがある。
「もう、駄目だ、これ以上は入らない。」
俺は悲痛な面持ちでいった。本当に、お腹がいっぱいだった。それでも、かなり食べた方だと思う。
「えー。もっと食べてよ。」
「無理。」
オレは言い切った。
結局、春男はそれでも、オレに明日の朝ご飯分をタッパーにつめて渡した。オレはおなかいっぱいの状態で帰りながら考えていた。
来年こそは、彼女を作って春男の家には行かないでおこう。確かに、食事はおいしい。しかし、量が多すぎる。地獄に近い。そんなことを考えながらふらふらと歩きつづけた。
「忘れ物だぞ。」
春男が走ってきた。なにやら、手に持っている。なぜか嫌な予感がした。
「明日のおやつ分も持って帰ってくれ。」




