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39話 同級生

同級生


 冬と言えば鍋だろう。しかし、一人では寂しかったのか、高校時代の友人がひさしぶりに声をかけてきた。

「みんなで、鍋をしないか?」

 高校時代で連絡をとっているのは、彼と春男くらいだ。大学の時の友人もそんなにいない。

 高校時代の顔見知りなので、春男にも来ないかと声をかけたが、いつもの返事で断られた。

「面倒だからいいや。」

 いつか、春男の友人は誰もいなくなるのじゃないかとオレは結構本気で思っている。いま、現在、誰がいるといわれてもわからないが。

 オレと春男の友人はほとんど重ならない。共通の友人なんて、誰かいただろうか。それなのに、なんでオレが春男と仲がいいのか、オレにもよくわからない。

 オレだけで、出かけることにした。みんな、高校の時の同級生だ。顔は当然老けたものの、基本的性格は変わってないようだ。

 みんなで鍋を囲みながら、それぞれの仕事の話になった。一人はサラリーマン、他は銀行員、機械技術者になっていた。オレは編集社員になったことと、春男のことを話した。

「ああ、あいつと一緒に仕事してんの?」

と、全員が目を丸くした。

「あの、変わり者と?いま、どうなっていることやらって感じだな。」

「中学の時のあだ名、知っているか?図書室の住人って言われていたぞ。本ばっかり読んでたからなぁ。」

 オレのほかに集まった三人もみんな、春男のことは覚えていたようだ。一人は中学から一緒だったやつだ。人の記憶力とは恐ろしい。

「みんな、よく覚えているなぁ。」

 オレは感心さえしていた。

「ああ、変わっていたからなぁ。覚えているか?高校の時、あいつだけマラソン大会走らなかったんだぞ。みんなと一緒が嫌だって。」

「あれは、名物といっても過言じゃないよ。まぁ、目立った奴だったからな。知らない奴の方が珍しいくらいだよ。高校の頃は髪がちょっと長かったせいかもしれないけど。」

「中学の時は、別に格好とかが目立つやつじゃなかったけど、なんとなく存在感があったな。ひそかに、結構いじめられていたらしいし。」

 これだけ春男が人の記憶に残っているとは思わなかった。そんなに目立っていただろうか?

 ところが。

「本?書いているの?今?知らんなぁ。」

「俺も。読んだことないなぁ。面白いのか?」

「僕も読んだことないけど、僕の彼女は読んでいるみたいだったよ。本棚に並んでいたのを見たことがある。変わったタイトルばっかりだったから、記憶に残っているんだ。」

 そこから話は最後のやつの彼女の話に移っていった。一人は結婚して子供もいる。

 みんなの記憶にあるのは学生時代の春男で、いま、作家をしていることは誰も知らなかった。ペンネームの春男というのさえも知られていない。逆に誰か、知っている人はいるんだろうか。

 ちょっとはこういうみんながあつまるような場所に出て、作品の紹介でもすれば、本がもっと売れるかもしれないのに、とオレは考えた。でも、オレがそう提案しても春男の場合は面倒だからと答えてしないだろうけど。鍋はうまかった。

「またなー。」

 酒は少ししか飲まなかったが、駅から家まで歩くのに十分体をあったかくさせていた。そんなに酒に強くないから、量が少なくてこれだけ暖かいというのは安上がりだろう。ひさしぶりに同級生に会って、嬉しかった。今度は春男も宣伝がてら、引っ張っていこうとなんとなく考えていた。


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