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34話 休日に

 休日に


 秋は芸術の季節。誰が言ったか知らん。興味もない。だが、勝手に決めないでもらいたいものだ。その言葉は、春男には大きな影響を及ぼしていた。

 事の起こりは、会社の人がチケットをくれたことから始まる。美術展のものだった。詳しくは知らないが、有名なものらしい。そういえば、春男がなにやら大騒ぎしていたな、と思った。

 オレは興味はなかったが、美術系には春男が興味を持っている。そのまま、ありがたく貰って、春男の所へ持って行った。彼女でもいれば、彼女とでも行くのに。

 すると、春男は喜んだ。

「ありがとう。本当に貰っていいの?まだ、これには行ってなかったんだよねぇ。チケットが無くってさぁ。行きたかったんだ。」

「良かったな。」

 そして、チケットに書かれていた説明を読むと言った。

「じゃ、一緒に行こう。」

「は?」

 オレは無意識に聞き返していた。

「このチケット、一枚で二人まで無料だよ。今度の休み、いつ?芸術の秋って言うし、たまには見ておけば?いいこともあるかもしれないし。」

 いいこと?春男にあっても、オレには絶対にない。

 しかし、その誘いを断れるような用事が休日に何もなかった。そして、当日がやってきた。

「なんで、休日に男二人で美術みに来るんだよ・・・・・・。なさけない。」

 オレはぶちぶちと文句を言ったが、意外にも学生世代では男性同士も多い。オレは少し、ほっとした。浮かなくてすむ。一方、春男は全然気にしていないようだ。

「人気だねぇ。」

 たしかに、入るまでに並ぶというのは人気がある証拠かもしれない。美術の教科書の中で見たことがある絵があるのかしれない。

受付にチケットを出すと、受付嬢がにっこり笑って、あいさつした。かなりの美人だ。

「あら、こんにちは。今回は遅かったですね。」

 その挨拶は、オレにではなく、春男に向けて言われたものだった。

「こんにちは。そうなんです。こられないかと思ってたんですけど。今日は友人ときたんです。」

 春男もにっこりと笑って、返事をして、さっさと奥へと入っていった。慌ててオレは、その受付嬢に会釈だけして春男を追いかけた。

「知り合いか?」

 オレはもう見えなくなった受付の方を見つめた。

「ん?受付の人?なにか、新しい展示会がやっているたびに僕がここに来ているからじゃない?きっと覚えたんだよ。」

「きれいな人だったなぁ。」

 オレはにんまりと笑った。が、次の瞬間。

「そうだった?あ、それにしても大きな絵だねぇ。どのくらい絵の具使っているんだろうね。」

 大きな絵の前で春男が言った。

 オレは愕然とした。こいつはこんなやつだったのか?

 美人をそうだっけ?の言葉で片付けた。そして、美術館に来て絵のすばらしさでもなく、美しさでもなく、画法でもなく、絵の具?こいつの美しさの基準は一体、どうなっているんだろうか? 

 ここが美術館じゃなかったら、絶対に怒鳴りつけていたに違いない。こいつといると、絶対にオレの健康上良くない!絶対にこいつとは出かけないぞ!オレは心の隅で固く誓った。


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