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33話 やけど

 やけど


 春男がやけどした。魚をあげていて、油がはねたらしい。そうメールをもらったときは、そんなに心配していなかったが、実際作品を取りに行って、ついでに見たら結構大きな水ぶくれができていた。

「さっさと病院行ってこいよ!」

「だって嫌いなんだ。」

 痛みはないようだし、仕事にも支障はないようだ。しかし。

「そういう問題じゃない、行け!」

 オレは怒鳴りつけた。もともと、春男は病院嫌いだったが入院してから余計に嫌いになったようだ。まぁ、好きな人もいないだろうが。

 やけどだろうが、なんだろうが、仕事に影響しなければいいというものではない。

 朝から春男を追い出して、オレはそのまま春男の家に居座り続け、ちゃんと治療してあるかを見てから帰ることにした。さぼって帰ってこないように。

 それにしても、朝から行ったのに帰ってきたのは昼近かった。オレは勝手に春男の家の冷蔵庫を開けて、昼食を食べ終わっていた頃に、帰ってきた。

「おかえり。時間はかかったな。飯、くっちまったぞ。」

「それはいいんだけど、日本はまだまだ平気だな。」

 春男の話は、本当に突拍子もない。いくらこれに慣れてもわからないものはわからない。当然だ。

「なにが、どう、平気なんだ?」

 春男も、自分の昼ご飯の用意をしながら話し始めた。

「皮膚科じゃなくって、整形外科に行ったんだ。ものすごく混んでいたよ。ま、遅くなったのをみればわかるだろうけど。」

「たしかに、遅かったな。」

 オレは時計を見上げた。

「うん。じいさん、ばあさんの嵐。ちょこちょこ、若い人が。」

「そんなにいたのか?」

 春男はご飯を食べながら、話し続けた。

「うん。席はほとんど、埋まっていた。僕の後ろで六十歳代のおばあさんが九十歳代のお母さんの元気っぷりを語っていたよ。日本は確実に老人元気大国になるね。」

 自分の頭の中に、老人が道のあっちこっちで大勢歩いているのを想像して、ちょっと怖くなった。そう考えるとまだまだ、道は老人に親切とはいえなさそうだ。

「それで、やけどのほうはどうなったんだ?」

 腕を見てみると、でっかい絆創膏が貼られている。

「これだけか?薬もないのか?」

「うん。二時間待ったのに、五分で治療が終わった。」

 オレは思った。それだけ時間があれば、何枚かは作品が描けただろうに。今度からノート型パソコンでも持たせたほうがいいだろうか。

「まぁ、お大事にな。」 

 昼ご飯をしっかり食べているところを見る限り、大丈夫と判断したので、オレはそのまま帰った。

 そのあと、数日後に春男からメールを貰った。わざわざ、その後の経過報告だ。別に要らないんだが。

 テープがかゆくて、でっかい絆創膏を取ったらしい。すると、その絆創膏をとっても治療を受けに行く前と、なにも変わっていなかったらしい。

 水膨れがよくなったわけでもなく、そのままだったそうだ。これには、さすがに春男も怒ったらしく、もうその整形外科には当分行かないと豪語していた。本当かどうかはわからない。春男の場合は行ったことを忘れてしまうことよくあるからなぁ。

 まぁ、どっちにしても病院には世話にならないことに、こしたことがない。


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