12話 秋
春男の秋
普段外に出ないのに、なぜか季節には比較的敏感な春男。秋になると、外の気温に比例してだんだんと冬支度をしていくように変わっていく。
いや、それは春男自身がそうなのではなく、主婦が趣味の春男のお父さんが気になるようだ。
まずは家の中からゆっくりとだ。
「これを見ると、秋が来たっておもうんだよなぁ。」
秋が近くなると家の窓の側に結露をとるための除湿の容器が置かれる。最初は何かと思った。オレの家にはなかったが、春男の家でこれに気がついてから、置くようになった。効果があるのかどうかは、あまりよくわからない。
「さすが、春男の親父さんだな。」
毎年、感心する。最初の時は気がつかなかったが、二年目くらいから気がつくようになった。これが、春になると、消えているのだ。消えたのに気がついたときに、オレの家のも捨てるのだ。
ベットの毛布も何枚もあったのがきれいになくなり、分厚い布団が出現する。こっちのほうが、あったかいようだ。いつでも、ふかふかなのを見ると、春男自身もこまめに干しているようだ。
「ふかふかがいいんだ。」
次に服装が替わっていく。ほとんど家の中にいるにもかかわらず、来ている服も春男のお父さんが衣替えをしてくれたようで、長袖に変わっている。そんなに分厚くはないが。
春男本人に言わせると。
「長袖は乾きにくいから部屋をあったかくして、半そでを着たいらしいんだ。」
いつだったか、そう父親に主張したそうだ。その結果、父親に電気代のかかりようと温暖化の問題について、散々言われたらしい。もうあきらめて長袖を着ている。
「乾きにくいのに。」
あきらめきってはいないようだ。
春男の父は地球にも優しいようだ。
そういえば、この時期はほとんど暖房が入っていない。窓の開け閉めくらいで気温が調節できるからだろうか。
「開けると、寒いんだけど、閉めてると日だまりで暑いんだ。」
でかけないのだから洗濯自体を減らすことにしたらしい。
「いやいや、洗濯はしろよ!」
食べ物も秋風味な物に変わる。あらためて、日本には四季があるんだなぁと感心させられるほどだ。春男は料理をする。だが、半分は父親が来て作り置きした物を温めて食べている。オレもときどき、ごちそうになる。これが結構体調に良い。
「ひとりで、たべてもつまんないしね。」
春男もそう言ってくれていることだし。そのかわり、うちの実家から送られてきた野菜をたまに春男に渡しておく。いつも貰ってばかりでは気が引けるというものだ。
「また、作っておいてくれ。」
おかげで、そんなに栄養が酷く偏った食事ばかりしないで済んでいる。
「これがいいんだよ。」
春男がうれしそうに言うのは、干しいもと栗だ。よくおやつ代わりに食べている。秋と冬の間の必需品に近い。
「やすいのは、美味しくないんだよ。」
オレには、味の差はそんなにわからない。しかし、春男にはこだわりがあるようだ。
こんな感じで春男の秋が過ぎていく。暖房機がでてくると、冬が近くなったという証拠だ。冬は冬でまた変わっていくのだ。




