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28話 入院

 入院


 春男が風邪を引いた。どうして人とずれて風邪をいつもひくのやら。今回は高熱にうなされているようだ。風邪が移るから、来ないようにと春男からメールが入った。昨日原稿を貰ったばかりなので、二週間は行くことがない。

それから、三日後、春男に具合を聞こうとメールした。なんにも返事が来ない。次の日も来ない。春男がメールの返事をよこさないなんて珍しすぎることだった。

 オレは、家で倒れてるんじゃないかと気になって家に行ってみた。チャイムを鳴らしても誰も出ない。前になにかあったときようにと渡された鍵で入ってみた。

 すると、そこには倒れた春男が……いなかった。誰もいないのだ。急に後ろでドアがいた。相手も中に人がいるとは思ってなかったらしく、驚いた声を出した。

「きゃあ……!」

 そこにいたのは、春男の妹だった。

「あの、覚えてないかもしれませんが、担当の佐々木洋介ですけど、あの、春男は?どうしたんですか?」

「ああ、前に一度、家の方にいらっしゃいましたね。覚えています。あの、本人から聞いていませんか?兄は入院したんです。」

「に、入院?なんで?」

「風邪で。」

 オレは驚いた。そんなに悪化していたとは!

「風邪で?風邪だけで?」

「ええ。ほっといたら、悪化させてしまったようで、二日前にしぶしぶ病院に行ったみたいなんです。そうしましたら、即入院が決定したんです。私は着替えを取りにきたんです。」

 話しながら、妹さんはタンスから春男の服をカバンに詰めていた。

「あの。オレも行ってもいいですか?」

「ええ、もちろん。」

 にっこりと笑うと、春男にそっくりだった。よく似ている。

 病院の名前を見て、そういえば、春男はペンネームなのだと改めて思った。普段から春男と呼んでいるので、すっかり忘れていた。

「春男。」

「よ。」

 オレは一応、ほっとした。点滴はしているものの、春男自身は元気そうだ。のんきに手を上げていた。そのうえで、オレは文句を言うことにした。

「連絡くらいよこせよ。見舞品も買ってこれないじゃないか。」

「そう思ったんだけど、電話まで行くのが面倒で。それに、この間、作品渡したばっかりだったから、連絡もこないと思ったんだよ。」

 確かに、病院じゃ携帯は使えない。連絡するには、すっかり数が少なくなった公衆電話まで行かなければならない。

「お前からメールの返事がないなんておかしいと思ったんだ。」

「お兄ちゃんの家で会ったのよ。誰かいるとは思わなかったからびっくりしたわ。」

「すみません。」

 一応、あやまった。オレも春男が、急にオレの部屋にいたときは驚いたものだ。 

「一週間くらいで退院できるみたいだから、作品には影響しないと思うよ。」

 春男はいつもと変わらない口調で言った。その言葉通り、一週間で退院した。

少しやせた春の体型は、もう一週間ですっかり元通りになった。それにしても、風邪で入院するとは。今度から、風邪を引いたらさっさと病院に行くようにすすめるようにしようと思った。


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